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Extra3:幸せのいろどり ―透side―
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いつも、妹と待ち合わせしていたカフェレストランで、彼はホールスタッフのバイトをしていた。
*****
待ち合わせの時間までは、まだかなり余裕がある。
……いつもの事だけど。
約束の時間より早めに来て相手を待つのは、待ち合わせの楽しみのひとつ。
でも、毎週金曜日、妹との待ち合わせのこの時間は、約束している妹と会うことよりも……。
俺はカフェの入り口近くの窓の前で足を止め、何気ない素振りで窓から店内を覗く。
――いつからだろう……。
こうして、『彼』の姿を目で追うようになったのは。
店内を忙しく動き回る、ホールスタッフの彼。
時々、柱の影に隠れてボーっとしているところを見つかってフロアマネージャーに怒られていたり。
ユニフォームのギャルソン服が、細すぎないスレンダーな身体によく似合っていて。
明るいブラウンの柔らかそうな髪、吸い込まれそうな大きな瞳に、長い睫。
女の子のように可愛い顔立ちで客に向ける笑顔は、周りをパッと明るくするような威力があって、大勢の中にいても目立つ存在だった。
――だから……、
自然に、気が付くと彼の姿を追っている。彼の姿を見ているのは、とても楽しいから。
ただ、それだけのこと……、の筈だった。
「――お兄ちゃん!」
遠くから聞こえた声に振り返ると、淡いピンクのコートを着た妹の静香が走ってくるのが見えた。
約束の時間にはまだ間があるから、そんなに慌てて走らなくていいのに。
息を切らせて駆けてくる妹の姿に、自然と笑みが零れる。
子供の頃に、両親の離婚でお互い離れて暮らしていたけれど、母が亡くなって静香が精神的に落ち込んでしまった頃に、心配で時々様子を見に行っていたのが、いつの間にか習慣になって毎週会うようになっていた。
*****
待ち合わせの時間までは、まだかなり余裕がある。
……いつもの事だけど。
約束の時間より早めに来て相手を待つのは、待ち合わせの楽しみのひとつ。
でも、毎週金曜日、妹との待ち合わせのこの時間は、約束している妹と会うことよりも……。
俺はカフェの入り口近くの窓の前で足を止め、何気ない素振りで窓から店内を覗く。
――いつからだろう……。
こうして、『彼』の姿を目で追うようになったのは。
店内を忙しく動き回る、ホールスタッフの彼。
時々、柱の影に隠れてボーっとしているところを見つかってフロアマネージャーに怒られていたり。
ユニフォームのギャルソン服が、細すぎないスレンダーな身体によく似合っていて。
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――だから……、
自然に、気が付くと彼の姿を追っている。彼の姿を見ているのは、とても楽しいから。
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約束の時間にはまだ間があるから、そんなに慌てて走らなくていいのに。
息を切らせて駆けてくる妹の姿に、自然と笑みが零れる。
子供の頃に、両親の離婚でお互い離れて暮らしていたけれど、母が亡くなって静香が精神的に落ち込んでしまった頃に、心配で時々様子を見に行っていたのが、いつの間にか習慣になって毎週会うようになっていた。
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