出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

(prologue)*

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 ――その夜……。

 あの公園で偶然彼に出逢ったのは、運命だったんだろうか。

 もう逢うことはないと思っていた彼と――――



 世間はクリスマスイブで、街は煌くイルミネーションで飾られて、あちこちにクリスマスソングが流れている。

 その夜俺は、休日だと言うのに、会社で残っていた仕事を片付けていた。

 帰宅途中の車の窓から、恋人や友達とクリスマスを楽しむ人々の姿をあちこちで見かける。今夜はそんな光景が街に溢れていた。

 そんな賑やかな人並みから逃げるように、俺は人気のない公園の前に車を停めた。

 なんとなく夜空を見たい……なんて思ったのも偶然だったんだろうか。

 俺は車を降りて公園の中へ入っていった。


 *******


 まさか彼に会うなんて、思っていなかった。

 あの店で顔を合わせていても、ただの店員と客。

 そこで会ったからと言って、話しかけなくてもいい関係だった。

 なのに……。

 目が合ったまま、視線を逸らす事は出来なかった。

 彼も立ち止まり、こちらを見ていて……。

 気が付けば、俺は彼の方へと歩き出していた。

 まるで引き寄せられるように、自然に。

 ――でも、それがまさか、こんな事になるなんて思っていなかった。

 自分でも抑えきれない衝動に駆られて……。

 一度触れてしまえば、もう止めることが出来ない欲望。

 彼の額にかかる細くて柔らかい髪を梳くように掻きあげてやると、スルスルとした感触で指の間を滑り流れていく。

 長い睫を震わせて、桜色の唇から堪えきれない甘い声を漏らして。

 「……っ、ぁ……ッ」

 俺の指に、掌に、触れると吸い付くような滑らかな肌へ口付けを落としていけば、敏感に反応して熱を持ち、紅く染まっていく。

 「ぁ……ああああっ!」

 ――誘ったのは、俺。

 俺と出逢わなければ、経験する事もなかった筈なのに…。

 ――煽ったのは、彼。

 初めての行為に戸惑いながらも、確かに彼は快楽に身を委ね、もっとと、それ以上に求めて俺に指を伸ばしてくる。

 昨日までは、ただの店員と客。

 顔を知っているだけで、会話もしたことのない相手。

 しかも、その相手……直くんは、10歳も年下のまだ十代の男なのに。

 つい触れてしまったとしても……そこで止めるべきだった。

『冗談だよ』って、笑えばそこで終われたのに。

 ――俺は止めなかった。

 触れれば、触れるほど、もっと直くんの事を知りたくなって。

 もっと深く直くんの最奥へ、俺の欲望を突き入れた。

 あの時……もうこれで逢う事もなくなるだろうと、思っていた筈なのに。
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