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五十一話 品種改造

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 東京都〇〇市に突如として現れた『奇形動物専門店』というペットショップ。

 大通り沿いの店が沢山並ぶところに店を構えているのだが、あまりにも異質すぎる店名に入る人は少なかった。
 
 店長及び奇形動物専門店社長を務めるのはxx氏。
 xx氏の他に店員が五名働いているという。

 店に行ったという人に話を聞くと、
「店に入った途端にスマホを取り上げられたんです。それだけじゃなくて、ケージに入っていた猫?みたいな動物がいたんですけど、胴体の所に十五センチ程の突起があったんです。怖くて怖くてものの数分で出ましたよ。」

 他にも話を聞くと、『歯がとんでもなくデカいハムスター』や、『足が十本以上生えたカメレオン』などが目撃されている。

 
 店がネットで話題になると、興味本位で店に行く人が増えた。
 すると、動画投稿サイトで店に行ったという物が現れた。

 以下、動画を一部抜粋したものになる。

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 「今回はネットで話題となっているあの店へ行ってみたいと思います!」

 近所の駐車場に車を停め、僕達は店へと向かいました。
 「あなた達、もしかしてだけどあのお店へ行くの?」
 店まであと少しのところで近所の住民の方とみられるおばあさんに声をかけられました。
 おばあさんは僕達が今から行く店を指さしながら、心配そうな目でこちらを見ていました。
 「やっぱり、やめた方がいいですかね?」
 半ば冗談でそう話すとおばあさんは真剣な表情で、「危ないよ」とだけ言ってどこかへ行ってしまいました。

 僕達は今から行くところが危険なところなのだと思い知らされました…。
 
 ですが皆さんのためにも頑張ります!



 「だから来んなって言ったんだろ!」
 店の中から突然怒号が聞こえてきました。
 僕達は様子を見ていると、店からチャラそうな男性三人が出てきました。
 「あの、僕達今からこの店行くんですけど、どんな感じでしたかね…?」
 すると、憔悴仕切った様子で僕たちに話してくれました。
 「俺らは軽い気持ちで行ったんだ。再生数稼ぎでね。」
 彼らはどうやら同業者だったようでした。
 「カメラを隠しながら入ったんだけど、店長らしき人が突然手荷物検査をしてきて呆気なくバレたんだ。そしたらものすごい大声で怒鳴ってきて、ビビって俺らは逃げた。」
 彼らに僕達も今から入ることを伝えると、「おすすめはしない」と言われてしまいました。

 この時点で僕達はかなり怖気付いていましたが、なんとか気を奮い起こし、入ることを決意しました。
 「とりあえずカメラは厳しいからせめて音声は録音しよう。」
 〇〇がそう言うと、僕達は用意していたボイスレコーダーを靴下に差し込み、スマホでも録音をしました。
 
 では、これから録音に成功した音声となんとか撮影できた動画を混じえて説明していきます。



 「手荷物検査致しますねー。」
 日本人顔ではあるのですが、明らかに外国人並みの体格をした店員が現れました。
 胸元の名札を確認すると、どうやら噂の店長だったようです。
 「GoProはなんのために?」
 「撮影に関する仕事をしているので」
 「店内撮影禁止だから念の為預かっておきますね」
 実はもうひとつGoProを股に挟んでいたので、バレないか内心ヒヤヒヤしていました。

 「ではどうぞ」
 店内は一言で言うと“異世界”のようでした。
 紫色の猿が10匹くらい天井にぶら下がっていました。
 


 奥の方には立ち入り禁止と書かれた張り紙があり、その隣にはカーテンで遮られた部屋がありました。
 僕達はゆっくりと店長に見つからないようにカーテンをめくりました。

 「ワンっ」
 黒柴犬が台の上に載せられていました。
 その隣には年配の男性が注射器を持って立っていました。
 「ウヴッ」
 唸り声をあげる黒柴犬に男性は注射器を刺しました。
 するとみるみるうちに、黒柴犬は真っ赤に染まったのです。
 そんな非現実的な光景を目の当たりにした僕達はカーテンの向こう側に釘付けでした。
 「おい!」
 後ろからの怒鳴り声を聞いた瞬間、僕達は猛ダッシュで出口まで逃げました。
 「くそっ、お前ら先に行け!」
 一人が店長に捕まってしまいました。
 残った僕達は、店の近くで捕まった奴を待っていましたが、彼が戻ってくることはありませんでした…。

 あの店はまだ営業をしているようですが、絶対に行ってはなりません。
 なぜあのような店が行政に捕まらないのか不思議です。

 

 〇〇 〇〇を探しています

 東京都〇〇市の“奇形動物専門店”で行方が分からなくなりました。
 少しでも情報があれば、下記電話番号までご連絡下さい。

 080-△△△△-△△△△



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 彼らのチャンネルはこの動画投稿してから更新が途絶えてしまった。
 動物の品種改造は政府も黙認しているのだろうか?

 






※この物語はフィクションです





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そこそこの文字数になってしまいました。
こんな店があったら炎上確定ですね
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