出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra2:Moonlight scandal

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 溜息ひとつ零して、マンションのエントランスに向かおうとしたところで、後ろから知った声に呼び止められた。

「直じゃん、何してんの?」

 振り向くと、啓太がこれまた暑さにやられた顔をして、コンビニの袋をぶらぶらさせながら、こっちに走ってくる。

「……おまっ、走るなよ、こっちまで暑くなるっ!」

「マジで、あっちぃな」

 俺の傍に駆け寄って来て、汗に濡れたTシャツの裾をパタパタさせている。

 啓太が隣に来ただけで、絶対今2度くらい気温上がったと思う。

「んで? 暑いのに、こんなとこで何一人で物思いにふけってんの?」

「……別に、なんでもないって!」

 啓太って、こういう時やっぱり鋭い……って思う。

「日曜のこんな時間に帰ってるなんて珍しいじゃん。透さんとデートじゃなかったのか?」

「……う、」

 ――ほら、やっぱり鋭い……。

 俺が口ごもってると、啓太はコンビニの袋を俺の頬にあててきた。

「――冷たっ!」

 不意にだったから驚いたけど、暑さにやられてた今の俺には、その冷たさはすっごい気持ちいい。

「ま、取り敢えず、早く部屋に入ろうぜ、直もアイス食うだろ?」

 啓太の持ってたコンビニの袋の中身は、アイスだった。

 しかも、いろんな種類のアイスが、袋の中いっぱいに詰め込まれていた。


 **

「……いったい何個買ってきてんの。アイス屋でも始めるわけ?」

「んー、だって暑いんだもん」

 小さな冷凍室に、買ってきたアイスをギュウギュウに詰め込む啓太の横で、俺はソーダ味のアイスバーの袋を開ける。

「ちょっ、おまっ、何勝手に開けてんの! あー、ソーダ味のはそれ1本だけなのにー!」

 啓太が言った時には、もうすでにソーダ味のアイスバーは、俺の口の中でレロレロと舐められていた。

「ほへん」

『ごめん』って謝ってんのに、「おまえ、マジありえねぇ。咥えたまんま、喋んじゃねぇよ!」って、ぶつぶつといつまでも怒る啓太。

「アイスくらいでそんな怒るなよ……あ、じゃあ残り食べる?」

「いっ、いらねぇよ!」

 ――俺より子供なやつ、ここにいるじゃん。

 アイスを食べ終わる頃には、啓太の部屋のエアコンも効いてきて、汗もすっかりひいていた。

「そういえばさ、啓太って今日はデートじゃなかったの?」

 啓太は、あれからもずっと、ゆり先輩の事が好きで、時々デートをしているみたいだった。

「今日は、俺の番じゃないからさ」

 ゆり先輩は相変わらず啓太オンリーじゃないみたいだけど。

「啓太は、それで満足してるの?」

 好きな人が他の奴とも付き合ってるなんて、俺だったら……。

 もしも透さんが、俺以外の誰かと付き合ってるとしたら……絶対耐えられない。

『――それでも好きだから』

 啓太は、前にそう言ったけど……。

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