出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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「どうぞ」

 玄関のドアを開けると、透さんは俺の背中にそっと手を置いて、先に入るように促した。

「お邪魔します」

 中に入って靴を脱いでいると、背後でドアが閉まり、鍵をかける音がしたと思った瞬間、突然背中から抱きしめられた。

 そのまま壁に押し付けられる。

「……っ」

 声を出す隙も与えられずに顎を捕らえられて、顔だけ後ろを振り向く姿勢で、性急に唇を塞がれる。

「…… んんッ……」

 激しく唇を貪られながら、急くように脱がされたコートは、ストンと床に落ちて足元に纏わりつく。

 重ね着しているニットとシャツの裾から、透さんの手が滑り込んできた。

「……アッ……ふ……ん……ッ」

 素早く胸の突起を探り当てた指先に、そこを摘ままれると、重ねた唇の隙間から恥ずかしい喘ぎ声が漏れてしまう。

 服の下で弄るように動く手に、咥内を余すところなく愛撫する舌に、腰の奥が熱く疼いてしまう。

 透さんは、まだ靴を履いたままで、コートも脱いでいない状態。

 俺の脱ぎかけていた靴は、片方だけ玄関のたたきに転がっている。

「とお……るっさ……んんッま……ッ……て……アッ……!」

 ――――ここ、玄関なのにっ――!

「待てない……」と、言いながら、透さんの手が俺のズボンのベルトにかかる。

「あの……、あのっ、俺、シャワー浴びたい……」

「どうせ、汗かく事するから、後で一緒に入ろう」

 そう言いながら、またキスをする。

 俺は、どんどん深くなるキスに応えながら、なんとかもう片方の靴を脱ぐ。

 きつく抱きしめられた腕の中で、身を捩りながら向き合って、俺も透さんのコートに手をかけて、脱がしていく。

「じゃ、ベッドに行きたい。ここだと外に聞こえそうだし。ね?」

 と、今度は透さんのネクタイの結び目を緩めながらお願いしてみた。

「そうだね……」

 透さんは、苦笑しながらそう言うと、俺の腰の辺りに腕を巻きつけて、そのままヒョイっと身体を持ち上げて歩き出した。

「うわっ!」

 肩に担がれてる感じの体勢。

 透さんは寝室のドアを開けて、俺をベッドにゆっくりと下ろすと、そのまま覆いかぶさるように唇を重ねた。

 何度も啄ばむようなキスを落とした後、耳元に唇を寄せる。

「直くんに逢いたかった……」

  甘い声で囁かれて、ドキンと、心臓が高鳴った。

 ――俺も、透さんに逢いたかった……。俺はその時、そう言おうとしたんだ……。

 だけど……

「早く、こうしたかった。……直くんを抱きたかった」

 ……え?

 ――――抱きたかったから、逢いたかったの?

 激しいキスを受けながら、頭の中では、透さんの今言った言葉がリフレインしてる。

 その間も、熱く濡れた舌が首筋を這い、ニットとシャツを同時にたくし上げ、露わになった肌を食み、透さんは紅い痕を残していく。

 勘違いかなって、考えすぎかなって、思うけど……。

 やっぱり、そういう事なのかなって思ってしまうと、また少し胸の奥がチクンとする。

 それなのに……――

 「好きだよ……」と、呟くような声で、甘い言葉が耳に届いた。

 心の中で(そんなの嘘だ……)と、自分に言い聞かせながら、俺は透さんの首に腕を絡めてキスを強請る。

「透さん、キス……」

 最後まで言葉にするのも、もどかしくて、噛み付くように自分から唇を重ねた。

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