出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第二章:迷う心とタバコ味の……

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 ――もう、透さんと二人きりで会うことは、二度とないんだ……。

 大体、何であんなことになったのかな……。

「生クリーム……」

 手に持った、プリンアラモードを、まじまじと見つめてみる。

「あ? 生クリームが、どうしたって?」

 コンビニでもらったスプーンの袋を開けながら、啓太が怪訝そうな顔をする。

 俺は、プリンを囲むように飾られている生クリームを指で掬って、自分の口の周りや鼻のてっぺんに、塗りつけてみた。

「なっ? 何やってんの、お前 ?!」

「なぁ、啓太」

「なんだよっ」

「お前さ、俺の顔に付いてる生クリーム、舐め取れる?」

 俺がそう言うと、啓太は驚いて目を見開いてる。

「なぁ、どぉ?」

 俺が目を閉じて、顔を啓太に近づけると、啓太は慌てて後退りする。

「……ちょっ……、それ、何のプレイなわけ?」

 うん、かなりの羞恥プレイだと思う。

「できない、よな?」

「あ……当たり前だっ」

 ――そうだよなぁ……普通はしないよな。

 そう思いながら、テイッシュで顔の生クリームを拭き取った。

 ――なんか、ベタベタする……。

「お前なー、食べ物粗末にすると、罰当たんぞ」

 啓太が、呆れ顔で言う。

「んーーーー」

 でも、昨夜の透さんは、生クリームで何かのスイッチが、入ったような気がするんだよな。

「お前、何かあったの?」

「いや、別に……」

 言えないじゃん、昨夜男と寝たとか……。

 そう思うと、昨夜の情事が頭を過ぎって、顔が熱くなった。

「あのさー、お前、ゆり先輩と何かあったろ?」

 啓太は、プリンアラモードを食べながら、ちろりと横目で俺を見る。

「ゆり先輩?」

 誰の事かピンとこないけど、話が変わったことに、俺はちょっとホッとした。

「いつだったか、学食で声かけられて、二人でどっか行ったじゃん」

「あ……、サークルの先輩?」

 そうそうと、啓太が頷く。

 ――空き教室で、一回だけヤッたよな。 結構可愛かった。

「昨夜も、ゆり先輩と?」

「はっ? んなわけ、無いじゃんっ」

 ゆり先輩とは、あれきりだ。今の今まで忘れていたし。

「ホントに?」

 何やら、真剣な眼差しで訊いてくる啓太を不思議に思いながら、記憶を遡ってみたけど、やっぱりそんな覚えは無い。

「ホントだよ、なんで? ゆり先輩とは、あれきり会ってないけど?」

 そう答えると、啓太は少し安心したように「なら、いいけど……」と、ボソッと言って、またプリンを食べ始めた。

 なんとなく、啓太の態度に違和感がある。

「なんだよ? ゆり先輩がどうかした?」

 俺がそう訊くと、啓太は少し気まずそうな顔をする。

「ゆり先輩さ、モテるから、その……、お前と付き合ってるみたいな噂が流れててさ。ゆり先輩のことを好きな連中に、目ぇ、付けられてたらヤバイと思ってさ」

「はぁ?」

 なんで、そんな事になるんだ? ゆり先輩は、後腐れなさそうに思ったし、付き合ってるなんて噂が流れるなんて、思ってもいなかったんだけど……。

「会ってないんなら、いいけどさ、ちょっと心配だったからさ。つかさ、あんまし遊び過ぎんなよ、恨み買ったら、馬鹿みたいじゃん」

「そうだな、気をつけるよ」

 確かにな……と、思った。

 今まで俺は、いいかげんに考え過ぎていたかもしれない。

 その場限りに関係を持って、俺はそれでよかったけど、相手がどう思ってるなんて、考えた事なかった。

 ――透さんは、俺のこと、どう思ってるんだろう……。

 やっぱり、ただの気まぐれだったのかな。俺も、それに流されたんだから、自分も気まぐれなんだと思うけど……。

 何か、割り切れない気持ちが、胸の中でモヤモヤしてて、分からないんだ。

 俺、バージンだったし……なんてね……。

 女の子のバージンも、何度か頂いちゃったよな……。

 もっと考えてあげないといけなかった……なんて、いつもならそんな事、思ったりしないのにな……。

 
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