幽霊が見たいから百物語を書いてく

四十一話 サイクリング

　友達とサイクリングに行った時の話。

　友人が最近ロードバイクを買ったと言うので、少し離れた山の方へサイクリングすることにした。
　距離はそこまで遠くはなく、ゆっくり走っても片道1時間くらいのところだ。

　その日は丁度秋に入った涼しい陽気で、サイクリングにピッタリの日だった。
　友人と他愛も無いことを話しながら、結局山へ着くまで1時間半もかかってしまった。

　どうせなら山頂付近まで行ってみようと友人が言ったので、僕達は傷んだアスファルトの坂を立ち漕ぎで登った。
　
　すると、少し登った所に「立ち入り禁止」と書かれた看板があった。
　だが、僕達は看板を無視して進んだ。

　看板から50mくらい離れたところに作業員らしき服装をした人達がいた。
　「この先通れますかね？」
と聞くと、
「勿論大丈夫だよー」
と答えてくれた。
　どうやら優しい人のようだ。

　僕達はスピードを上げて山頂を目指した。

　すると突然前を走っていた友人が止まった。

　「これ、見ろよ」
　友人が指さす先には断崖絶壁の落ちたら絶対に死ぬ高さからの風景が見えた。

　本当に間一髪のところで友人は助かった。

　僕達はさっき通った所を戻ることにした。
　流石に恐怖を感じたからね。

　先程の作業員の前を通る時、ボソッと、
「あれ、まだ生きてるんだ」
という声が聞こえた。

　僕達は猛スピードでそこを後にした。

　数年たった今、あの時行った山を調べると、心霊スポットになっていた。

　サイクリング中の恐怖体験だった。