出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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 そして翌日、1月2日の朝。

「直くーーん、啓太くんが来てくれてるよー」

 一階から俺を呼ぶ、テルさんの声で目が覚めた。

 ――ん……啓太? なんで啓太? 俺、眠いんだけど?

 ドカドカと喧しい足音が、階段を上がって俺の部屋に近づいてくる。

「おい、起きろよっ」

 ――っんだよ、うるさいな、いつも啓太は!

「もう、10時だぞ起きろよ」

「……あ?」

 ――もう朝か……。

 眠い目を擦りながら起き上がると、部屋のドアから啓太が顔だけ覗かせて、呆れた顔をしてる。

「早く起きろよっ」

「……んだよ、何か約束してたっけ?」

 そう言いながら、仕方なく布団から抜け出した。

 スエットの上下を脱ぎ捨てて、のそのそと着替える俺を見て、啓太は、さも呆れたと言わんばかりに大きな溜息を吐いている。

「なんだよー、いつも2日はお前んちでトランプ大会だろ?」

 当たり前のようにそう言って、偉そうに腕組みなんてして、なんかムカつく。

 しかも、何やる気満々で、なんだろ、この態度。 だけど、本当に今年もするのかよ……。

 トランプ大会って、大富豪なんだけど。

 毎年正月に俺の家族は、なぜか大富豪をやる事になっている。それで、何故か啓太は小学校の頃から、家族でもないのに参加する。

 しかも、この大富豪、5回やって、最後にド貧民になった人は、罰ゲームを科せられる。

 ちなみに一番強いのは、なぜか姉貴とテルさん。

 去年の罰ゲーム対象者は、啓太だったんだ。なのに、何故また今年も自分から罠にはまりにくるのか……。その気持ちが解らない。

 もしかして、啓太ってMなのか? そうなのか? こいつ本当は、姉貴やテルさんに虐められて喜んでるのか?

 昨年の罰ゲームは、姉貴の買い物のお供だった。

 女ってなんであんなに買い物好きなのかって位買い込んで、啓太は両手に紙袋いっぱい持った上にカートまで転がしながら帰ってきた。

 しかも、紙袋のほとんどが福袋だったんだ。

 福袋を買う為に、啓太が長蛇の列を並んでる間、姉貴とテルさんは優雅にお茶していたらしい。

 きっと今年もそのパターンに違いないんだから、絶対やりたくない。

 なのに、なぜ今年もここに来るんだ、啓太。お前は完全にカモなのに!

「なあ、啓太ってさぁ、もしかしてMっ気あるの?」

「はあ? 何言ってんだよそれ、なんの話だよ? 馬鹿じゃねえの?」

 俺は、至って真面目に言ったのに、啓太に頭をげんこつで殴られた。

「いってえな! 何すんだよ、変態」

「いいから早く来いよ。テルさんがお雑煮温めてくれてるからよ」

 そう言って啓太は、痛い頭を摩っている俺の手を掴むと、引っ張るようにして、また階段をドカドカと下りていく。

「待てよ、引っ張るな! 危ないからっ」

 引っ張られながら抗議してみたけど、啓太はそんなことお構いなしに1階の居間へと入って行った。

「いいから、いいから。 ほらここ、入りなよ炬燵」

 炬燵布団を捲って、座布団をポンポンと叩く啓太。……って、誰の家だと思ってんだよ、こいつ!

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