出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

(epilogue10)

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「――あぁーよかった……。透さん、急に変なこと言うんだもん……俺、ふられちゃうのかと思ったよ」

 直くんはそう言って、力が抜けたように前列の長椅子に腰掛けた。

「ごめんね」

 本当に何を悩んでいたんだろうと、自分でも思う。

 俺が未来を案じている間にも、君は俺との未来を考えてくれていた。

 俺にとっても直くんは、とっくに家族だった。

 確かにそう感じていたのに、なぜ忘れていたんだろう。

 出逢ったあの頃から、毎日少しずつ育んだ相手を想う心は、何にも変えられない大切な愛情に育っていた。

 直くんと一緒に過ごす時間は、普通の当たり前の日常に彩りをくれる。

 これからも、二人で少しずつ彩りを増やしていけると思う。

「実はさ……指輪を渡したかった理由はもう一つあるんだ」

「え? 何?」

「透さんがモテるから、心配なの、俺」

 そう言って、真っ赤になって天井を見上げる。

 ――心配なのは、俺の方なのに。

 そう思って、俺は直くんに気付かれないようにこっそりと笑う。

「……今日も披露宴が終わったら、あの公園に行く?」

「……ん、行きたい……」

 いつの間にか直くんは俺の肩に寄り掛かっていて、少し掠れた声で返事が返ってきた。

 顔を覗き込むと、直くんは柔らかい日射しに包まれて気持ちがいいのか、微睡むように目を閉じている。

「眠いの?」

「うん……ちょっとだけ……。昨夜遅かったからかなぁ……。ここ、暖かくて気持ちいいし……5分だけ寝てもいい?」

 もう、披露宴が始まってるんじゃないかな……。そう思うけど。

「5分だけ、だよ?」

 俺は少し笑って、可愛い我儘を訊いてあげる。

 
 ――5分間、君の寝顔を眺めていよう。

 それも、小さな幸せだな……って、思う。

 そんな小さな幸せが、二人の日常に彩りをくれる。

 年を重ねるごとに、沢山のいろも美しく重なっていくだろう。

 ――これからも、ずっと……。





 Extra:幸せのいろどり

 ―― 透side ――

/ END.../ + to be continued → →


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