出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

(49)…………(挿絵)

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 それは昨夜、俺が送信したメールに対してに返信のはずで。ずっと待っていたということもあって、年甲斐もなく逸る気持ちを抑えながらメッセージを表示させる。

『 ――返事、遅くなってすみません。昨夜はちょっと呑みすぎて、潰れちゃって、友達の家に泊めてもらいました』

 そうだったんだ……。それで返事がこなかったのか。

 昨夜、祖父母の家に着いてから、俺は静香との会話を思い出して、やたらと直くんの声が訊きたくなっていた。

 ――直くんは、今夜は飲み会だと言っていたが……。

 俺はただ、女の子にモテる直くんのことが少し心配だったのかもしれない。

 祖父母の家からじゃ迎えに行くのに少し遠いけど、もし連絡がついたら……と、飛んで行きたい衝動に駆られていた。

 直くんへの自分の気持ちを、早く伝えたかったのかもしれない。

『――今日、飲み会って言ってたよね? もし良ければ終わったら迎えに行くよ』

『――遅くなりそうかな。今夜は遅くても起きてるから、取り敢えず連絡して下さい』

 と、時間を空けて2通のメールを送ったが、返事はこなくて少し心配していた。

 呑んでいたら、携帯が鳴ってるのなんて気が付かないのが普通なのに。

 酔い潰れていたのなら、携帯のチェックもできなかっただろう……。もう、身体の具合は大丈夫なんだろうか。

『――二日酔い大丈夫? また連絡するね』

 漸く届いた直くんからのメールに、それだけ書いて送信した。

 携帯をまたポケットに入れて、駅に向かおうとしていた足を止め、辺りを見渡した。

 ――ランチタイムに入って混む前に、少し早いけど近くで食事をしてから会社に帰ろう。

 そう考えて踵を返した。

 今日の仕事を片付けたら、帰りに直くんのマンションに寄ってみよう。今、無性に、直くんに逢いたい。

 俺の正直な想いを直くんに伝えたら、君は俺から離れてしまうかもしれないけれど、それでも……。伝えなければ、何も変わらない、何も始まらない。

 まだ正月気分の抜けない街の交差点。

 クラクションの音、人の波。

 信号が青に変わるのを待っていると、向こうの歩道を通る人波が、一組のカップルを避けるように流れていくのが見えた。

 こんな時間から、こんな場所で抱き合って、キスをしている二人。

 それは、触れるだけの挨拶程度のものではないという事は、大通りを挟んだこちらからでも、はっきりと分かる。

 信号が青に変わり、人の波が動き出して、俺も一歩、また一歩と足を進めた。

 まさか……。そんな筈は、ない。

 ――そう思った。

 ただの見間違い……。

 ただの人違い……。

 きっとそうだ。と、思いたかった。

 だから、俺は横断歩道をゆっくりと渡っていく。

 向こうの歩道で、激しいキスをしている、男同士のカップルから視線を外さずに……。

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