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四十七話 祖母の家の少女

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 「やっぱり幽霊はいるんだよ」
 恵山さんはそう語った。
 気になるからと体験したことを聞かせてとお願いしても、どうも恵山さんは口を開こうとしない。
 「じゃあ、どうなっても知らないよ」
 最初は脅し文句だと思っていた。


 恵山さんは中学生の時に両親が立て続けに亡くなり、祖母の家で生活することになったという。
 新宿にあるのだが、例えるとサザエさんのような家でかなり広く、築年数も経っていたそうだ。
 
 ある日、学校から帰った恵山さんは手を洗う為に洗面所へ向かった。
 石鹸を手に着けた途端、背後から濃密な気配を感じたという。すぐ後ろではなく、少し離れたところにいるような感覚がしたという。
 「ガタッ」
 机が動くような音が聞こえた時、恵山さんは顔を上げた。
 鏡を見るが自分の後ろには何もいない。
 チラチラと鏡を見ながら手を洗っていたという。
 水で泡を洗い流そうとした時、鏡で自分の背後を見た。そこには黒い人の形をした影があったという。
 腰が抜けそうになるのを我慢して、とにかくずっと手を洗い続けたという。
 「人は怖くなるとひとつのことに集中するんだ」
 恵山さんはそう語った。
 10分程手を洗うと影はきえていたという。

 その事も忘れかけてきた2週間くらい経った時、恵山さんはとある夢をみるようになったという。
 真っ暗な部屋の中にいたという。
 一つだけわかったことが10メートル程先に何か動く黒い影がある事。
 「左右にユラユラ動いているんだよね。私よりも身長が低かったんだけど、性別すらわかんなかったんだ。」
 
 すると段々とその黒い影が近づいてきたという。
 かれこれ三ヶ月は黒い影が出てくる夢を見ていたそうだ。
 「日が経つ毎に黒い影の詳細が分かってきたんだ。」
 中学生くらいの女の子が頭を左右に揺らしているというのだ。

 また更に日が経つと夢以外の箇所でも異変を感じるようになったという。
 「隣の家で軽いボヤが起きたり、物置部屋で物が移動していたりと明らかに家に何かが憑いていたんだよ」
 そんなある日、手が届くような距離にまで黒い影が近づいてきた時、恵山さんは戦慄したという。
 「言葉で表すのは難しいんだけど、頭は左右に揺れているのだけど、目とか鼻とか口とかがぐにゃぐにゃって動いているんだよ」
 その夢を見てから恵山さんは黒い影を見ることは無くなったという。

 その黒い影の事を祖母に相談すると、「そういえばこの家ができたのは土地が安かったからなのよ。確か元々あった家が火事が起きてそのまま取り壊されたんじゃなかったかしら。」

 恵山さんは、「これ以上は、ね。」と意味ありげに言い残して去っていった。



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行きますよぉー
せめて50話までは…
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