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第四章:想う心と○○な味の……
(18)
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「……ぶっ……、ブーーーーーーーーッ! ハッハーーーーッアハハッ!」
一瞬固まっていた啓太が、床を叩きながら腹を抱えて笑い転げている。
「……なんだよ啓太、お前、笑い上戸かよ」
なんでそんなに可笑しいのか、わけが分かんない。
「ひぃー、もー、腹いてぇー! 笑わせんなよー!」
「はぁー? 俺、何か変な事言ったっけ……」
啓太は笑いを堪えようとしてるけど、どうにも止まらないらしくて、ひぃひぃ言いながら俺に向かってさした指が、ぷるぷる震えてるんだけど!
「だってぇ~、女好きの直が、男の方が好きだとか言うから! アハハハ」
――なんだ、そんな事で笑ってんのか……。
まだ笑い続けている啓太を眺めながら、俺はチビチビと酒を舐める。
「それのどこがそんなに面白いんだか……好きなもんは好きなんだよ、悪いか……」
酒を舐めながらボソボソとそんなことを言えば、啓太が目を大きく見開いて俺の顔をまじまじと見てる。もう完全に笑いは止まってるんだけど、何故か固まったまま動かない。
「……な、お?」
やっと発した声は、なんだか裏返っているし。俺、ホントになんか変な事言ったっけ? と、直前まで交わした会話を頭の中で遡ってみた。
――ん? あれ?
そこで初めて俺は、自分が今、知らずにカミングアウトしてしまっていた事にやっと気が付いた。これが酒の勢いっていうやつなのか?
――しまった! つい口が滑っちまった。と、思っても後の祭り……。酒の勢いって怖い……。
冗談だと思って啓太は笑い飛ばしてくれていたのに。
――あー、めんどくせー。啓太に隠し事なんて出来ないんだから、もういいやバレても。
そんな事を思った俺は、この時はきっとほろ酔いで、気分もハイになっていたに違いない。
結局、啓太に根掘り葉掘り訊かれて、クリスマスイブの日から今日までの事を全て話してしまった。
俺が話している間、最初は驚いていた啓太も、段々と真剣に頷きながら話を最後まで聞いてくれていた。
「そうかぁ。直がねぇ」
啓太は、酒を呑みながらしみじみと言う。
「……男となんて、気持ち悪い?」
ここまで話したものの、これで啓太に友達の縁を切られるんじゃないかって、ちょっと不安になってしまった。
「なーんで、気持ち悪くなんかないよ。それより……」
「……それより?」
それより他に、もっと悪いケースがあるのか。何を言われるのか怖いけれど、俺は黙って啓太の次の言葉を待った。
「いや、それよりさぁ、直が本気で恋するとはねーって思ってさ。俺は嬉しいよ」
「へ?」
「ほら、正月に実家に帰った時も、そんな話したじゃん? あれって、その人のことだったんだろ?」
――ああ、そういやあの時も、透さんの部屋にあった写真の事を啓太に相談して、相手のことでそんなに悩む俺を初めて見たって、言われたっけ。
「初めて本気で好きになった相手が、偶々男だったってだけだろ? それで気持ち悪いなんて思わねえよ」
当たり前みたいにそう言って、徳利に残っていた酒を猪口に注ぎ、くいっと飲み干す啓太の顔が、なんだか男らしい……なんて思ってしまった。
「啓太、お前……、いいやつだったんだな」
「何、今更言ってんだよ、何年友達してると思ってんだよ」
「俺、啓太の事、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、そんな事なかったんだな……」
「なっ、なんで俺が馬鹿なんだよっ! 馬鹿って言うやつが、馬鹿なんだからな!」
未だにチビチビと酒を舐めるように飲んでいる俺の頭を啓太がパチンと叩く。
痛ぇなぁ~、と言いながらも、啓太と友達で良かった。なんて、心から思っていた。
一瞬固まっていた啓太が、床を叩きながら腹を抱えて笑い転げている。
「……なんだよ啓太、お前、笑い上戸かよ」
なんでそんなに可笑しいのか、わけが分かんない。
「ひぃー、もー、腹いてぇー! 笑わせんなよー!」
「はぁー? 俺、何か変な事言ったっけ……」
啓太は笑いを堪えようとしてるけど、どうにも止まらないらしくて、ひぃひぃ言いながら俺に向かってさした指が、ぷるぷる震えてるんだけど!
「だってぇ~、女好きの直が、男の方が好きだとか言うから! アハハハ」
――なんだ、そんな事で笑ってんのか……。
まだ笑い続けている啓太を眺めながら、俺はチビチビと酒を舐める。
「それのどこがそんなに面白いんだか……好きなもんは好きなんだよ、悪いか……」
酒を舐めながらボソボソとそんなことを言えば、啓太が目を大きく見開いて俺の顔をまじまじと見てる。もう完全に笑いは止まってるんだけど、何故か固まったまま動かない。
「……な、お?」
やっと発した声は、なんだか裏返っているし。俺、ホントになんか変な事言ったっけ? と、直前まで交わした会話を頭の中で遡ってみた。
――ん? あれ?
そこで初めて俺は、自分が今、知らずにカミングアウトしてしまっていた事にやっと気が付いた。これが酒の勢いっていうやつなのか?
――しまった! つい口が滑っちまった。と、思っても後の祭り……。酒の勢いって怖い……。
冗談だと思って啓太は笑い飛ばしてくれていたのに。
――あー、めんどくせー。啓太に隠し事なんて出来ないんだから、もういいやバレても。
そんな事を思った俺は、この時はきっとほろ酔いで、気分もハイになっていたに違いない。
結局、啓太に根掘り葉掘り訊かれて、クリスマスイブの日から今日までの事を全て話してしまった。
俺が話している間、最初は驚いていた啓太も、段々と真剣に頷きながら話を最後まで聞いてくれていた。
「そうかぁ。直がねぇ」
啓太は、酒を呑みながらしみじみと言う。
「……男となんて、気持ち悪い?」
ここまで話したものの、これで啓太に友達の縁を切られるんじゃないかって、ちょっと不安になってしまった。
「なーんで、気持ち悪くなんかないよ。それより……」
「……それより?」
それより他に、もっと悪いケースがあるのか。何を言われるのか怖いけれど、俺は黙って啓太の次の言葉を待った。
「いや、それよりさぁ、直が本気で恋するとはねーって思ってさ。俺は嬉しいよ」
「へ?」
「ほら、正月に実家に帰った時も、そんな話したじゃん? あれって、その人のことだったんだろ?」
――ああ、そういやあの時も、透さんの部屋にあった写真の事を啓太に相談して、相手のことでそんなに悩む俺を初めて見たって、言われたっけ。
「初めて本気で好きになった相手が、偶々男だったってだけだろ? それで気持ち悪いなんて思わねえよ」
当たり前みたいにそう言って、徳利に残っていた酒を猪口に注ぎ、くいっと飲み干す啓太の顔が、なんだか男らしい……なんて思ってしまった。
「啓太、お前……、いいやつだったんだな」
「何、今更言ってんだよ、何年友達してると思ってんだよ」
「俺、啓太の事、馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、そんな事なかったんだな……」
「なっ、なんで俺が馬鹿なんだよっ! 馬鹿って言うやつが、馬鹿なんだからな!」
未だにチビチビと酒を舐めるように飲んでいる俺の頭を啓太がパチンと叩く。
痛ぇなぁ~、と言いながらも、啓太と友達で良かった。なんて、心から思っていた。
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