出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第四章:想う心と○○な味の……

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 漸くラッピングを外して、箱の蓋を開けて、クッキーシューを透さんが持ってきたプレートの上にのせる。

「可愛いね、これ」

「うん、実は、これ俺が作ったの」

「へぇ! そうなんだ。直くん、凄いね!」

 誉められて、ちょっと照れてしまう。

 このクッキーシューを作るきっかけになったのは、バレンタインの時。透さんにあげたくて、頑張ったんだった。

「透さんの為に作ったんだよ」って言うと、凄い不思議そうな顔されたけど、いいんだ。その話は、秘密だよって、笑って誤魔化した。

 シューの間に飾ってあるメッセージプレートに、池田さんが書いてくれた文字は、『Happy Birthday』でもなければ、『誕生日おめでとう』でもなくて……。

 ――『元気出せよ!』

 俺、そんなに元気なかったのかな。

「直くん、元気なかったんだ?」

「そんなつもりなかったんだけど……やっぱり元気ないように見えたのかな」

 透さんと、もう会えないと思っていたから。透さんの事、忘れようとすると苦しいから、忘れないでいるって思う事で、自分を励まして。

「ごめん……」

 そう言って抱きしめてくれる腕はすごく暖かくて、今すごい幸せで。この幸せが嬉しくて、ちょっと涙で目が潤んでくる。

「ね、透さん、これ一緒に食べよう」

 そう言って、大き目サイズなクッキーシューを崩さないように手で持ち上げた。

「え? どうやって食べるの? フォークとか使わないの?」

 透さんは、ちゃんとフォークも用意してくれてたけど、

「二人で、一緒にかぶり付いて食べよう」

 無理じゃない? って、言いながらも、透さんも結構乗り気になってる。

 二人でそっとクッキーシューを手で支えて、お互いが反対側から食べる体制に入った。

「透さん、せーので、食べるんだよ」

「うん、分かった」

 二人でニヤニヤしながら、クッキーシューを挟んで目で合図する。

「せぇのぉー!」

 同時に両端からかぶり付くと、当然だけどクリームがぐにゅっとはみ出した。

 ――はみ出すのは分かるんだけど……。

「…………」

 どうして俺だけ、クリームだらけになってしまうんだろう。

 透さんは唇に少し付いただけで、ちょっと指先で拭えば大丈夫な量なのに。

 俺は、口の周りどころか、はみ出して落ちてしまったクリームが、何も着ていない胸や手にも付いちゃって。

「あー、やばっ、シーツに落ちそう……」

 クッキーシューを持ったまま、片方の手で胸に付いているクリームを拭おうとしても、手にも付いちゃってるからどうにもならなくて、取り敢えず指に付いてるクリームを舐めようとしていたら、その指を透さんに掴まれた。

「直くん……」

 じっと俺の目に視線を合わせながら、赤い舌が俺の指に付いたクリームを舐めとって……それから胸元に付いたクリームも……。

「とおるさん……っ、」

 クスッと笑う透さんは、色気だだ漏れな表情で……。

 なんか……前にも似たような事が……。

 なんて考える間もなく、透さんの舌が俺の唇に触れてきて、ペロッとクリームを舐め取った。

 唇の周りを丁寧に舐め取った後、離れずにそのまま深く口づけられて……。

「……っ、ん、ん」

 唇を割り、侵入してきた舌に咥内を撫でられたら、また痺れるような快感が生まれる。

 俺なんて、それだけでもう腰が砕けそうになってるのに……。

 透さんは、咥内を味わってあっさりと唇を離すと、「ん、美味しい……」なんて言って微笑むんだ。

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