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Extra2:Moonlight scandal
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「じゃ、行こっか」
そう言って、テルさんは沢山の紙袋を持って歩き出す。
「あ、俺持つよ」
テルさんの手から紙袋を取り上げて、今日の目的の場所へ向かう。
ここのホテルのラウンジで、2時からのデザートブッフェが好評らしくて、その割引券を親父がどっかで貰って来たからって、『直くん、一緒に行ってくれる?』と、テルさんが俺に電話をしてきたのは今朝のことだった。
本当なら今日は、透さんとフィットネスクラブに行く予定だったんだけど……。
透さんのお母さんと婚約者の美絵さんに会った日の翌朝、電話をくれた透さんは、ひどく疲れた様子だった。
あの夜、三人で食事をして、結局実家に連れて帰られたようなことを言っていた。――それで……、
『……直くん、本当にごめん』
週末の提携記念パーティーは、やっぱり土曜日だったそうで、透さんは出席するつもりは無かったんだけど、どうしても出ないといけない状況になったみたいで、しきりに俺に謝ってた。
『……別にいいよ。プールはまたいつでも行けるんだし、俺なら大丈夫だから』
そう口では言っても、心の中では不満が渦を巻いていた。
――なんで透さんが出席しないといけないんだ。もう会社とは関係ないのに!
そんな気持ちがどんどん広がって、心の中が真っ黒になっていくようで……。
それ以上透さんと話してたら、自分が酷く嫌な人間になりそうだった。
あんなに待っていた透さんからの電話も、一秒でも早く切りたい気分になってしまって……。
『じゃ、また暇な時、連絡してね!』
『直くん! パーティーは夕方には終わるから。だからその後で……』
『無理しなくていいから。じゃ、またね』
透さんが言いかけた言葉を遮るように、俺は一方的に通話を切ってしまった。
――俺ってホント……ガキ……。
知らず知らずに、大きな溜息をついてしまう。
「直くん、どうしたの?」
気が付けば、こんなに食べれるの? ってくらい並べていたデザートを綺麗に平らげたテルさんが、不思議そうな顔で俺を見つめていた。
「え? いや、あー、お腹いっぱいになったなーと思って」
「ねー、美味しかったよね。私もお腹いっぱい。じゃ、そろそろ帰ろうかな」
「親父、迎えに来るの?」
「うん、もうすぐ着くと思うよ。その前に化粧室行きたいな」
ラウンジのある1階は、人も多くてトイレも混んでいる。
2階の方が空いていそうだったので、テルさんに付き合って一緒に2階に上がった。
でも2階は宴会場があって、披露宴でもやっているのか、フロアもそこそこ賑わっている。
「ここも結構混んでいそうだね」
「そうだね。でも、いいや、行ってくるから荷物見ててくれる?」
大量の買い物を傍に置いて、俺は知ソファーに腰を下ろした。
「ここで待ってるから、行っておいでよ」
「うん、ごめんね」
走っていくテルさんの後ろ姿を見送って、俺はソファーに深く背中を預けた。
――今頃透さんは、どうしてるんだろう。パーティーって、どこでやってるんだろう。
そんな事を思いながら、目線の先の宴会場の扉が開いて、中から人が出てくるのを何気なく眺めていた。
そう言って、テルさんは沢山の紙袋を持って歩き出す。
「あ、俺持つよ」
テルさんの手から紙袋を取り上げて、今日の目的の場所へ向かう。
ここのホテルのラウンジで、2時からのデザートブッフェが好評らしくて、その割引券を親父がどっかで貰って来たからって、『直くん、一緒に行ってくれる?』と、テルさんが俺に電話をしてきたのは今朝のことだった。
本当なら今日は、透さんとフィットネスクラブに行く予定だったんだけど……。
透さんのお母さんと婚約者の美絵さんに会った日の翌朝、電話をくれた透さんは、ひどく疲れた様子だった。
あの夜、三人で食事をして、結局実家に連れて帰られたようなことを言っていた。――それで……、
『……直くん、本当にごめん』
週末の提携記念パーティーは、やっぱり土曜日だったそうで、透さんは出席するつもりは無かったんだけど、どうしても出ないといけない状況になったみたいで、しきりに俺に謝ってた。
『……別にいいよ。プールはまたいつでも行けるんだし、俺なら大丈夫だから』
そう口では言っても、心の中では不満が渦を巻いていた。
――なんで透さんが出席しないといけないんだ。もう会社とは関係ないのに!
そんな気持ちがどんどん広がって、心の中が真っ黒になっていくようで……。
それ以上透さんと話してたら、自分が酷く嫌な人間になりそうだった。
あんなに待っていた透さんからの電話も、一秒でも早く切りたい気分になってしまって……。
『じゃ、また暇な時、連絡してね!』
『直くん! パーティーは夕方には終わるから。だからその後で……』
『無理しなくていいから。じゃ、またね』
透さんが言いかけた言葉を遮るように、俺は一方的に通話を切ってしまった。
――俺ってホント……ガキ……。
知らず知らずに、大きな溜息をついてしまう。
「直くん、どうしたの?」
気が付けば、こんなに食べれるの? ってくらい並べていたデザートを綺麗に平らげたテルさんが、不思議そうな顔で俺を見つめていた。
「え? いや、あー、お腹いっぱいになったなーと思って」
「ねー、美味しかったよね。私もお腹いっぱい。じゃ、そろそろ帰ろうかな」
「親父、迎えに来るの?」
「うん、もうすぐ着くと思うよ。その前に化粧室行きたいな」
ラウンジのある1階は、人も多くてトイレも混んでいる。
2階の方が空いていそうだったので、テルさんに付き合って一緒に2階に上がった。
でも2階は宴会場があって、披露宴でもやっているのか、フロアもそこそこ賑わっている。
「ここも結構混んでいそうだね」
「そうだね。でも、いいや、行ってくるから荷物見ててくれる?」
大量の買い物を傍に置いて、俺は知ソファーに腰を下ろした。
「ここで待ってるから、行っておいでよ」
「うん、ごめんね」
走っていくテルさんの後ろ姿を見送って、俺はソファーに深く背中を預けた。
――今頃透さんは、どうしてるんだろう。パーティーって、どこでやってるんだろう。
そんな事を思いながら、目線の先の宴会場の扉が開いて、中から人が出てくるのを何気なく眺めていた。
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