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第四章:想う心と○○な味の……
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***
「……あ、もうこんな時間……」
サイドチェストの上に置かれた時計で時間を確認しながら、透さんがゆっくりと起き上がる。
「……え?」
身体を重ね合っていた温もりの余韻にまだ浸っていたかった俺は、離れて行こうとする透さんの腕に思わず手を伸ばした。
「ほら、11時30分。直くんの誕生日が終わっちゃうよ」
「あ、ホントだ」
どれくらい、こうして抱き合って、くっついていたのかな。
「お腹空いたよね……」
「う……ん、そう言えば……」
そう言えば、今日って夕飯食べてなかったな……なんて、今更思い出していた。
なんだか胸がいっぱいで忘れちゃってたけど、思い出すとお腹が減ってきたような気がする。
「ちょっと待ってて」
透さんは、俺の額にチュっとキスを落として立ち上がると、さっき床に脱ぎ捨てたシャツだけ拾い上げて、羽織りながら部屋を出て行ってしまう。
何か食べるものでも、作りに行ったんだろうか……。
出て行く後ろ姿を見送りながら、何か作るんなら手伝わなきゃ……と、まだ甘い余韻の残る身体を無理やり起こす。
でももう少し、ベッドでまったりイチャイチャとか? したいなぁーなんて考えてる自分に気が付いて、思わず苦笑した。
――完全に顔が緩んでるよね。
「え……っと、俺の服……」
ベッドの上から、散らばった服を探していたら、ドアが開いて透さんが戻ってきて、俺は、部屋に入ってくる透さんの姿に、ついボーっと見惚れてしまった。
羽織っただけのシャツはボタンをとめてなくて、隙間から見え隠れする綺麗に引き締まった身体が、壮絶に色っぽくて、俺はまた下半身に熱が集まるのを感じて俯いてしまう。
そんな俺に気付いたのか、透さんはクスクスと笑う。
「気になっちゃう?」と、訊かれて、「べ、別に……」とか、応えながらも、顔がめちゃ熱くて視線を逸らした。
「ごめんね、でももう時間が無かったから……」
そう言って、透さんはクッキーシューの入った箱を俺の膝の上に置いてくれた。
「…… あ、」
「今日のうちに食べないとね? バースデーケーキかな?」
「ケーキじゃないんだ。シュークリーム」
「へえー、そうなの?」
会話をしながら、透さんが俺の隣に腰掛ける。
「直くん、早く開けてみて」
「うん」
促されて、俺は綺麗にラッピングされた箱のリボンに手をかけた。
リボンを解きかけたところで、透さんが手にしていたペットボトルを俺の目の前に差し出した。
「いっぱい運動したから、喉も乾いてるんじゃない?」
そう言って、手にしていたペットボトルを見せて、「飲む?」と、小首を傾げる。
「うん、飲む」
確かに喉が渇いてたから、水をグビグビ一気に飲みたい気分だった。
なのに、ラッピングを開けながら、蓋を開けてくれたペットボトルを受け取ろうと手を伸ばしたら……、透さんは、俺に渡さずに自分で飲み始めた。
「……あ……、」
伸ばした手は、行き場がなくなり、宙を彷徨う。
そんな俺を見て、透さんは悪戯っぽく口角を上げて、そのまま俺の後頭部に手を回して、唇を近づけて……、
「……ん……」
重なった唇から、冷たい水が流し込まれた。
飲み込み切れなかった水が口端から少し零れて、顎を伝って首筋に流れ落ちる。
口に含んだ水を俺の咥内へ全部流し込んで、濡れた唇を手の甲で拭いながら「もっと飲む?」って訊かれて、「もっと、キスしたい」って、応えてしまった。
「キスは後でね。先にバースデーシュー食べないと、日にち変わっちゃう」と、透さんは笑いながら箱を指さして、再び早く開けてと促す。
「透さんが、キスを仕掛けてきたんじゃん」って文句を言うと、「直くんが水が飲みたいって言うから……」って、返されて……。
思わず、二人で顔を見合わせて笑った。
「……あ、もうこんな時間……」
サイドチェストの上に置かれた時計で時間を確認しながら、透さんがゆっくりと起き上がる。
「……え?」
身体を重ね合っていた温もりの余韻にまだ浸っていたかった俺は、離れて行こうとする透さんの腕に思わず手を伸ばした。
「ほら、11時30分。直くんの誕生日が終わっちゃうよ」
「あ、ホントだ」
どれくらい、こうして抱き合って、くっついていたのかな。
「お腹空いたよね……」
「う……ん、そう言えば……」
そう言えば、今日って夕飯食べてなかったな……なんて、今更思い出していた。
なんだか胸がいっぱいで忘れちゃってたけど、思い出すとお腹が減ってきたような気がする。
「ちょっと待ってて」
透さんは、俺の額にチュっとキスを落として立ち上がると、さっき床に脱ぎ捨てたシャツだけ拾い上げて、羽織りながら部屋を出て行ってしまう。
何か食べるものでも、作りに行ったんだろうか……。
出て行く後ろ姿を見送りながら、何か作るんなら手伝わなきゃ……と、まだ甘い余韻の残る身体を無理やり起こす。
でももう少し、ベッドでまったりイチャイチャとか? したいなぁーなんて考えてる自分に気が付いて、思わず苦笑した。
――完全に顔が緩んでるよね。
「え……っと、俺の服……」
ベッドの上から、散らばった服を探していたら、ドアが開いて透さんが戻ってきて、俺は、部屋に入ってくる透さんの姿に、ついボーっと見惚れてしまった。
羽織っただけのシャツはボタンをとめてなくて、隙間から見え隠れする綺麗に引き締まった身体が、壮絶に色っぽくて、俺はまた下半身に熱が集まるのを感じて俯いてしまう。
そんな俺に気付いたのか、透さんはクスクスと笑う。
「気になっちゃう?」と、訊かれて、「べ、別に……」とか、応えながらも、顔がめちゃ熱くて視線を逸らした。
「ごめんね、でももう時間が無かったから……」
そう言って、透さんはクッキーシューの入った箱を俺の膝の上に置いてくれた。
「…… あ、」
「今日のうちに食べないとね? バースデーケーキかな?」
「ケーキじゃないんだ。シュークリーム」
「へえー、そうなの?」
会話をしながら、透さんが俺の隣に腰掛ける。
「直くん、早く開けてみて」
「うん」
促されて、俺は綺麗にラッピングされた箱のリボンに手をかけた。
リボンを解きかけたところで、透さんが手にしていたペットボトルを俺の目の前に差し出した。
「いっぱい運動したから、喉も乾いてるんじゃない?」
そう言って、手にしていたペットボトルを見せて、「飲む?」と、小首を傾げる。
「うん、飲む」
確かに喉が渇いてたから、水をグビグビ一気に飲みたい気分だった。
なのに、ラッピングを開けながら、蓋を開けてくれたペットボトルを受け取ろうと手を伸ばしたら……、透さんは、俺に渡さずに自分で飲み始めた。
「……あ……、」
伸ばした手は、行き場がなくなり、宙を彷徨う。
そんな俺を見て、透さんは悪戯っぽく口角を上げて、そのまま俺の後頭部に手を回して、唇を近づけて……、
「……ん……」
重なった唇から、冷たい水が流し込まれた。
飲み込み切れなかった水が口端から少し零れて、顎を伝って首筋に流れ落ちる。
口に含んだ水を俺の咥内へ全部流し込んで、濡れた唇を手の甲で拭いながら「もっと飲む?」って訊かれて、「もっと、キスしたい」って、応えてしまった。
「キスは後でね。先にバースデーシュー食べないと、日にち変わっちゃう」と、透さんは笑いながら箱を指さして、再び早く開けてと促す。
「透さんが、キスを仕掛けてきたんじゃん」って文句を言うと、「直くんが水が飲みたいって言うから……」って、返されて……。
思わず、二人で顔を見合わせて笑った。
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