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第一章:聖夜と生クリーム味の……
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――やっぱり忘れられないのかな……。
透さんの哀しそうな表情を見ていると、何だか自分まで切なくなってくる。
――そうだ!
「透さん、よかったらクリスマスケーキ一緒に食べませんか?」
俺なんかが話し相手になって気が晴れるとは思わないけど、それでも独りでいるよりは 透さんが少しでも元気になってくれれば……と、思わずそう言ってしまっていた。
(同じように失恋したばかりの幼馴染の事はすっかり忘れていたけど!)
俺の提案に、透さんは「え? ケーキ?」と、目を丸くしている。そんな可愛い顔もするんだと、いつもと違う顔を見れて嬉しくなったりして。
「あ、はい。今日予定じゃなかったバイトに急遽頼まれて入ったんで、オーナーがお詫びにってくれたんですよ」
そう言って、俺は透さんの目の前にケーキの入った箱を差し出した。
「えー、それは悪いよ、直くんが貰った物なのに」
「いや、いいんですよ。俺、甘い物は好きだけど、全部は食べれそうにないし」
と、言ってみたものの、ちょっと不安になってきた。だって、透さんが甘い物を好きだとは限らないじゃないか。
「あ、もしかして甘い物苦手ですか?」
慌てて訊く俺に、透さんはニコッと、あの優しい笑みをくれる。
「そんなことないよ、好きだよ。直くんのバイトしているカフェでも時々ケーキ食べるしね。あの店のケーキは美味しいんだよね」
そう応えてくれたことと、その笑顔が嬉しくて、俺はもう一度ケーキの箱を差し出した。
「ホント? じゃ、じゃぁ、もし透さんさえ良ければ、今日は予定のない男二人で、プチクリスマスパーティって事でどうでしょう?」
そう言ってしまった後で、顔が熱くなってきた。
――な、なんか俺、すげぇ恥ずかしいこと言ってるような気がするんだけど……。
透さんは、何か考えている様子で……「でも……」と言って言葉を詰まらせている。
やっぱり、いきなり迷惑だったかな……と、俺は自分が言った事を少し後悔しかけていた。だけど、次に透さんの口から出てきたのは、意外な言葉で……。
「……本当にいいの?こんなオジサンと一緒にクリスマスケーキ食べるなんて」
申し訳なさそうにそう言って、照れた様子で軽く握った手を口に当てている。
「オジサンて! 透さん、何歳なんですか?」
「28だよ」
「ええっ? 25くらいかなって思ってたし、28なんて、全然オジサンじゃないですよ! めっちゃカッコいいし、若いですよ!」
本当に、俺と10も離れてるなんて思えない。
「あはは、そう言われると嬉しいけど……。じゃぁ、お言葉に甘えて一緒に食べようか」
そう言って照れ笑いする透さんの表情が少し明るくなって、俺はそれがすごく嬉しかったりした。
「はいっ!じゃ、俺、何か飲み物でも買ってきましょうか?」
と、近くに自動販売機無かったかなーと、探しに行こうと足を二、三歩、踏み出したところで、透さんに呼び止められた。
「え? ここで食べるの? 寒くない?」
「……あ、それもそうですよね……」
――だよなあ…。じゃぁどうしよう……。
「それ、ホールケーキなんだよね? ナイフとかも無いし……」
どうしようかと言って、透さんは少し考えた後、俺が思いもしなかった事を提案した。
「そうだ、もし直くんが良ければ、俺の家で食べない?」
「え? いいんですか? お邪魔しても?」
「勿論だよ。暖かいコーヒーも一緒にどう?」
それは それは、もちろん嬉しい! 透さんともう少しゆっくり話したい気分だったし。
「折角こうして出会えたから、もう少し直くんと話してみたいしね」
透さんも同じ事を考えてくれてたのが、物凄く嬉しくて、俺は……、ちょっと浮かれ過ぎていたのかもしれない。
透さんの哀しそうな表情を見ていると、何だか自分まで切なくなってくる。
――そうだ!
「透さん、よかったらクリスマスケーキ一緒に食べませんか?」
俺なんかが話し相手になって気が晴れるとは思わないけど、それでも独りでいるよりは 透さんが少しでも元気になってくれれば……と、思わずそう言ってしまっていた。
(同じように失恋したばかりの幼馴染の事はすっかり忘れていたけど!)
俺の提案に、透さんは「え? ケーキ?」と、目を丸くしている。そんな可愛い顔もするんだと、いつもと違う顔を見れて嬉しくなったりして。
「あ、はい。今日予定じゃなかったバイトに急遽頼まれて入ったんで、オーナーがお詫びにってくれたんですよ」
そう言って、俺は透さんの目の前にケーキの入った箱を差し出した。
「えー、それは悪いよ、直くんが貰った物なのに」
「いや、いいんですよ。俺、甘い物は好きだけど、全部は食べれそうにないし」
と、言ってみたものの、ちょっと不安になってきた。だって、透さんが甘い物を好きだとは限らないじゃないか。
「あ、もしかして甘い物苦手ですか?」
慌てて訊く俺に、透さんはニコッと、あの優しい笑みをくれる。
「そんなことないよ、好きだよ。直くんのバイトしているカフェでも時々ケーキ食べるしね。あの店のケーキは美味しいんだよね」
そう応えてくれたことと、その笑顔が嬉しくて、俺はもう一度ケーキの箱を差し出した。
「ホント? じゃ、じゃぁ、もし透さんさえ良ければ、今日は予定のない男二人で、プチクリスマスパーティって事でどうでしょう?」
そう言ってしまった後で、顔が熱くなってきた。
――な、なんか俺、すげぇ恥ずかしいこと言ってるような気がするんだけど……。
透さんは、何か考えている様子で……「でも……」と言って言葉を詰まらせている。
やっぱり、いきなり迷惑だったかな……と、俺は自分が言った事を少し後悔しかけていた。だけど、次に透さんの口から出てきたのは、意外な言葉で……。
「……本当にいいの?こんなオジサンと一緒にクリスマスケーキ食べるなんて」
申し訳なさそうにそう言って、照れた様子で軽く握った手を口に当てている。
「オジサンて! 透さん、何歳なんですか?」
「28だよ」
「ええっ? 25くらいかなって思ってたし、28なんて、全然オジサンじゃないですよ! めっちゃカッコいいし、若いですよ!」
本当に、俺と10も離れてるなんて思えない。
「あはは、そう言われると嬉しいけど……。じゃぁ、お言葉に甘えて一緒に食べようか」
そう言って照れ笑いする透さんの表情が少し明るくなって、俺はそれがすごく嬉しかったりした。
「はいっ!じゃ、俺、何か飲み物でも買ってきましょうか?」
と、近くに自動販売機無かったかなーと、探しに行こうと足を二、三歩、踏み出したところで、透さんに呼び止められた。
「え? ここで食べるの? 寒くない?」
「……あ、それもそうですよね……」
――だよなあ…。じゃぁどうしよう……。
「それ、ホールケーキなんだよね? ナイフとかも無いし……」
どうしようかと言って、透さんは少し考えた後、俺が思いもしなかった事を提案した。
「そうだ、もし直くんが良ければ、俺の家で食べない?」
「え? いいんですか? お邪魔しても?」
「勿論だよ。暖かいコーヒーも一緒にどう?」
それは それは、もちろん嬉しい! 透さんともう少しゆっくり話したい気分だったし。
「折角こうして出会えたから、もう少し直くんと話してみたいしね」
透さんも同じ事を考えてくれてたのが、物凄く嬉しくて、俺は……、ちょっと浮かれ過ぎていたのかもしれない。
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