出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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 桜川先輩が、カウンターの中で手際よくカクテルを作ってくれて、ブルーの綺麗な色の液体をグラスに注ぎ、俺の前に出してくれた。

「はい、桜川スペシャル」

「凄い!オリジナルですか? カクテル作るの慣れてるんですね?」

「ここ、兄貴の店だからね、偶に手伝ってるんだよ」

 そう言いながら、桜川先輩もカウンターから出てきて、俺の隣に座ってウィスキーをロックで飲み始めた。

 俺もブルーの桜川スペシャルを飲んでみる。

「甘くなくて、すっきりしてて美味しい!」

「だろ? 結構いけるだろ?」

「はい」

 今まで喋った事もなかった先輩達に最初は緊張してたけど、みんな気さくに接してくれるので、すんなりと会話に入る事ができた。

 最初は、ちょっとだけ……と、思っていたのに、いつの間にかそんな事も忘れるくらいに楽しかったんだ……。

 だけど……、甘かった。

 それは、桜川先輩の突然な質問から始まった。

「なぁ……、ゆりとヤッたんだろ?」

 今までの和やかなムードが嘘のように、その場の空気が一瞬で変わった気がした。

 驚いて桜川先輩を見ると、さっきまで優しい笑顔だったのに、今は何だか……。眼鏡の奥の切れ長の瞳が、俺の心の中を見透かすように、鋭い視線を送ってくる。

「え、いえ……」

 ここはしてないと言うべきなんだと思うけど、鋭い目つきに、口籠ってしまう。

「なーお、正直に言った方がいいよ? コイツ嘘つかれるのが一番嫌いなんだって」

 桜川先輩とは反対側の隣に座っている先輩が、ニヤニヤ笑いながら俺の顔を覗きこんでくる。嫌な空気が重く纏わりついてきて、俺の第六感ってやつが危険を知らせている。

 ゆり先輩との関係を、ゆり先輩自身から聞いて知っている可能性もあるわけだし、嘘をつかれるのが一番嫌いって言ってるし、ここは、やっぱり本当の事を言った方がいいのか……。

 本当の事を言ったとしても、ゆり先輩は、桜川先輩とは別れたと言っていたし。

「あ、あの……、前に一度だけ……」

 と、俺は恐る恐る、正直にそれだけ言った。

「やだなぁ、俺は別に怒ってるわけじゃないよ? ゆりがいつも直くん直くんって、お前の事を話すしさ」

 ――ええっ、ゆりさん……アナタ元彼にどこまで喋ってるんですか……!

 それにゆり先輩とは、前に一度だけ教室で誘われて……って事はあったけど、あれから今日まで一度も会ってなかったし。

「あの、俺、ゆり先輩とは、それきり何もなくて、今日も久しぶりに会っただけなんですけど」

 今夜も誘われた事だけは、伏せた方がいいと思って言わなかった。

「ふーん、つか、良いんだよ、そんな怖がらなくて。別にゆりと付き合うなとか言う話じゃないし。俺はゆりとはとっくに別れてるしね」

「はぁ……」

 どう応えて良いのか分からなくて、居た堪れない……。

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