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第二章:迷う心とタバコ味の……
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啓太と一緒に居間の炬燵に入ってお節料理をつまみながら、何気につけっぱなしのテレビの正月番組なんかを、ぼんやりと眺めていたら、一歳の弟がよたよたと歩いてきて俺の背中にぴたっともたれてきた。
「実、歩くの上手になったな」
頭を撫でてやると、にかーっと笑うのが可愛い。 膝に座らせると、甘ったるい匂いがふんわりと漂う。
「お前、なんか良い事あった?」
俺が実をあやして遊んでいるのを眺めていた啓太が、不意によく分からない質問をしてくる。
「……なんで?」
「なんかさー、大晦日に会った時も思ったんだけど、なんとなく? 表情が柔らかいって言うか……、よくわかんねぇけど」
変なやつだなぁ……。表情が柔らかいって何? 正月休みで寝過ぎてふやけてるってこと?
「何それ……? 実家に帰ってきて、のんびりしてるからと違う?」
自分では、何か変わったとこあるような気はしないけど……。
「なんかさ、恋してるような感じっての? いや、わからねーけどな」
そう言われて、ちょっとドキっとする。変化があったとしたら、心当たりはあるから。
「啓太に恋してる雰囲気とか、分かるわけねーじゃん」
冗談言って誤魔化そうとしてみたけど、啓太って、昔から意外に鋭いとこあるんだよな……。
「なぁ、啓太」
だから、ちょっとだけ気になってる事を、啓太に訊いてみることにした。
「何?」
「あのさ、付き合ってる彼女がさ、元彼の写真とかを部屋に飾ってるのって、どうしてだと思う?」
こないだ透さんちに二泊した時に、あの彼女と2ショットの写真が、まだリビングに飾ったままだったんだ。
歯ブラシは無くなってたけど、化粧品とかは、まだあったし。
とりあえず『彼』ではなくて、『彼女』って事にして訊いてみた。
「はぁ? 何それ? ありえねーだろ?」
やっぱ、そうだよなぁ。俺も、そんなのありえないと思うんだよなぁ。
と言うか……、俺、はっきりと透さんと付き合ってるって言える関係じゃないし……、なら透さんが俺に気を遣うことなんてないから……。
別に、好きな人の写真を飾っていたりしても、俺が文句言うことじゃないし。
忘れ物の化粧品だって、まだ好きなら……、それを理由にもう一度会えるかもしれねーじゃん。
――あ……あれ……? なんでこんなに胸の奥が苦しいんだ? あれ?
「それってさ、うっかり片付けるの忘れたなんてレベルの問題じゃねえし、つーか、お前やっぱり彼女できたの?」
「あーー、いや、俺の話じゃないって言うか……俺の話っていうか……」
「なんだよ? ハッキリしねえやつだな」
「実、歩くの上手になったな」
頭を撫でてやると、にかーっと笑うのが可愛い。 膝に座らせると、甘ったるい匂いがふんわりと漂う。
「お前、なんか良い事あった?」
俺が実をあやして遊んでいるのを眺めていた啓太が、不意によく分からない質問をしてくる。
「……なんで?」
「なんかさー、大晦日に会った時も思ったんだけど、なんとなく? 表情が柔らかいって言うか……、よくわかんねぇけど」
変なやつだなぁ……。表情が柔らかいって何? 正月休みで寝過ぎてふやけてるってこと?
「何それ……? 実家に帰ってきて、のんびりしてるからと違う?」
自分では、何か変わったとこあるような気はしないけど……。
「なんかさ、恋してるような感じっての? いや、わからねーけどな」
そう言われて、ちょっとドキっとする。変化があったとしたら、心当たりはあるから。
「啓太に恋してる雰囲気とか、分かるわけねーじゃん」
冗談言って誤魔化そうとしてみたけど、啓太って、昔から意外に鋭いとこあるんだよな……。
「なぁ、啓太」
だから、ちょっとだけ気になってる事を、啓太に訊いてみることにした。
「何?」
「あのさ、付き合ってる彼女がさ、元彼の写真とかを部屋に飾ってるのって、どうしてだと思う?」
こないだ透さんちに二泊した時に、あの彼女と2ショットの写真が、まだリビングに飾ったままだったんだ。
歯ブラシは無くなってたけど、化粧品とかは、まだあったし。
とりあえず『彼』ではなくて、『彼女』って事にして訊いてみた。
「はぁ? 何それ? ありえねーだろ?」
やっぱ、そうだよなぁ。俺も、そんなのありえないと思うんだよなぁ。
と言うか……、俺、はっきりと透さんと付き合ってるって言える関係じゃないし……、なら透さんが俺に気を遣うことなんてないから……。
別に、好きな人の写真を飾っていたりしても、俺が文句言うことじゃないし。
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――あ……あれ……? なんでこんなに胸の奥が苦しいんだ? あれ?
「それってさ、うっかり片付けるの忘れたなんてレベルの問題じゃねえし、つーか、お前やっぱり彼女できたの?」
「あーー、いや、俺の話じゃないって言うか……俺の話っていうか……」
「なんだよ? ハッキリしねえやつだな」
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