出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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「ところでさぁ、お前、サークルの新年会出るだろ?」

「へ? 新年会? 何のサークルだよ?」

 サークルは適当に色々入っちゃったから、何に入ってるのかさえ覚えていない。 新年会の連絡も、聞いてないけど?

 はぁ~と、大袈裟な溜息を吐きながら、啓太がまた呆れ顔になった。

 そのサークルとは、アウトドアなジャンルに入るらしいけど、やってる事と言えば、月1程度の飲み会とか、たまにバーベキューとか、ドライブとか、やってるらしい。

 最初の月の例会以外は、今まで一度も参加した事がない。 ゆり先輩も、そのサークルに入っているらしかった。

 啓太がしつこく誘うので、俺も飲み会だし、参加する事にした。

「1月4日の19時だからな、忘れるなよ」

 念を押す啓太に「はいはい」と応えると、もう用が無いなら、自分の部屋に帰れなんて冷たく言われた。

「もうちょっと、休憩させて」

 ――だって、腰が辛いんだもん……。

「休憩って……お前の部屋、この上じゃんか。ここでウダウダしてないで、疲れてんなら帰って寝ろよ」

「えー、いいじゃんか、冷たいなぁ」

 啓太と俺は、同じマンションの4階と5階。学生専用の、ワンルームマンション。

 住み心地はまぁまぁなんだけど、エレベーターが無いんだ。

 4階までは手摺りにしがみ付きながら、よたよた上って来たけど、力尽きてしまったわけで……。

 と、言うのもあるけど、なんだか独りになりたくなくて、プリンアラモードを手土産に、啓太の部屋に寄ったと言うわけ。

「甘えんなよ」

 そんな面倒くさそうに言わなくったっていいじゃんか……。俺、なんか寂しいんだよ。

「ところで正月、どうすんの? 実家に帰る? なら一緒に帰ってやってもいいけど?」

 ――やってもいいけどって、生意気だな、オイ、啓太の癖に。

 幼馴染の啓太と俺の実家は、電車とバスで、せいぜい2時間もかからないくらいの場所にある。

 郊外と言うと聞こえはいいけど、ま、不便な田舎にある。

 大学も通えないわけじゃなかったんだけど……。

 俺の母親は、俺が3歳の時に病気で亡くなって、ずっと6歳上のねーちゃんが、俺の母親代わりをしてくれていたんだけど‥…。

 親父が2年くらい前に、出来ちゃった婚で再婚。

 しかも、その相手の歳が……俺と一回りしか変わらない。

 だからって仲が悪いわけではない。母親とは思えないけど、友達みたいな関係。

 で、今年の春に、姉ーちゃんが、めでたく結婚して家を出た。

 そしたら、一歳になる小さい弟と、まだまだ新婚気分な親父達と、お邪魔虫な俺が残ったわけで。

 俺は気をきかせたつもりで、大学入学を期に、一人暮らしをしたいと言ったんだ。

 親父には、『まだ早い』とか『通えるのに』とか、一応色々言われたけど、とりあえず家を出る事を許してもらえた。

 ひとつだけ条件付きだったけど。

 それが、啓太と同じマンションに住むという事だった。



「んー、大晦日から帰るかな」

「んじゃ、大晦日な」

 と、なんとなく年末年始の予定が決まったところで、俺は啓太の部屋を追い出されてしまった。

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