出逢えた幸せ

ずーちゃ

文字の大きさ
上 下
289 / 351
Extra3:幸せのいろどり ―透side―

(54)*

しおりを挟む
『……エロい、顔』

 上唇を弄ぶように食みながら低い声で言われ、きつく閉じていた瞼を開けると、目の前の光樹先輩の妖艶な眼差しと視線が絡んだ。

『キスで、感じちゃったの?』

 耳元に唇を寄せて囁いた光樹先輩の手が、俺の半身を下着の上から触れてきて、下肢から全身へ、ぞくぞくするような痺れが駆け抜けた。

 キスをされている間に身体の中心に熱が集まって、どうしようもなく昂ぶっていくのを抑えることができなかった。

『――や、やめてくださいっ!』

 それを知られてしまったことが恥ずかしくて、俺は慌てて光樹先輩の膝から飛び退いた。

『透?』

 俺を見上げてくる光樹先輩の妖艶な眼差しも、濡れた唇も、泳いだ後のまだ少し濡れている緩くウエーブした髪も、何もかもが情欲をそそられる。

『お、俺……シャワーしてきますっ! 部室の戸締りはしておきますから、光樹先輩、先に帰っててください』

 それだけ言って、タオルを手に取りバタバタと逃げるように外へ出た。

『さっきシャワーしてたじゃん』

 後ろから追いかけるように、光樹先輩の声が小さく聞こえた気がしたのを、気付かないふりをして。


 ***


 冷たいシャワーの飛沫を頭から浴びて、なんとか熱を沈めようとした。けど、何も考えないようにしようとしても、さっきのキスの感覚が蘇ってくる。

 振り払っても、振り払っても、消えない。それどころか意に反して、そこは更に硬く勃ち上がる。

『……う……っ……』

 堪らずに、熱く猛る自身に指を絡め、きつめに上下させた。

『……は……ッ……ッ……』

 熱の篭った吐息を吐きながら、登り詰めていく。

『……くっ……う……み、つき、せんっ……ッ』

 その瞬間、光樹先輩のキスを思い出して……。放った白濁がシャワー室の床に飛び散って、水に洗われていく。

『――ッーハァ……は……ぁ……ッ……』

 途端、襲ってくる罪悪感。

 男である光樹先輩と初めてのキスをしたことも、そのことを思い出しながら自慰したことも、何もかもが後ろめたかった。

 これから光樹先輩にどう接すればいいのか、分からなくなりそうだった。

 ――なのに……。

 部室に戻ると、先に帰ったとばかり思っていた光樹先輩は、俺のことを待っていて……。

『腹減ったな。透、帰りに何か食いに行こ』

 俺の心配をよそに、いたって普段通りに話しかけてくる光樹先輩に、内心ホッとした。

 さっきのは光樹先輩のいつもの悪い冗談で、俺はそれに、まんまと乗せられてしまった程度に考えれば、シャワー室のことも、俺の中の深いところに鍵をかけて忘れてしまえばいい。と、そう思っていた。

 ――だけど……。

 光樹先輩の言う、『キスの授業』は、それだけで終わらなかった。
しおりを挟む
B L ♂ U N I O N

感想などお待ちしております。
★メール★clap★res
感想 380

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

処理中です...