出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

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 カーテンの隙間から射し込む明るい日差しの中で微睡みながら、直くんの背中をそっと抱きしめて、確かに腕の中に直くんがいる事を確認してホッとする。

 安心して、またうとうとし始めると、腕の中の身体が僅かに身じろぐのを感じて意識が呼び戻される。

 目を閉じたまま様子を窺っていると、じっと見詰められているような視線を感じる。

「あんまり、見つめないでくれる?」

 思わずそう言って、目を閉じたまま笑ってしまった。

 おはよう、とキスをして、二人で布団の中で抱き合っていると、ずっとこのままでいたい……なんて思ってしまう。

 誰かと一緒に、こんな風に暖かい気持ちになれた朝は、初めてだった。

 身体がだるそうな直くんに、「もう少し、ゆっくりしてて」と言って、先に寝室を出て、遅い朝食の準備をしながら、さっき起きてからの会話を思い返していた。

 ――――
 ――『言い訳するとね、その……、こないだ直くんが起きる前に仕事に行かないといけなかったから……、メモに俺の携帯の電話番号を書いておいたんだけど……』

 ――『だから、連絡くるまで待とうと思ってたんだけど、数日しか経ってないのに、連絡が来ないのが寂しくて不安だったりしてね』

 昨夜、何度も直くんを抱いてしまった言い訳を、並べ立てた俺。

 ――『……食事に誘ったら、直くんがOKしてくれて、凄く嬉しかったんだよ』

 でもそれは、本当の気持ちだった。

 ――『すみません、俺……あの時、番号を控えるの忘れてて……』

 直くんは、そう言ってたけど。多分……忘れていたというのは嘘だろう。

 でも昨夜、また逢って、俺の誘いを断らずに、ついてきてくれた……。

 直くんにとっては、ただ流れのままの行動だったのかもしれないけれど。

 それでも……もしかしたら、このまま……と、そこまで考えて、また性懲りも無く期待をしていることに気付いて自嘲する。

 ――ありえない、そんなことは、ありえない。

 自分の気持ちでさえ、ずっと変わらない自信もないのに……。

 それでも……どうしても直くんの存在が、俺の中でどんどん大きくなっていくのを感じずにはいられない。

 朝食を並べ終わったダイニングテーブルの椅子に座って、そんな事を考えていると、不意に後ろから声をかけられた。

「透さん……」

 振り向けば、直くんがパジャマ姿で立っている。

「直くん、身体、大丈夫なの?」

「うん、俺、腹減っちゃって……」

 身体は辛そうなのに、お腹の辺りを押さえて照れくさそうに言う直くんに、思わず頬が緩んでしまっていた。

「朝食できてるよ、食べようか」

 俺がそう言うと、みるみる嬉しそうな顔になる。

「うわーっ、美味そう! いただきまーす」

「どうぞ」

 二人で向かい合って席に着いて、食卓を囲む。

 本当に美味しそうに食べる直くんの顔を眺めながら、今日くらいはこんな風に、二人でのんびりと過ごしたいな。なんて、考えていた。
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