出逢えた幸せ

ずーちゃ

文字の大きさ
上 下
125 / 351
第四章:想う心と○○な味の……

(23)

しおりを挟む
 池田さんが ケーキを綺麗にカットしていくのを見ているだけで涎が出そう。

 温めた包丁を、生クリーム部分にすーっと滑らせるように入れて、スポンジ部分で水平にスライドさせながら切っていけば、計算したように配置されたいちごとチョコの生クリームの側面が顔を出した。 チョコと苺の色のバランスがサイコーに綺麗で美味しそう!

「いただきます」

 見た目同様フォークを入れた感覚は、生クリームは勿論だけどスポンジもすごく柔らかい。口に入れると、舌の上で溶ける感じ……それでいて、甘すぎない。

「……おいしぃ……」

 もー、ほっぺが落ちそうって、こういう事を言うのかってくらい美味しくて、思わず自分の頬を手で押さえていたら、「直は、本当に美味そうに食べるよな」と、相田さんに笑われた。

「俺も、こんな美味しいスイーツ作ってみたいなー」

「直は、甘い物好きだもんね。あ、じゃあ、作ってみたら?」

 突然の相田さんの提案に、びっくりして顔をあげた。

「え? 俺が? 無理ですよー。料理とかも全然やってないし」

「普通にご飯作るのとは、また違った面白さもあるよ。あ、そうだ! 今回のバレンタイン用の新作、池田くんの助手をやってくれる?」

「えぇっ?」

 俺は驚いて素っ頓狂な声を上げた。だって俺、そんな事できるわけないもん。ほら、池田さんもちょっとびっくりした顔してるよ。

「あの、俺なんか助手とか、足手まといなだけですよ」

「いや、直はスイーツに関しては舌が肥えてるから、参考になると思うよ、な? 池田くん」

「あぁ、そうですね。色々ヒントもくれるし、俺は構いませんよ」

 池田さんまで、何言ってるんですか……。

「上手く出来たら、彼女にでもプレゼントしたら? 逆バレンタイン? って感じでさ」

 そう言って、あはははっなんて、相田さんは声をあげて笑ってるけど。

 俺はいつの間にか、『彼女にプレゼント』の部分を、『透さんにプレゼント』って置き換えて考えていた。

『じゃあさ、透さんにあげれば?チョコレート』

『バレンタインって、好きな人に愛の告白する日なんじゃねーの?』

 啓太の言った言葉を思い出して……、今度いつ会えるか、分からないけど……、バレンタインの日に、もう一度透さんのマンションに行ってみようかな、なんて。

 池田さんの足手まといになるかもしれないし、出来るかどうか分からないけど……。

「あ、あの池田さん、俺、頑張りますんで、よろしくお願いします」

 気が付いたらもう、そう言って勢いよく頭を下げていた。

 手作りのスイーツを持って、透さんに会いに行く。 

 そう思ったら、なんだかドキドキしてくるし、それでもうすっかりその気になっちゃってるから、ホント俺って単純だなぁって、つくづく思う。

しおりを挟む
B L ♂ U N I O N

感想などお待ちしております。
★メール★clap★res
感想 380

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...