出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra2:Moonlight scandal

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 裏門から校舎の影に隠れながら、二人してプールまで走っていく。

 塀の向こう側で時折車のライトが通り過ぎるのが、煉瓦塀に等間隔で嵌め込んでいる柵の隙間から見えている。

 そうして辿り着いたプールの入口。

 プールの周りは結構高いフェンスに囲まれて、その周りには木々が植えられていた。今の状況には、丁度良い具合に目隠しになっている。

 ――でも、この高いフェンスよじ登れるのかなぁ。

 フェンスは結構柔らかいし、身体の重みに揺れそうだけど……。

 何より、きっと音が派手に鳴りそうな気がする。

「直くん、こっち」

 ドキドキしてる俺とは違って、透さんはなんだかとても大胆で冷静で、普通にプールの入口の扉を片手で押した。

 すると、鍵が掛かってるだろうと思い込んでいたスチール製の扉は簡単に開く。

「鍵、開いてたね」

 透さんはそう言って、クスッと笑う。

「室内プールもあるけど、そっちは侵入したら防犯の警報音が鳴りそうだけどね」

 外は手薄だから……とか言いながら、透さんはスタスタと中に入って行く。

 夜のプールはやっぱり暗くて、月の灯りと、時々外を走る車のライトと、街灯だけが頼り。

 俺は透さんの後を離れないようについて行く。

 薄暗いけど、少しずつ目が慣れてきた。

 入ってすぐの所には、更衣室などの設備が入っているらしい建物があって、その横にシャワースペースが設置されていた。

 広めのプールサイドの一角に休憩スペースのような所があって、そこのベンチの前で透さんは立ち止まり俺を振り返った。

「どう? プライベートプールは」

「プ、プライベートって!」

 ――だけど、やっぱりマズイんじゃないだろうか。

 もし見つかったら、それこそスキャンダルになるって!

 ここんとこよく耳にした、スキャンダルって言葉で俺の頭はいっぱいになっていた。

「直くんも、早く脱いで」

「とっ、透さん!」

 そんな俺にお構いなく、透さんはネクタイを解き、シャツのボタンを外していて……。

「あああ、何、脱いでんの?!」

 慌てて止めようとすると、「だって、泳ぐ為に来たんでしょ?」と言いながら、俺のシャツのボタンを外し始める。

 ボタンを一つずつ外す透さんの綺麗な指を眺めながら、俺は一瞬納得しかけた。

 ――ああ、そうか、泳ぐんだもんな………。

 ……って! ちがーーーうっ!

「ま、待って、待って! 透さん、だって水着は? 水着ないよ?」

「誰も見てないんだし、いらないんじゃないかな」

 にっこり笑いながら俺のシャツを脱がし終えると、自分もシャツも脱いでベンチの上に放り投げた。

 俺に背中を向けたまま、透さんはスラックスと下着を一緒に脱いでいく。

「と、透さん……」

 確かに誰も見てないよ……。見てないけど!

 だけど……

 月の灯りの下で見る、全てを脱いだ透さんの引き締まった後ろ姿があまりにもキレイで。俺は息を飲んで固まってしまう。

 肩越しに振り返って俺を見つめる漆黒の瞳が、艶っぽく光って見えて……その瞳に誘われるように、気が付けば、俺も残りの着ている服を全て脱ぎ捨てていた。
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