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第四章:想う心と○○な味の……
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「……直くん?」
しがみ付く俺の頭の上に、透さんの少し驚いた声が落ちてくる。
言わなきゃいけない事や伝えたい気持ちが一気に溢れてくる。どこから話せばいいのか分からないくらいに。
透さんが俺に謝るような事は何もなくて、悪いのは俺で、俺は透さんのことが好きで……だから、だから、逢えなくなるのは絶対嫌なんだ……。
「透さんは悪くない! 悪いのは全部俺なんだから!」
みっきーの事、なんて言ったらいいのか分からないけど、透さんにあんなに苦しそうな顔をさせたのは、俺のせいなんだ。
「あの飲み会の夜、色々あって……流されてしまったのは事実だけど、でもそれは俺がしっかりしてなかったのが悪かったんで……」
腕にしがみ付いたまま透さんを見上げれば、驚いた表情を浮かべながら見詰め返してくる。
「ホントに俺がどうしようもなくアホで! 透さんに許してもらえなくても仕方ないのは俺の方で!」
俺は、言いたい事が上手く纏まらなくて、それでも、ただただ、必死に想いを伝えたくて。
「他の人を選んだりしないっ、だって……、俺……、」
でもこれだけは、俺の本当の気持ちだから……。
「俺は、透さんのことが好きなんだから!」
ずっと言いたくて……、でも逢えなくて……、言えなかった想いをやっと言えた。
「俺も……あの店でバイトするようになってからずっと、透さんのことが気になっていたよ」
毎週金曜日のバイトが楽しみだった。
もしかしたら、その頃から好きと言う気持ちがあったのかもしれない。
ただ、男同士だと言うだけで、そんな気持ちに蓋をしていたんだ。
「透さんが結婚するって聞いて、マンションに行ったら引越した後で……。もう会えないと思うと息が出来ないくらい辛かった」
「結婚の事、知ってたの?」
そう問われて、俺は小さく頷いた。
「妹さんが、カフェのフロアマネージャーに、話していたから……、それで……っ、」
言ってるうちに、涙が滲んでくる。
それを隠したくて、思わず透さんの肩に顔を埋めた。
次から次へと溢れる涙が、透さんのジャケットの布に染みをつくってしまうのに、それでもなかなか顔を上げる事ができなかった。
「直くん……」
優しい声が、頭の上にふわりと落ちてくる。
それは、ずっと聞きたかった大好きな人の声。
こうして好きな人に名前を呼ばれる事が、こんなに嬉しいなんて初めて知った。
「俺も……好きだよ」
そう続いた言葉に胸が震えて、ゆっくりと顔を上げれば透さんの暖かい瞳と視線が絡んだ。
「俺も、直くんのことを、想っているよ」
一瞬耳を疑ってしまう。だけど綺麗な漆黒の瞳に映り込んでいるのは、確かに自分だ。
「結婚はしないよ、会社絡みの縁談だったから。少し時間がかかってしまったけどちゃんと断ってきたんだ。それに……」
それに……と言って、俺の頬を包む優しい手。
「こんな可愛い告白をされたら、もう直くんを手放せなくなるよ」
その言葉を聞いた瞬間、目から涙が零れ落ちた。
なんだか嬉しすぎて、そのままの意味で受け取っていいのか躊躇する。
だって……信じられる? 透さんは今、俺のことを好きだって言ったのか?
「直くん……?」
突然の告白が夢みたいで反応するのを忘れていた俺に、透さんが目線を合わせてくる。
「……キス……しても?」
そう言われて、言葉の意味を理解すれば、一瞬で顔が熱く火照った。
透さんは、チュッと、触れるだけのキスをくれて、また目線を合わせる。
「本当は、俺の方から駄目元でも告白したかったのに、直くんに先を越されちゃったな」
少しはにかみながらも、真っ直ぐに見詰めてくれる瞳が嬉しくて、今度は俺から透さんに軽く触れるだけのキスをした。
お互いの額をくっつけたまま、暫く見詰め合って、自然に笑顔になってしまう。
それでも俺は、まだ何だか信じられなかった……。幸せすぎて。
しがみ付く俺の頭の上に、透さんの少し驚いた声が落ちてくる。
言わなきゃいけない事や伝えたい気持ちが一気に溢れてくる。どこから話せばいいのか分からないくらいに。
透さんが俺に謝るような事は何もなくて、悪いのは俺で、俺は透さんのことが好きで……だから、だから、逢えなくなるのは絶対嫌なんだ……。
「透さんは悪くない! 悪いのは全部俺なんだから!」
みっきーの事、なんて言ったらいいのか分からないけど、透さんにあんなに苦しそうな顔をさせたのは、俺のせいなんだ。
「あの飲み会の夜、色々あって……流されてしまったのは事実だけど、でもそれは俺がしっかりしてなかったのが悪かったんで……」
腕にしがみ付いたまま透さんを見上げれば、驚いた表情を浮かべながら見詰め返してくる。
「ホントに俺がどうしようもなくアホで! 透さんに許してもらえなくても仕方ないのは俺の方で!」
俺は、言いたい事が上手く纏まらなくて、それでも、ただただ、必死に想いを伝えたくて。
「他の人を選んだりしないっ、だって……、俺……、」
でもこれだけは、俺の本当の気持ちだから……。
「俺は、透さんのことが好きなんだから!」
ずっと言いたくて……、でも逢えなくて……、言えなかった想いをやっと言えた。
「俺も……あの店でバイトするようになってからずっと、透さんのことが気になっていたよ」
毎週金曜日のバイトが楽しみだった。
もしかしたら、その頃から好きと言う気持ちがあったのかもしれない。
ただ、男同士だと言うだけで、そんな気持ちに蓋をしていたんだ。
「透さんが結婚するって聞いて、マンションに行ったら引越した後で……。もう会えないと思うと息が出来ないくらい辛かった」
「結婚の事、知ってたの?」
そう問われて、俺は小さく頷いた。
「妹さんが、カフェのフロアマネージャーに、話していたから……、それで……っ、」
言ってるうちに、涙が滲んでくる。
それを隠したくて、思わず透さんの肩に顔を埋めた。
次から次へと溢れる涙が、透さんのジャケットの布に染みをつくってしまうのに、それでもなかなか顔を上げる事ができなかった。
「直くん……」
優しい声が、頭の上にふわりと落ちてくる。
それは、ずっと聞きたかった大好きな人の声。
こうして好きな人に名前を呼ばれる事が、こんなに嬉しいなんて初めて知った。
「俺も……好きだよ」
そう続いた言葉に胸が震えて、ゆっくりと顔を上げれば透さんの暖かい瞳と視線が絡んだ。
「俺も、直くんのことを、想っているよ」
一瞬耳を疑ってしまう。だけど綺麗な漆黒の瞳に映り込んでいるのは、確かに自分だ。
「結婚はしないよ、会社絡みの縁談だったから。少し時間がかかってしまったけどちゃんと断ってきたんだ。それに……」
それに……と言って、俺の頬を包む優しい手。
「こんな可愛い告白をされたら、もう直くんを手放せなくなるよ」
その言葉を聞いた瞬間、目から涙が零れ落ちた。
なんだか嬉しすぎて、そのままの意味で受け取っていいのか躊躇する。
だって……信じられる? 透さんは今、俺のことを好きだって言ったのか?
「直くん……?」
突然の告白が夢みたいで反応するのを忘れていた俺に、透さんが目線を合わせてくる。
「……キス……しても?」
そう言われて、言葉の意味を理解すれば、一瞬で顔が熱く火照った。
透さんは、チュッと、触れるだけのキスをくれて、また目線を合わせる。
「本当は、俺の方から駄目元でも告白したかったのに、直くんに先を越されちゃったな」
少しはにかみながらも、真っ直ぐに見詰めてくれる瞳が嬉しくて、今度は俺から透さんに軽く触れるだけのキスをした。
お互いの額をくっつけたまま、暫く見詰め合って、自然に笑顔になってしまう。
それでも俺は、まだ何だか信じられなかった……。幸せすぎて。
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