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Extra2:Moonlight scandal
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夢の中で携帯の着信音が聞こえている。
――俺のじゃない……。
誰の携帯だよ朝っぱらから……まだ眠いのに……うるさいなぁ。
夢なのか現実なのか曖昧な中で微睡んでいると、不意に隣に感じていた体温が遠のいて、スプリングが微かに揺れた。
――あ、そうか俺……透さんの部屋に泊まったんだった。
薄く目を開けて、着信音のする方へ視線を向ければ、透さんがベッドサイドチェストの上に置いてある携帯を取ろうとしているところだった。
「――はい、篠崎です。……はい、お早うございます」
――誰だろう、こんな朝から……って、今何時かな。
時計に目をやると、10時過ぎたところだった。
別に朝早い時間じゃないのか……。
だけど、日曜のこんな時間に誰だろう。
「――はい、大丈夫です。分かりました。じゃあ後で」
――え……?
透さんの言葉に、この後、何時からかは知らないけど、用事が出来たことだけは分かった。
携帯をチェストの上に戻して、透さんがこちらを振り返る。
「……あ、ごめんね、起こしちゃった?」
「……んーん、大丈夫。おはよ、透さん」
「おはよう、直くん」
俺の前髪をかき上げて、額にそっとキスをくれてから、唇も一度だけチュッとリップ音を立てて離れていく。
「どうしたの? 仕事の電話?」
「うん、そうなんだけど……ちょっと急ぎで出勤しないといけなくなった」
――やっぱり……。
そうじゃないかとは、思ったけど……。今日は一日一緒にいれると思ったのに……。
「ごめんね、施主さんからキッチンの位置変更して欲しいって連絡があったらしくてね。着工の予定があるから、急いで打ち合わせして書き換えないと」
――分かってる……仕事だって分かってるんだけど。
「えー、だって、今日は休みじゃん。会社だって休業日なのに、月曜じゃ駄目なの?」
「……ごめん」
透さんがすごく困った顔してる……。分かってる、こんなの俺の我侭だって分かってるのに……。
「俺といるより、そりゃ仕事の方が優先だよね」
……って、子供みたいなこと言ってしまう。本当はそんな事、言いたくないのに!
「直くん、本当にごめんね。でも、仕事の方が優先ってわけじゃないよ」
そんな事、透さんに言わせてしまう自分に呆れてしまう。
「……透さん、ごめん……俺、ちゃんと分かってるから。今の……、ちょっと言ってみただけだから。ごめん、忘れて」
すごい自己嫌悪に俯いてしまった俺を、透さんは優しく抱きしめて、頭のてっぺんにキスをしてくれる。
「ごめんね、直くんにそんな思いをさせてしまって」
俺は俯いたまま、首を横に振る事しかできなくて……。
こんな我侭な俺に、いつだって透さんは優しい。だからいつも気が付いたら甘えてしまってる。
分かってるのに……。
「でも、来週の土曜日は、フィットネスクラブの予約しておくから、一緒に泳ぎに行こうね」
優しく頬を撫でてくれる、綺麗な手。
透さんの言葉が嬉しくて、俺はその手の上に自分の手を添えて、透さんを見上げた。
「うん! 来週の土曜日、楽しみにしてる」
ゲンキンな俺は、それだけで機嫌が直って、満面の笑みで応える。
ホント、俺って子供だなって、また自己嫌悪。こんな自分が嫌なのに……。
――俺のじゃない……。
誰の携帯だよ朝っぱらから……まだ眠いのに……うるさいなぁ。
夢なのか現実なのか曖昧な中で微睡んでいると、不意に隣に感じていた体温が遠のいて、スプリングが微かに揺れた。
――あ、そうか俺……透さんの部屋に泊まったんだった。
薄く目を開けて、着信音のする方へ視線を向ければ、透さんがベッドサイドチェストの上に置いてある携帯を取ろうとしているところだった。
「――はい、篠崎です。……はい、お早うございます」
――誰だろう、こんな朝から……って、今何時かな。
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だけど、日曜のこんな時間に誰だろう。
「――はい、大丈夫です。分かりました。じゃあ後で」
――え……?
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携帯をチェストの上に戻して、透さんがこちらを振り返る。
「……あ、ごめんね、起こしちゃった?」
「……んーん、大丈夫。おはよ、透さん」
「おはよう、直くん」
俺の前髪をかき上げて、額にそっとキスをくれてから、唇も一度だけチュッとリップ音を立てて離れていく。
「どうしたの? 仕事の電話?」
「うん、そうなんだけど……ちょっと急ぎで出勤しないといけなくなった」
――やっぱり……。
そうじゃないかとは、思ったけど……。今日は一日一緒にいれると思ったのに……。
「ごめんね、施主さんからキッチンの位置変更して欲しいって連絡があったらしくてね。着工の予定があるから、急いで打ち合わせして書き換えないと」
――分かってる……仕事だって分かってるんだけど。
「えー、だって、今日は休みじゃん。会社だって休業日なのに、月曜じゃ駄目なの?」
「……ごめん」
透さんがすごく困った顔してる……。分かってる、こんなの俺の我侭だって分かってるのに……。
「俺といるより、そりゃ仕事の方が優先だよね」
……って、子供みたいなこと言ってしまう。本当はそんな事、言いたくないのに!
「直くん、本当にごめんね。でも、仕事の方が優先ってわけじゃないよ」
そんな事、透さんに言わせてしまう自分に呆れてしまう。
「……透さん、ごめん……俺、ちゃんと分かってるから。今の……、ちょっと言ってみただけだから。ごめん、忘れて」
すごい自己嫌悪に俯いてしまった俺を、透さんは優しく抱きしめて、頭のてっぺんにキスをしてくれる。
「ごめんね、直くんにそんな思いをさせてしまって」
俺は俯いたまま、首を横に振る事しかできなくて……。
こんな我侭な俺に、いつだって透さんは優しい。だからいつも気が付いたら甘えてしまってる。
分かってるのに……。
「でも、来週の土曜日は、フィットネスクラブの予約しておくから、一緒に泳ぎに行こうね」
優しく頬を撫でてくれる、綺麗な手。
透さんの言葉が嬉しくて、俺はその手の上に自分の手を添えて、透さんを見上げた。
「うん! 来週の土曜日、楽しみにしてる」
ゲンキンな俺は、それだけで機嫌が直って、満面の笑みで応える。
ホント、俺って子供だなって、また自己嫌悪。こんな自分が嫌なのに……。
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