出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra2:Moonlight scandal

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 コンビニに寄って、今夜食べ損なった 夕飯の代わりに弁当を買って帰った。

 昨日から閉めきっていた部屋のドアを開けると、蒸し暑い空気が出迎えてくれる。

「あっつぅ……」

 取り敢えず窓を開けると、少しだけ涼しい夜風が入ってきてカーテンを微かに揺らした。

「窓を開けたら、結構涼しいな」

 独り言を呟きながら小さなローテーブルを窓際に移動させて、コンビニの袋から弁当とビールを取り出して座る。

 缶ビールのプルタブを上げるとプシュッと軽快な音が部屋に響いた。溢れる泡を掬うように口をつけてから、冷たいビールをコクコクと音を立たせながら喉へと流し込む。

「ぷはーーっ! うめー!」

 ――って、俺はおっさんかよ!

 なんて思いながら弁当の蓋を開けて、唐揚げをつまむ。

「……今頃、透さんは何食ってんだろ……」

 お母さんと美絵さんて人と三人で、どっかホテルのレストランでコースとか食べてんのかなぁ。

 そんな光景を思い浮かべると、なんかやっぱり胸がモヤモヤしてくる。

「あ……、そう言えば……」

 週末に、提携記念パーティーが、どうのこうのって言ってたっけ。

「週末って……プールの約束、大丈夫かなぁ」
 
 透さんとプールに行く日は今度の土曜日の予定なんだけど……。

 そのパーティーってのが、約束の日に被ってないかが心配だった。

 でも透さんは、後で連絡するから週末のこと決めようって、言ってくれたし。

「うん、きっと大丈夫」

 ――きっと、大丈夫……だよな?

 嫌な予感なんかスパっと忘れたいけど、気になり出すと悪い方にばかり考えてしまって、婚約者って人の顔も、また浮かんできたりして、モヤモヤが止まらなくなる。

「やっぱ、暑いな」

 窓から入ってくる夜風が、さっきまでは気持ちいいと思ったのに、急に蒸し暑く感じてくる。

 俺は箸を置き、立ち上がって全開にしていた窓を閉め、エアコンの電源を入れた。

 残りの弁当をさっさと腹に詰め込んで、空になった弁当の箱とビールの空き缶を片付けて浴室へ向かう。

 手早く髪と体を洗って、濡れた髪は簡単にバスタオルでゴシゴシ拭いただけで半乾きなまま、ドサッとベッドに寝転がった。

 時刻は、10時を回ったところ。

 携帯を確認しても、透さんからの連絡はまだきてない。

 ――早く……連絡こないかな。

 そう願いながら、携帯を握ったまま胸の上に置く。

 きっと0時までには、電話かメールをくれるはず。だから、起きて待ってなきゃ。

 そう思っていたのに、疲れているのか、どうしようもなく瞼が重くて。

 俺は、携帯を握り締めたまま、いつの間にか眠ってしまっていた。


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