出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第四章:想う心と○○な味の……

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 ――もう、透さんには会えない。二度と逢えないんだ。

 そう考えると、胸の奥が痛くて、苦しくて、息が……できない……。

「……っ」

 苦しい、苦しい……、痛い……、苦しい。

 透さんと、もう二度と逢えない。

 そう思うだけで、身体の全部の機能が止まってしまうんじゃないかって思うくらい、苦しい……。

 ――透さんは、俺の事なんてもう忘れてしまってる……。

 透さんに忘れられてしまう事が、こんなに辛いなんて考えたこともなかった。

 クリスマスイブに公園で偶然出逢った事も、

 一緒にケーキを食べた事も、

 透さんと過ごした時間が、全て無かった事になってしまう。

 ――『直くんは? どう思ってる? 俺のこと』
 
 本当は最初から気付いてた。自分の気持ちに。

 生クリームはただのきっかけで、クリスマスイブのあの夜、公園で偶然出逢った時から……いや、もしかしたらもっと前から。

「直っ、」
 
 ストンと何かが心の中に落ちて、頭の中がスッキリしたように感じた途端、急にみっきーの声がクリアに聞こえてきた。

「……ぁ……、」

 みっきーの指が、俺の頬に触れている。

「……直……、」

「……ふぅ……っ……」

 やっと息を吐き出して、それでやっと気が付いた。

「……俺……泣いて……んの?」

「そうだよ、泣き虫め」

 止め処なく流れる涙を、みっきーが指で拭ってくれている。

「俺……もう逢えないなんて、嫌だ……」

「誰に……? 誰に逢えないのが嫌なの?」

「……あ……」

 透さんに……なんて、みっきーに言えない。

「ばーか」

 みっきーは、苦笑しながら俺の頭を小突く。

「痛ぇ……」

 頭を押さえながらみっきーを見上げれば、「やっと分かったか」って、言いながら笑ってる。

「みっ、き……ッ……俺……」

「うん」

「透さんが、俺の事を忘れるなんて考えた事なかった」

「うん」

「透さんに、もう二度と逢えないなんて、考えた事なかったんだ」

「あーーーっもう!」

 みっきーが急に大声を出して、俺の髪の毛をぐしゃぐしゃにかき回した。

 散々かき回した後、そのまま頭を引き寄せられて、逞しい胸に顔を埋める形で抱きしめられる。

「俺って、めちゃいい奴だろ?」

 みっきーの言葉に口元が緩んで、つい、「うん……惚れそうだよ」って、言ってしまった。

「だからー、俺に惚れればいいのにね、直は」

「ホントだね」

 でも俺は、やっと気付く事ができた。

 男同士だからって、本気で好きになる筈がないって、頑なに決め付けていた。

 透さんが俺の事をどう思ってるかは分からないけど。

 俺は、透さんのことが好きなんだ。

 もう一生逢えないって考えただけで、胸が押し潰されたみたいに苦しい。

 許されるのなら、もう一度逢いたい。

 それでちゃんと伝えたい。

 あなたのことを……心から想ってる。

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