211 / 351
Extra2:Moonlight scandal
(35)
しおりを挟む
いつの間にか、日が暮れかかっていて、薄暗くなっていた。
さっき自販機で買ったスポーツドリンクのキャップを開ける音が、車中で静かに響く。
「直くん、お腹空いてる?」
「ん~~」
ペットボトルの飲み口に唇を付けたところで透さんに訊かれて、目の前のダッシュボードクロックに視線を落とす。
日が長いから、思ったよりも時間が経っている事に気が付かなかった。
「実はホテルでデザートをいっぱい食べたせいか、あんまり腹減ってないかも」
でも、喉はカラカラで、喉へと流し込んだ冷たいスポーツドリンクが心地よく体内に沁み込んでいく。
「そう? 実は、俺もパーティーで食べたせいか、あまり空いてないんだよね」
夕飯は後でいいか……。と、呟く透さんに、俺は飲みかけのペットボトルを差し出した。
「透さんも飲む?」
「うん、ありがとう」
透さんは、俺の手からペットボトルを受け取り、飲み口に唇を付けた。
仰向いて、ごくごくと音を立てながら上下する透さんの喉仏が、なんだか色っぽいなんて思っちゃって、俺はそこから視線が外せない。
「何?」
俺の視線に気が付いた透さんが、濡れた口元を手の甲で拭いながら首を傾げた。
「え? いや、えーと……あー、透さんの水着姿……じゃなくて……泳ぎに行きたかったなーって、思って」
慌てて誤魔化したけど、喉仏を見ていて、透さんの水着姿を想像するなんて、俺かなりの変態じゃん。
「あぁ……プールね」
透さんは申し訳なさそうに「ごめんね、約束守れなくて」と謝るから、俺は慌てて首を横に振った。
「え、いや、今日行けなかったのは透さんのせいじゃないしっ、こないだ俺も電話を途中で切っちゃったしっ……だから、あのっ、だから……」
もっと大人にならなきゃって思ったばかりなのに、そんな風に透さんのせいにするつもりなんかなかったのに。
「……だから、俺の方こそ、ごめんなさい」
「え? いや、直くんは全然悪くないでしょう? 俺の方こそ心配かけて本当にごめんね」
「ううん、俺の方が透さんの気持ちも考えないで悪かったからっ」
「そんな事ないよ……」
「あるって!」
なんか、お互いが謝り合って、どちらも引かなくて、気が付いたら顔を見合わせて二人して笑っていた。
「そうだ……直くん、今から泳ぎに行こうか」
突然、思いついたように透さんが提案してきたけど、予定していたフィットネスクラブの予約はキャンセルしたはずだった。
「へ?……何処へ? フィットネスの予約はキャンセルしなかったの?」
「行けるかどうか分からなかったから、フィットネスはキャンセルしたんだけど……」
「じゃあ、今からじゃ無理なんじゃないの?」
透さんは何か考えるようにフロントガラスの向こうを見遣り、それから俺に視線を戻した。
「いや、フィットネスクラブは無理だけど、他にも泳げる所はあるよ」
「ホント? 行きたい! あ……でも俺、水着ないよ? 透さんも今、持ってないでしょ? どうする?」
「いや、水着なくても大丈夫。泳げるよ」
何かを企むような悪戯っぽい笑顔が気にはなったけど、透さんがそう言うから、きっとそこのプールで水着の貸し出しでもしてくれるのかなって思ったんだ。
さっき自販機で買ったスポーツドリンクのキャップを開ける音が、車中で静かに響く。
「直くん、お腹空いてる?」
「ん~~」
ペットボトルの飲み口に唇を付けたところで透さんに訊かれて、目の前のダッシュボードクロックに視線を落とす。
日が長いから、思ったよりも時間が経っている事に気が付かなかった。
「実はホテルでデザートをいっぱい食べたせいか、あんまり腹減ってないかも」
でも、喉はカラカラで、喉へと流し込んだ冷たいスポーツドリンクが心地よく体内に沁み込んでいく。
「そう? 実は、俺もパーティーで食べたせいか、あまり空いてないんだよね」
夕飯は後でいいか……。と、呟く透さんに、俺は飲みかけのペットボトルを差し出した。
「透さんも飲む?」
「うん、ありがとう」
透さんは、俺の手からペットボトルを受け取り、飲み口に唇を付けた。
仰向いて、ごくごくと音を立てながら上下する透さんの喉仏が、なんだか色っぽいなんて思っちゃって、俺はそこから視線が外せない。
「何?」
俺の視線に気が付いた透さんが、濡れた口元を手の甲で拭いながら首を傾げた。
「え? いや、えーと……あー、透さんの水着姿……じゃなくて……泳ぎに行きたかったなーって、思って」
慌てて誤魔化したけど、喉仏を見ていて、透さんの水着姿を想像するなんて、俺かなりの変態じゃん。
「あぁ……プールね」
透さんは申し訳なさそうに「ごめんね、約束守れなくて」と謝るから、俺は慌てて首を横に振った。
「え、いや、今日行けなかったのは透さんのせいじゃないしっ、こないだ俺も電話を途中で切っちゃったしっ……だから、あのっ、だから……」
もっと大人にならなきゃって思ったばかりなのに、そんな風に透さんのせいにするつもりなんかなかったのに。
「……だから、俺の方こそ、ごめんなさい」
「え? いや、直くんは全然悪くないでしょう? 俺の方こそ心配かけて本当にごめんね」
「ううん、俺の方が透さんの気持ちも考えないで悪かったからっ」
「そんな事ないよ……」
「あるって!」
なんか、お互いが謝り合って、どちらも引かなくて、気が付いたら顔を見合わせて二人して笑っていた。
「そうだ……直くん、今から泳ぎに行こうか」
突然、思いついたように透さんが提案してきたけど、予定していたフィットネスクラブの予約はキャンセルしたはずだった。
「へ?……何処へ? フィットネスの予約はキャンセルしなかったの?」
「行けるかどうか分からなかったから、フィットネスはキャンセルしたんだけど……」
「じゃあ、今からじゃ無理なんじゃないの?」
透さんは何か考えるようにフロントガラスの向こうを見遣り、それから俺に視線を戻した。
「いや、フィットネスクラブは無理だけど、他にも泳げる所はあるよ」
「ホント? 行きたい! あ……でも俺、水着ないよ? 透さんも今、持ってないでしょ? どうする?」
「いや、水着なくても大丈夫。泳げるよ」
何かを企むような悪戯っぽい笑顔が気にはなったけど、透さんがそう言うから、きっとそこのプールで水着の貸し出しでもしてくれるのかなって思ったんだ。
5
お気に入りに追加
467
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Promised Happiness
春夏
BL
【完結しました】
没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。
Rは13章から。※つけます。
このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる