出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

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 直くんが行きたいって言った場所は、二人が出逢ったあの公園だった。

「本当にここが良かったの? 寒くない?」

「うん、だって去年のイブに、ここで透さんと出逢ったんだもん」

 さっき降っていた雪は、いつの間にかやんで、まるであの時と同じように空気が澄んでいる。

「ね、毎年イブの日は、ここで待ち合わせしたいな」

 言いながら悴んだ手を、俺のコートポケットに入れてくる。

「それでさ、初心に戻るんだ」

 直くんの言葉に、俺は口元を緩ませながら、コートの中の直くんの手に指を絡ませて、夜の人気のない公園を二人で歩いていく。

「初心に?」

「時が経っても最初の頃のときめきとか忘れないように、毎年ここであの日のこと思い出すんだ」

 木々に囲まれたカーブした小道を進んでいくと、薄い明かりに照らされたあのベンチが見えてくる。

「あ、俺は勿論、ずっと忘れないけどさ……あ、えーと、透さんが俺に飽きないように……ね?」

 飽きるわけないよ。直くんのこと、この1年の間に前よりもずっと好きになってる。

 それはきっと静香の言ったように、愛は形を変えても愛情は深まるという事。

 ――だからこそ……。

「直くん……話しておきたいことがあるんだけど」

「……何の話?」

「……光樹先輩のことなんだけど……」

 俺がそう言って話を切り出すと、直くんの顔が一瞬曇ったように見えた。

「……みっきーのこと……? 俺、みっきーとは、あれから何もないよ?」

 俺の顔色を窺うように見上げてくる瞳は困惑の色を浮かべていて、思わず小さく笑い声をを漏らしてしまった。

「……違うよ。そんなこと、心配してないよ」

 直くんのこと、信じているから。

 この1年一緒に過ごして、君が嘘をつくのが苦手だってことも知ってる。

 誤魔化すのが苦手だってことも知ってるし、いつも真っ直ぐに俺のことを見つめてくれているって知ってる。

 だから、俺もたとえ些細な出来事でも隠し事をしたくない。

「……俺ね……。昔、光樹先輩と関係を持ったことがあるんだ」

 俺の言葉に、直くんは不思議そうに首を傾げる。

「……え? 高校の先輩だったってこと?」

「……うん、そうだけど。そのことじゃなくて……その……、」

 やっぱり言い難くて口篭った俺を見て、直くんはちょっと大人びた表情で微笑んだ。

「……分かってる……知ってるよ。多分そうじゃないかなって、思ってたから」
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