出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra2:Moonlight scandal

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 耳元に唇を寄せたまま、透さんは囁くように話を続ける。

「俺は、直くんが居てくれれば、何でも出来る気がするよ」

 シャワーを止めて時間が経った浴室の鏡は、雲っていたのが少しずつにクリアになってきて、鏡に映る透さんの瞳に、じっと見つめられている。

「俺も……。俺だって、透さんが居てくれれば何だって出来ると思ってる……。でも、実際は甘えることしかできなくて、透さんのために何も出来なくて……」

 ぼんやりとした頭で必死に言葉を探す。気持ちを伝えるのって、なんでこんなに難しいんだろう。

「そうやって一生懸命考えて、俺の事を想ってくれている気持ちだけで十分だよ。理屈じゃなくて、傍に居てくれるだけで、お互いを想い合えるだけで、とても幸せだよ」

「……透さん……」

 鏡の中で優しい眼差しに見つめられて、俺もその瞳に応えたいと心から思う。

「俺は……」

 ――ずっと透さんの傍に、いたい。それが本心。

 ただ、それだけでいいのかなって、考えてたけど……。

 ――『相手を想う気持ち。それだけで、いいんじゃないのかな』

 透さんのお父さんの言葉がまた蘇って、俺は漸く……何となくだけどその意味が解った気がしてきた。

「直くんは? それだけじゃ足りない?」

 鏡の中の透さんと、視線が絡んだ。

「他に欲しいものある?」

 ――他に欲しいものなんて……。

 「ない……、ないよ!」

 俺は振り返って、透さんにおもいっきり抱きついて、ちょっとびっくりしている透さんの唇にキスをした。

 熱い咥内に舌を挿し入れると、透さんの舌が優しく応えてくれる。

 そうしながら、俺はお父さんの言葉を思い出していた。

 ――『二人共、この手が離れないように、今の気持ちを忘れてはいけないよ』

 ――そう言ってくれた時のお父さんの笑顔は、透さんによく似ていたな……。

 何度か角度を変えて、深く口づけて、見つめ合う。

「その内、嫌でも大人になるんだから、その時は……」

 そう言って、俺の耳元で、透さんがあの甘い声で続きを囁く。

「その時は、俺が目一杯、直くんに甘えるから」

「へ……?」

 ――透さんが俺に甘えるぅ?……想像できないけど……でも……。

「……っ、」

 頭ん中でそんな事をごちゃごちゃと考えていると、胸をぬるぬると触る手の動きが再開されて、下っていくもう片方の手に、思わず息を呑んだ。

 双珠を泡の付いた手にやわやわと撫でられて、腰の奥が熱く疼く。

 そのまま指が尻の割れ目を辿って、入り口へと到達する。

「ん、ッ、」

 後孔の縁で、ぬるぬると円を描くように動く指に次の刺激を期待してしまう。

「と、おるっさん……、」

 ――ああ、もう、理性がぶっ飛びそう。

「今は……」と、優しい声が鼓膜を擽ると、身体の力が抜けていく。

 同時に透さんの指を、難なく中へと受け入れた。

「……いくらでも俺に甘えてよ」

「っあ……」

 ぬめりを纏った長い指に内壁を甘く擦られて、思わず出した嬌声が浴室に響く。

「……直くん? もっと甘えて」

「は、ぁッ、透、さんっ……」

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