78 / 351
第三章:身体と愛と涙味の……
(10)
しおりを挟む
昨日から色々あり過ぎて……、透さんに逢ったのがもう随分前のような気さえしてくる。
最後に逢ったのは、たったの3日前……。俺が罰ゲームで女装して透さんと夜景を見たあの夜。
――彼氏じゃないのなら、義理立てする必要もない。
昨夜、みっきーに言われた言葉が頭を過ぎった。
『彼氏』……確かに恋人ではなくて、身体の関係はあるから友達でもない。
なら、やっぱりセフレと呼ぶのが多分正しいんだと思うけど。
なのに、飲みすぎて友達の家に泊まったとか、そんな嘘のメールをしただけで心が痛む自分。
そのメールのやりとりをした直後に透さんの姿を見かけて、透さんは気が付いてませんようにって、願う自分。
昨夜、みっきーと関係を持ってしまった事が、透さんに対して後ろめたさで頭の中がいっぱいで……。
――これって、まるで……。
まるで……その後に続く言葉を心の中で呟いてみると、切ないような不思議な感情を覚える。
――だけど……透さんも昨日は……。
彼女と腕を組んで、仲良さそうに歩いて行く後ろ姿を思い出して、今考えていた事を振り払うように、俺はブンブンと思いっ切り頭を横に振った。
――そうだ……俺が後ろめたさを感じる理由なんて、ひとつも無い。透さんと俺は恋人なんかじゃないんだから。
だけど何だろう……。そう考えるのが一番ラクな筈なのに……なんでこんなにへこんでしまうんだ俺。
「どうしたの? さっきから、思い切り首振ったり、地面にのめり込みそうな程沈んでたり?」
「あ……?」
言われてタクシーの中だって事を思い出して、隣を見上げた。
みっきーは静かに微笑んで、俺の頭を自分の肩に乗せるように引き寄せる。
「すぐに着くけど、それまで少しでも眠りなよ」
みっきーにしては優しい言葉だな……なんて思いながら、タクシーの心地よい揺れと疲れも手伝って、みっきーの肩に頭を預けたまま重くて仕方のない瞼を閉じた。
最後に逢ったのは、たったの3日前……。俺が罰ゲームで女装して透さんと夜景を見たあの夜。
――彼氏じゃないのなら、義理立てする必要もない。
昨夜、みっきーに言われた言葉が頭を過ぎった。
『彼氏』……確かに恋人ではなくて、身体の関係はあるから友達でもない。
なら、やっぱりセフレと呼ぶのが多分正しいんだと思うけど。
なのに、飲みすぎて友達の家に泊まったとか、そんな嘘のメールをしただけで心が痛む自分。
そのメールのやりとりをした直後に透さんの姿を見かけて、透さんは気が付いてませんようにって、願う自分。
昨夜、みっきーと関係を持ってしまった事が、透さんに対して後ろめたさで頭の中がいっぱいで……。
――これって、まるで……。
まるで……その後に続く言葉を心の中で呟いてみると、切ないような不思議な感情を覚える。
――だけど……透さんも昨日は……。
彼女と腕を組んで、仲良さそうに歩いて行く後ろ姿を思い出して、今考えていた事を振り払うように、俺はブンブンと思いっ切り頭を横に振った。
――そうだ……俺が後ろめたさを感じる理由なんて、ひとつも無い。透さんと俺は恋人なんかじゃないんだから。
だけど何だろう……。そう考えるのが一番ラクな筈なのに……なんでこんなにへこんでしまうんだ俺。
「どうしたの? さっきから、思い切り首振ったり、地面にのめり込みそうな程沈んでたり?」
「あ……?」
言われてタクシーの中だって事を思い出して、隣を見上げた。
みっきーは静かに微笑んで、俺の頭を自分の肩に乗せるように引き寄せる。
「すぐに着くけど、それまで少しでも眠りなよ」
みっきーにしては優しい言葉だな……なんて思いながら、タクシーの心地よい揺れと疲れも手伝って、みっきーの肩に頭を預けたまま重くて仕方のない瞼を閉じた。
5
お気に入りに追加
467
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪


Promised Happiness
春夏
BL
【完結しました】
没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。
Rは13章から。※つけます。
このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる