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Extra2:Moonlight scandal
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「直くん? どうしたの? さっきから黙ったままで」
隣を歩いていた透さんの手の甲が俺の手に触れて、そのままそっと指を絡めるように握りしめてきて、俺は漸く透さんの顔を見上げた。
「ん?」と、透さんは首を傾げて俺の顔を覗き込んでいる。
「んーー、本当にこれで良かったのかなぁって、思って」
「どうして?」
「だって、透さん、親子の縁を切られちゃったんでしょ? 俺と付き合ってるから……」
血の繋がった親子なのに……俺と付き合うからって、勘当とかマジあり得ないし。
「いいんだよ。さっきも言ったけど、縁を切るって言うのは形だけの事だよ。父も俺と同じようにそう思ってるよ」
「え?」
「そう言う事にしておかないと、またあの人が縁談持ってくるしね」
話しながら、透さんはとても楽しそうに微笑んだ。
「表向きには、もう会社も家も関係なくなったけど、父との絆みたいなものは前よりも強く感じてるよ」
今まで心にわだかまっていたものが解けたから。と、微笑む透さんは、本当に清々しい表情をしていた。
「直くんのおかげだよ」
「俺? 何にもしてないし……」
「色んなきっかけを、作ってくれたのは直くんだよ。今回の事でこの間も父とゆっくり話す事が出来たし」
――そうかなぁ……。
本当に俺、何の役にも立ってないと思うんだけど……。
「まだ何か心配な事、ある?」
そう訊かれて、俺は首を横に振る。
「心配なんて、してないよ」
透さんの婚約の心配はなくなった。お父さんも、透さんと俺の関係を認めてくれて……。
――『相手を想う気持ち。それだけで、いいんじゃないのかな』
お父さんの言葉を、心の中で何度も呟いてみた。
透さんを想う今の気持ちは、この先も絶対変わらない。
でも、俺はホント、まだまだガキで我儘で、いつも透さんに甘えて迷惑ばっかかけてて……。もっと精神的に大人にならなきゃなーって、思う。
「じゃあ、どうして元気ないのかな?」
透さんは、そう言って、繋いでいない方の手で、俺の頭をポンポンと軽く叩く。
「……透さん」
「ん?」
俺、今は何も出来ないガキだけど、もっと大人になって……もっと……。
――透さんを守ってあげられるくらいに成長して、今よりもっと幸せにしてあげるよ。
……って、心の中だけで誓う。
「……んー、やっぱ何でもない! ね、早く帰ろう」
「え? 直くん?」
俺は、不思議そうに首を傾げている透さんの繋いだ手を引っぱって歩き出した。
――『この手が離れないように、今の気持ちを忘れてはいけないよ』
お父さんの言葉を思い出しながら、
――絶対忘れたりなんかしないよ。 と、透さんに聞こえないように小さな声で呟いた。
隣を歩いていた透さんの手の甲が俺の手に触れて、そのままそっと指を絡めるように握りしめてきて、俺は漸く透さんの顔を見上げた。
「ん?」と、透さんは首を傾げて俺の顔を覗き込んでいる。
「んーー、本当にこれで良かったのかなぁって、思って」
「どうして?」
「だって、透さん、親子の縁を切られちゃったんでしょ? 俺と付き合ってるから……」
血の繋がった親子なのに……俺と付き合うからって、勘当とかマジあり得ないし。
「いいんだよ。さっきも言ったけど、縁を切るって言うのは形だけの事だよ。父も俺と同じようにそう思ってるよ」
「え?」
「そう言う事にしておかないと、またあの人が縁談持ってくるしね」
話しながら、透さんはとても楽しそうに微笑んだ。
「表向きには、もう会社も家も関係なくなったけど、父との絆みたいなものは前よりも強く感じてるよ」
今まで心にわだかまっていたものが解けたから。と、微笑む透さんは、本当に清々しい表情をしていた。
「直くんのおかげだよ」
「俺? 何にもしてないし……」
「色んなきっかけを、作ってくれたのは直くんだよ。今回の事でこの間も父とゆっくり話す事が出来たし」
――そうかなぁ……。
本当に俺、何の役にも立ってないと思うんだけど……。
「まだ何か心配な事、ある?」
そう訊かれて、俺は首を横に振る。
「心配なんて、してないよ」
透さんの婚約の心配はなくなった。お父さんも、透さんと俺の関係を認めてくれて……。
――『相手を想う気持ち。それだけで、いいんじゃないのかな』
お父さんの言葉を、心の中で何度も呟いてみた。
透さんを想う今の気持ちは、この先も絶対変わらない。
でも、俺はホント、まだまだガキで我儘で、いつも透さんに甘えて迷惑ばっかかけてて……。もっと精神的に大人にならなきゃなーって、思う。
「じゃあ、どうして元気ないのかな?」
透さんは、そう言って、繋いでいない方の手で、俺の頭をポンポンと軽く叩く。
「……透さん」
「ん?」
俺、今は何も出来ないガキだけど、もっと大人になって……もっと……。
――透さんを守ってあげられるくらいに成長して、今よりもっと幸せにしてあげるよ。
……って、心の中だけで誓う。
「……んー、やっぱ何でもない! ね、早く帰ろう」
「え? 直くん?」
俺は、不思議そうに首を傾げている透さんの繋いだ手を引っぱって歩き出した。
――『この手が離れないように、今の気持ちを忘れてはいけないよ』
お父さんの言葉を思い出しながら、
――絶対忘れたりなんかしないよ。 と、透さんに聞こえないように小さな声で呟いた。
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