出逢えた幸せ

ずーちゃ

文字の大きさ
上 下
156 / 351
第四章:想う心と○○な味の……

(54)

しおりを挟む
 ***


「……あ、もうこんな時間……」

 サイドチェストの上に置かれた時計で時間を確認しながら、透さんがゆっくりと起き上がる。

「……え?」

 身体を重ね合っていた温もりの余韻にまだ浸っていたかった俺は、離れて行こうとする透さんの腕に思わず手を伸ばした。

「ほら、11時30分。直くんの誕生日が終わっちゃうよ」

「あ、ホントだ」

 どれくらい、こうして抱き合って、くっついていたのかな。

「お腹空いたよね……」

「う……ん、そう言えば……」

 そう言えば、今日って夕飯食べてなかったな……なんて、今更思い出していた。

 なんだか胸がいっぱいで忘れちゃってたけど、思い出すとお腹が減ってきたような気がする。

「ちょっと待ってて」

 透さんは、俺の額にチュっとキスを落として立ち上がると、さっき床に脱ぎ捨てたシャツだけ拾い上げて、羽織りながら部屋を出て行ってしまう。

 何か食べるものでも、作りに行ったんだろうか……。

 出て行く後ろ姿を見送りながら、何か作るんなら手伝わなきゃ……と、まだ甘い余韻の残る身体を無理やり起こす。

 でももう少し、ベッドでまったりイチャイチャとか? したいなぁーなんて考えてる自分に気が付いて、思わず苦笑した。 

 ――完全に顔が緩んでるよね。

「え……っと、俺の服……」

 ベッドの上から、散らばった服を探していたら、ドアが開いて透さんが戻ってきて、俺は、部屋に入ってくる透さんの姿に、ついボーっと見惚れてしまった。

 羽織っただけのシャツはボタンをとめてなくて、隙間から見え隠れする綺麗に引き締まった身体が、壮絶に色っぽくて、俺はまた下半身に熱が集まるのを感じて俯いてしまう。

 そんな俺に気付いたのか、透さんはクスクスと笑う。

「気になっちゃう?」と、訊かれて、「べ、別に……」とか、応えながらも、顔がめちゃ熱くて視線を逸らした。

「ごめんね、でももう時間が無かったから……」

 そう言って、透さんはクッキーシューの入った箱を俺の膝の上に置いてくれた。

「…… あ、」

「今日のうちに食べないとね? バースデーケーキかな?」

「ケーキじゃないんだ。シュークリーム」

「へえー、そうなの?」

 会話をしながら、透さんが俺の隣に腰掛ける。

「直くん、早く開けてみて」

「うん」

 促されて、俺は綺麗にラッピングされた箱のリボンに手をかけた。

 リボンを解きかけたところで、透さんが手にしていたペットボトルを俺の目の前に差し出した。

「いっぱい運動したから、喉も乾いてるんじゃない?」

 そう言って、手にしていたペットボトルを見せて、「飲む?」と、小首を傾げる。

「うん、飲む」

 確かに喉が渇いてたから、水をグビグビ一気に飲みたい気分だった。

 なのに、ラッピングを開けながら、蓋を開けてくれたペットボトルを受け取ろうと手を伸ばしたら……、透さんは、俺に渡さずに自分で飲み始めた。

「……あ……、」

 伸ばした手は、行き場がなくなり、宙を彷徨う。

 そんな俺を見て、透さんは悪戯っぽく口角を上げて、そのまま俺の後頭部に手を回して、唇を近づけて……、

「……ん……」

 重なった唇から、冷たい水が流し込まれた。

 飲み込み切れなかった水が口端から少し零れて、顎を伝って首筋に流れ落ちる。

 口に含んだ水を俺の咥内へ全部流し込んで、濡れた唇を手の甲で拭いながら「もっと飲む?」って訊かれて、「もっと、キスしたい」って、応えてしまった。

「キスは後でね。先にバースデーシュー食べないと、日にち変わっちゃう」と、透さんは笑いながら箱を指さして、再び早く開けてと促す。

「透さんが、キスを仕掛けてきたんじゃん」って文句を言うと、「直くんが水が飲みたいって言うから……」って、返されて……。

 思わず、二人で顔を見合わせて笑った。

しおりを挟む
B L ♂ U N I O N

感想などお待ちしております。
★メール★clap★res
感想 380

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...