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Extra3:幸せのいろどり ―透side―
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大阪は晴れていたのに、新幹線の窓から見える空は冷たそうな薄い雲に段々と覆われて、到着する頃には霙が降っていた。
新幹線を降りてから、携帯の電源が入っていないことを思い出し、ONにした途端振動して、慌てて通話ボタンを押した。
「――もしもし、お兄ちゃん?」
「……静香……か? どうした?」
『―― もう! やっと繋がった…。何回電話しても繋がらないからお父さんに聞こうと思って、篠崎の家に電話したらお兄ちゃんが結婚するって聞いて……』
継母に聞いたらしく、それで静香は慌てて日本に帰ってきたらしい。
婚約を解消したことを、継母は多分まだ知らないだろう。
俺が大阪に着いた2日後、継母も来ると言って美絵さんに連絡してきた時に、彼女は『今は二人きりでいたいから』と言って、断っていたから。
静香に結婚の話はなくなった事を話すと、『えー? 何の為に帰って来たのか分かんない』って怒りながらも、声は笑っていた。
静香との電話を切った途端、また携帯が振動する。
今度は神谷さんからだった。
『――今から札幌に行く。一緒に来なさい』
神谷さんも、俺に連絡がつかなくて困っていたらしく、また迷惑をかけてしまった。
本採用は4月からということになっていたけれど、札幌で神谷さんが取り組んでいる、コンサルティングと施設設計の仕事の話があって、それに俺を研修という形で連れて行きたいと言ってくれた。
『――じゃあ、空港でな』
通話を終えると俺は、そのまま空港へと急いだ。
今、電話で話した内容を考えると、スケジュール的に、多分1ヶ月は戻って来れそうにない。
――1ヵ月……か……。
それは、今の俺にとっては、とても長い時間で……でもきっと、あっと言う間に過ぎていく。
そして……帰って来る頃には、もう季節も変わっている。
その頃に、直くんの記憶の中に俺がまだ居るという自信は無い。
——今だって……自信なんて全く無いのだけれど……。
お互いの時間が重なるタイミングが取れないのは、運命なのかもしれないなんて思えてきた。
俺も……季節と同じように、俺の心もまた移ろいでしまうのだろうか。
直くんとの出逢いは、俺に人を愛する気持ちを教えてくれる為のものだったのかもしれないなんて、半ば諦めにも似た気持ちが、心の中を占めていた。
***
3月の半ば、札幌での仕事もひと段落ついてきた頃、休みの日に街をゆっくりと一人で歩いてみた。
ふと立ち寄った店で目に留まった、ブルーのクリスタルキーリング。
丸いダークブルーのクリスタルの中に、ライトブルーの小さな星が散りばめられていて、直くんと出逢ったあの夜の、ほんの数分だけ見えた星空が、この小さなクリスタルの中で煌いているように思えた。
大きな瞳を見開いて瞬きもせずに星空を見上げる直くんの横顔が、脳裏を過ぎっていく。その瞳は、このキーリングのように煌いていた。
あの公園の……俺と同じように色を失くした寂しげなベンチに、いつかまた二人で座って、直くんと夜空を眺めることが出来たなら、どんなにいいだろうと、思った筈だったのに。
なんで、諦めようとしていたんだろう。
ただ、時が経ちすぎただけで、俺の気持ちは全然変わっていないのに。
新幹線を降りてから、携帯の電源が入っていないことを思い出し、ONにした途端振動して、慌てて通話ボタンを押した。
「――もしもし、お兄ちゃん?」
「……静香……か? どうした?」
『―― もう! やっと繋がった…。何回電話しても繋がらないからお父さんに聞こうと思って、篠崎の家に電話したらお兄ちゃんが結婚するって聞いて……』
継母に聞いたらしく、それで静香は慌てて日本に帰ってきたらしい。
婚約を解消したことを、継母は多分まだ知らないだろう。
俺が大阪に着いた2日後、継母も来ると言って美絵さんに連絡してきた時に、彼女は『今は二人きりでいたいから』と言って、断っていたから。
静香に結婚の話はなくなった事を話すと、『えー? 何の為に帰って来たのか分かんない』って怒りながらも、声は笑っていた。
静香との電話を切った途端、また携帯が振動する。
今度は神谷さんからだった。
『――今から札幌に行く。一緒に来なさい』
神谷さんも、俺に連絡がつかなくて困っていたらしく、また迷惑をかけてしまった。
本採用は4月からということになっていたけれど、札幌で神谷さんが取り組んでいる、コンサルティングと施設設計の仕事の話があって、それに俺を研修という形で連れて行きたいと言ってくれた。
『――じゃあ、空港でな』
通話を終えると俺は、そのまま空港へと急いだ。
今、電話で話した内容を考えると、スケジュール的に、多分1ヶ月は戻って来れそうにない。
――1ヵ月……か……。
それは、今の俺にとっては、とても長い時間で……でもきっと、あっと言う間に過ぎていく。
そして……帰って来る頃には、もう季節も変わっている。
その頃に、直くんの記憶の中に俺がまだ居るという自信は無い。
——今だって……自信なんて全く無いのだけれど……。
お互いの時間が重なるタイミングが取れないのは、運命なのかもしれないなんて思えてきた。
俺も……季節と同じように、俺の心もまた移ろいでしまうのだろうか。
直くんとの出逢いは、俺に人を愛する気持ちを教えてくれる為のものだったのかもしれないなんて、半ば諦めにも似た気持ちが、心の中を占めていた。
***
3月の半ば、札幌での仕事もひと段落ついてきた頃、休みの日に街をゆっくりと一人で歩いてみた。
ふと立ち寄った店で目に留まった、ブルーのクリスタルキーリング。
丸いダークブルーのクリスタルの中に、ライトブルーの小さな星が散りばめられていて、直くんと出逢ったあの夜の、ほんの数分だけ見えた星空が、この小さなクリスタルの中で煌いているように思えた。
大きな瞳を見開いて瞬きもせずに星空を見上げる直くんの横顔が、脳裏を過ぎっていく。その瞳は、このキーリングのように煌いていた。
あの公園の……俺と同じように色を失くした寂しげなベンチに、いつかまた二人で座って、直くんと夜空を眺めることが出来たなら、どんなにいいだろうと、思った筈だったのに。
なんで、諦めようとしていたんだろう。
ただ、時が経ちすぎただけで、俺の気持ちは全然変わっていないのに。
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