信念の弁証法

2.分岐

2-3

パタリプートラの街はこの日、穏やかな静けさをまとっていた。広場の鮮やかな門の下には、バラモンの若者デヴとローカヤタの老僧ダーラが立っていた。彼らは違う道を歩むものの、今や心から尊敬し合う友人であり、その交流は街に新鮮な息吹をもたらしていた。

ダーラがローカヤタの教義を語り始めると、人々のざわめきはすぐに沈み、静寂が広がった。

「人生は今ここにある。目に見えない来世やただの想像でしかない過去世に目を向けるのではなく、今の生活に、安らぎと目的を見出さなければならない。カルマとは、あくまで今の行動が未来を作るもの。しかし、それが何か別の存在や次の生に繋がると想像する必要はない」

デヴは微笑みながら反論した。

「ダーラ、過去世のカルマが人生に影響し、来世を良くしようと努力するからこそ、我々は今の世界を善く生きようと思うのではないでしょうか。また、瞑想や修行で自己が世界の本質と同一になる瞬間があります。そんな瞬間こそ至高ではないでしょうか」

ダーラはデヴの言葉に親しみをこめて笑った。

「確かに、それは一つの視点だ。だが、もしその一体感から戻ってきて、何も変わらないとしたらどうだろう？それでも、その至高の瞬間を追い求めるだろうか。来世を良くする為に行う行為は善行と言えるだろうか」

この日の夕方、夕日がオレンジ色に街を染めている中、二人は門からガジュマルの木の下場所を変え、座り、議論を続けた。その様子はまるで古い友人が語り合うかのようで、彼らの声は街全体に響き渡った。それは新たな視点、新たな理解を求める探究の声であり、二人のの笑い声は、パタリプートラの街に新たな風を運んだ。

二人の議論は、友情と尊敬に溢れた議論であり、その一部始終が街の人々によって見守られ、口から口へと伝えられた。そして、街に新たな色と音を加え、パタリプートラを新たな可能性へと導いていた。