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Extra2:Moonlight scandal
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振り向くと、透さんは眉間に皺を寄せ、心配そうな表情で俺に視線を合わせる。
「透さん……、」
「ごめんね直くん、なんか……こんな事になって」
確かにお母さんに言われた言葉にチクチクと胸が痛くなったけど、透さんのことを信じてるから、そんなに心配そうな顔をしないでほしい。
だから俺は、透さんが心配しないように大丈夫だよと、笑ってみせた。
きっと上手く笑えたと思う。
透さんは、そんな俺から視線を外さずに漆黒の瞳を細める。
次の瞬間、腕を引っ張られ外に出ると、透さんは後ろ手にドアを閉めた。
「……透さん?」
そのままぎゅっと抱きすくめられる。
――どうしたの? と、口に出すより速く、顎を掬い上げられて唇が重なった。
舌が挿し込まれて、そのまま俺の咥内へ熱を送り込まれる。
背中に回った透さんの手に力がこめられて、きつく抱きしめられて、キスは角度を変えて更に深く、息ができないくらいに激しくなっていく。
「……ん、……ふ……ッ」
――やばい、こんな玄関の外で、誰かに見られたら!
やっと唇が離れた時には、俺の息は上がっていて、透さんの胸元に額をくっつけて肩を上下させていた。
「直、顔をあげて……」
透さんの掌が俺の頬を包み、上を向かせてまた唇が重なる。
「ん……っ、……駄目……っ」
透さんの胸に両手を当てて肘を伸ばして突っ張ると、漸く唇を離してくれた。
それでも透さんは、背中を後ろのドアに預けて、俺の身体をギュっと抱きしめたまま。
「……ごめん、あんまり直くんが可愛いから」
頭の上に、透さんの小さな苦笑が落ちてきた。
「なんで? 俺のどこが可愛いの。俺何もしてないじゃん」
いったいどこで、透さんのスイッチが入っちゃったのか不思議で、抱きしめられた腕の中から透さんを見上げた。
「俺に心配かけさせないように、気を遣ってくれたんでしょう?」
そう言って、柔らかく微笑んだ透さんの瞳と目が合うと、なんだか恥ずかしくて、俺はまた俯いてしまう。
「べ、別に気を遣った訳じゃないから」
ちょっとだけ強がってみせると、透さんはクスっと笑いながら俺の髪を撫でてくれる。
「本当にごめんね。……あの人に何か言われた?」
「……婚約の話、なくなってないって、言ってたけど……」
それは、今日一番に気になっていることだった。
「……あの人が勝手に言ってることだから、気にしなくていいよ」
透さんがそう言ってくれると、さっきまでの不安が嘘のように消えていく気がする。
「そのことも含めて、今夜もう一度ちゃんと話し合いするよ」
透さんがそう言った瞬間、透さんの背後のドアを中からノックする音が聞こえた。
「透さん、何をしているの? 開けなさい」
部屋の中から急かすような声が聞こえてくる。
透さんが凭れていた背中を離してドアを開けると、中から声の主が顔を出した。
「透さん……、」
「ごめんね直くん、なんか……こんな事になって」
確かにお母さんに言われた言葉にチクチクと胸が痛くなったけど、透さんのことを信じてるから、そんなに心配そうな顔をしないでほしい。
だから俺は、透さんが心配しないように大丈夫だよと、笑ってみせた。
きっと上手く笑えたと思う。
透さんは、そんな俺から視線を外さずに漆黒の瞳を細める。
次の瞬間、腕を引っ張られ外に出ると、透さんは後ろ手にドアを閉めた。
「……透さん?」
そのままぎゅっと抱きすくめられる。
――どうしたの? と、口に出すより速く、顎を掬い上げられて唇が重なった。
舌が挿し込まれて、そのまま俺の咥内へ熱を送り込まれる。
背中に回った透さんの手に力がこめられて、きつく抱きしめられて、キスは角度を変えて更に深く、息ができないくらいに激しくなっていく。
「……ん、……ふ……ッ」
――やばい、こんな玄関の外で、誰かに見られたら!
やっと唇が離れた時には、俺の息は上がっていて、透さんの胸元に額をくっつけて肩を上下させていた。
「直、顔をあげて……」
透さんの掌が俺の頬を包み、上を向かせてまた唇が重なる。
「ん……っ、……駄目……っ」
透さんの胸に両手を当てて肘を伸ばして突っ張ると、漸く唇を離してくれた。
それでも透さんは、背中を後ろのドアに預けて、俺の身体をギュっと抱きしめたまま。
「……ごめん、あんまり直くんが可愛いから」
頭の上に、透さんの小さな苦笑が落ちてきた。
「なんで? 俺のどこが可愛いの。俺何もしてないじゃん」
いったいどこで、透さんのスイッチが入っちゃったのか不思議で、抱きしめられた腕の中から透さんを見上げた。
「俺に心配かけさせないように、気を遣ってくれたんでしょう?」
そう言って、柔らかく微笑んだ透さんの瞳と目が合うと、なんだか恥ずかしくて、俺はまた俯いてしまう。
「べ、別に気を遣った訳じゃないから」
ちょっとだけ強がってみせると、透さんはクスっと笑いながら俺の髪を撫でてくれる。
「本当にごめんね。……あの人に何か言われた?」
「……婚約の話、なくなってないって、言ってたけど……」
それは、今日一番に気になっていることだった。
「……あの人が勝手に言ってることだから、気にしなくていいよ」
透さんがそう言ってくれると、さっきまでの不安が嘘のように消えていく気がする。
「そのことも含めて、今夜もう一度ちゃんと話し合いするよ」
透さんがそう言った瞬間、透さんの背後のドアを中からノックする音が聞こえた。
「透さん、何をしているの? 開けなさい」
部屋の中から急かすような声が聞こえてくる。
透さんが凭れていた背中を離してドアを開けると、中から声の主が顔を出した。
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