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第二章:迷う心とタバコ味の……
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「おー啓太、来てたのー? 明けましておめでとー!」
「うぁっ、あ、梓さん、おめでとうございますー」
姉ちゃんの登場で、何故か後退りする啓太。
昨年の恐怖が蘇ってるのか? それだったら、今年もわざわざ罠に嵌りに来なくていいのに。
お雑煮の餅を食べながら横目で啓太を見ると、恐怖と言うよりも、頬を赤らめてなぜか嬉しそうな顔をしている。
――え? ホントにM体質なの? 啓太。
「啓太もいる事だし、恒例の大富豪、始めようかっ!」
姉ちゃん、やる気満々過ぎ! 大きな声にびっくりして、餅が喉に詰まりそうになったじゃねーか。
「ちょ、雑煮食べ終わるまで待ってって……、あれ? 一哉さんは?」
そう言えば、起きてから姉ちゃんの旦那さんの一哉さんを見ていないんだけど……。
「あー、カズくんね。 なんか朝から友達と約束があるって言って出かけたのよ」
「ええええええええええええっ!?」
――逃げたなっ、一哉さん……。
罰ゲームの対象になりそうな仲間が一人減った事に、俺は箸を落としそうになった。
これで俺と啓太と親父の3人で、最下位争いをする事になったわけだ。
***
ただ今、4回戦が終わって最終戦をやっている最中。
予想通りの席順で、進んでおります。
大富豪が姉ちゃん、富豪がテルさん、平民が親父、貧民が俺、ど貧民が啓太。
ど貧民にさえ、ならなければ良いんだ。このままの流れなら、今年も罰ゲームは啓太に決定の筈…… だった。
「今年は負けないぞ、直」
「え?」
俺を横目で睨みながら、挑戦的な台詞を吐く啓太に、俺は驚きを隠せないんだが……。
「お前、今年も姉ちゃんの下僕になりたいんじゃなかったの?」
「はぁ? んな訳ないだろ? 昨年のあの屈辱、今年はお前に味わわさせてやるのが、今日の一番の目的なんだからな」
何それ!? なんで俺に敵対心剥き出しなの?
「だって、さっき姉ちゃんが部屋に入ってきた時、お前、めちゃ嬉しそうにしてたじゃん」
「え? そう? あ、でも梓さんに会えるのは楽しみにしてたよ」
「なんで?」
――「……俺の初恋……」
俺にしか聞こえないように、耳元で小さい声で啓太が囁いた。
「うそっ!」
「ホント……」
まじかよ……だから毎年遊びにくるのか、こいつ。
「まぁでも、小さい時の想いだから、それをどうこうしたいって事は全くないけどね」
……って、笑ってるけど、新年早々の啓太の告白に少々びびってしまって、俺は気もそぞろになっていたのかもしれない。
どんどん悪くなっていく持ち札に、気が付くのが遅かった。
「うぁっ、あ、梓さん、おめでとうございますー」
姉ちゃんの登場で、何故か後退りする啓太。
昨年の恐怖が蘇ってるのか? それだったら、今年もわざわざ罠に嵌りに来なくていいのに。
お雑煮の餅を食べながら横目で啓太を見ると、恐怖と言うよりも、頬を赤らめてなぜか嬉しそうな顔をしている。
――え? ホントにM体質なの? 啓太。
「啓太もいる事だし、恒例の大富豪、始めようかっ!」
姉ちゃん、やる気満々過ぎ! 大きな声にびっくりして、餅が喉に詰まりそうになったじゃねーか。
「ちょ、雑煮食べ終わるまで待ってって……、あれ? 一哉さんは?」
そう言えば、起きてから姉ちゃんの旦那さんの一哉さんを見ていないんだけど……。
「あー、カズくんね。 なんか朝から友達と約束があるって言って出かけたのよ」
「ええええええええええええっ!?」
――逃げたなっ、一哉さん……。
罰ゲームの対象になりそうな仲間が一人減った事に、俺は箸を落としそうになった。
これで俺と啓太と親父の3人で、最下位争いをする事になったわけだ。
***
ただ今、4回戦が終わって最終戦をやっている最中。
予想通りの席順で、進んでおります。
大富豪が姉ちゃん、富豪がテルさん、平民が親父、貧民が俺、ど貧民が啓太。
ど貧民にさえ、ならなければ良いんだ。このままの流れなら、今年も罰ゲームは啓太に決定の筈…… だった。
「今年は負けないぞ、直」
「え?」
俺を横目で睨みながら、挑戦的な台詞を吐く啓太に、俺は驚きを隠せないんだが……。
「お前、今年も姉ちゃんの下僕になりたいんじゃなかったの?」
「はぁ? んな訳ないだろ? 昨年のあの屈辱、今年はお前に味わわさせてやるのが、今日の一番の目的なんだからな」
何それ!? なんで俺に敵対心剥き出しなの?
「だって、さっき姉ちゃんが部屋に入ってきた時、お前、めちゃ嬉しそうにしてたじゃん」
「え? そう? あ、でも梓さんに会えるのは楽しみにしてたよ」
「なんで?」
――「……俺の初恋……」
俺にしか聞こえないように、耳元で小さい声で啓太が囁いた。
「うそっ!」
「ホント……」
まじかよ……だから毎年遊びにくるのか、こいつ。
「まぁでも、小さい時の想いだから、それをどうこうしたいって事は全くないけどね」
……って、笑ってるけど、新年早々の啓太の告白に少々びびってしまって、俺は気もそぞろになっていたのかもしれない。
どんどん悪くなっていく持ち札に、気が付くのが遅かった。
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