出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

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 直くんが頷いてくれたことが嬉しくて、この場で抱きしめたい衝動をどうにか抑えてハンドルを握った。

 咄嗟に思いついた賭けだったけど、直くんは誘いを断るだろうと思っていた。

 拒否しなかったのは、ただ流されているからかもしれない。『今』だけかもしれないと、思うけれど。

 それでも断らなかった直くんが、『今だけ』を愉しみたいと思っているのなら、それも良いんじゃないかと、思えていた。 ただ、引き際を先延ばしにしただけかもしれないけれど。

 この曖昧な関係を続けても赦されるだろうか。直くんが、もう俺とは逢いたくないと思うまで。

 いつか終わりがくると分かっている。それなのに、少しでも一緒にいたいと求めてしまうのは、エゴだろうか。

 信号待ちでハンドルから手を離し、さっきから会話が途切れないようにと気を遣ってくれているのか、ずっと一生懸命に喋ってる直くんの手に、ふわりと自分の手を重ねると、驚いて俺を見上げる瞳。

「今夜、泊まるよね?」

 そっと直くんの耳元に囁いて、「はい」と返ってきた応えに、どうしようもなく身体が熱くなってしまっていた。

 重ねた手を動かして、指の間を擽るように滑らせれば、焦ってすぐに頬を紅く染めてしまう直くんに、早くもっと触れたいなんて思う。そんな自分に呆れてしまうけど。

 信号が青に変わって、なんとか自分の熱を抑えて、直くんに触れている手を離しハンドルを握る。

 いい大人が……と思うけれど、高まってくる熱を、自分ではもうどうすることも出来ずにいた。

 ――本当にどうかしてる。

 マンションのエレベーターに乗り、階数ボタンを押しながら、隣に立っている直くんに今すぐキスをしたい衝動に駆られて、ドアが閉まりきらないうちに、抱き寄せてしまった。

「ちょっ……」

 驚いて、よろけた直くんの身体をしっかりと抱きしめて唇を重ねると、もう自分では止めることができない程熱くなってしまい、ここがエレベーターの中だということも忘れて、深くその咥内を貪り尽くした。

 12階に着くまでに、昂ぶる気持ちをなんとか抑えて唇を解放すると、直くんは耳まで真っ赤にして、熱に潤んだ瞳で見上げてくる。

「可愛いな……、顔が真っ赤だよ」

 わざと冷静を装って、そんな事を言ってみたけど、俺の内側は多分、直くんよりも熱くなっていると思う。

 自分の部屋の玄関までの通路が長く感じる。

 こんなに激しく『欲しい』と思ったのは初めてかもしれない。
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