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東の国
89.知らずのフォールアウト
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「えっ、ここにも彼らが来ていたんですか?」
真紘とリンは事件の聞き込みのため、ギルド近くの雑貨店を訪れていた。
「開店してすぐだったから一時間前くらいかな、ここらじゃ見ないイケメンの狐の人と、これまた見たことないくらい大きな人が来たわよ。ほら、そこの鳥の人形を見てた」
特産品の木彫りの鳥を指さして、白クマの耳を生やした女性店員は答える。
リンはそれを手に取って目を輝かせていた。
「店を出たあと、このあとどこに行くとか話していませんでしたか?」
「うーん、そこまでは聞いてないけど、逆に色々聞かれたわね。白装束の怪しいやつを見かけなかったかとか、最近、魔力不足で観光客が倒れる事件が起こったりしてないかとか物騒な質問ばかりだったけど、ギルドの人なのかなって。違うの? ここ冒険者ギルドも近いからそういう人ってよく来るのよ。お兄さん達もでしょ? それとも役者さん? 舞台の興行なんてあったかしら」
「そうでしたか。彼らも僕たちも役者ではありませんね。お忙しいところ二度も同じことを聞いてしまって申し訳ありませんでした。ご協力いただきありがとうございます」
「ご丁寧にどうもね。役者さんよりも綺麗なお顔だけどねぇ。お兄さんたちここらじゃ見ない顔だけど、どこから来たの? こんな美人さん、一度見たら忘れないもの」
「恐縮です。アテナ王国から参りました」
「ちゃーんとギルド所属のカードもあるで」
リンが大分古びたカードを取り出す。よく見てみると更新日が三年も過ぎていた。長寿ともなると時間の感覚が麻痺してくるのだろうか。
カードを胸ポケットにずぼっと突っ込むリンを見て、種族は関係なく、個人の性格によるものな気がしてきた。
「まあ、アテナから? 随分遠くから来たわねぇ。センデルの男と違って、立ち姿からお上品。うちの人にも見習ってほしいもんだわ」
「あはは……」
人口のほとんどが獣人であるためか、真紘の尖った耳を見て物珍しそうにする者は少ない。エルフに会ったことのある人が少ないため、何かしらの獣人か、混血だと思われているようだ。
アテナの王都とはまた違った多様性が、呼吸を少しだけ楽にしてくれた。
「そうだ。リンさん、お土産買って行かれますか? 確実にジルコンを取り戻せるか分からないので、奥の手があった方が、アルマさんを前にした時に勇気が湧くかなと……」
「奥の手って! まあ、ある意味戦いではあるか……。なあなあ、マヒロくん。アルマも鳥のぬいぐるみ見て、ボクのこと思い出してたんかな?」
「そうかもしれませんね。だって、色も綺麗な赤でリンさんにそっくりですよ」
「えへへ……。じゃあ隣のドワーフのぬいぐるみと一緒に買ってこ」
「いいですね。ドワーフの方はお部屋に飾るんですか? それともそちらもアルマさんへのお土産に?」
リンはどちらも違うと首を振る。そしてぬいぐるみを顔の前に持ってくると、ポッと染まった赤い頬を隠して囁いた。
「本人を前にすると緊張するやん? だからドワーフのぬいぐるみを相手に喋る練習しよーかなって……」
「そっ……」
「そ?」
「それをアルマさんに見せればいいのに、なんで僕に見せるんですか⁉」
頬を染める真紘は、眉間に皺を寄せながらも口角は上がっている。
リンはなぜ真紘が半ギレなのか理解できていないようだ。
「だってこんなん見せたら呆れられるやろ! お人形さん遊びするような歳ちゃうで」
「そういうところが可愛いんじゃないですか! もうなんだかアルマさんが可哀相になってきました。助けて重盛、援護射撃が必要だよ……」
「可愛ないやろこんなん! ふんっ、こんな時まで旦那の名前呼ぶなんて、ほんまマヒロくんは旦那大好きやんなァ。さっきも入ったレストランのメニュー見ながら『これ重盛が好きそうな味』とか『これ重盛に前作ってもらったことがあって』とかひたすら語尾にハート付けて惚気とったで!」
「うっ、重盛には言わないでください。そもそもリンさんが何かと理由をつけて街中をぶらぶらしたがるから、こうやってどんどん後手に回っているんですよ。いいんですか、重盛たちが事件もジルコンも全部解決しちゃいますよ」
「ふーんだ! ジルコンだってちゃんと探しとるもん。聞き込みしてるやん。ちょおっとご飯食べるのに時間がかかったり買うもん迷ったりしとるだけやん。マヒロくんはボクとお話しするのに飽きたん? シゲモリくんだって子供ちゃうんやから、一日や二日放置したって大丈夫やろ?」
「うーん……。そうですね。ああ、お店も混んできましたし、行きましょう。早くお会計しないと置いて行っちゃいますよ」
リンの言う通り、重盛は真紘がいなくとも問題ないはずだが、真紘の方がだめなのだ。
こちらが手を伸ばす前に大きな手で包まれる安心感も、尻尾が腰に巻き着く窮屈さも、何もかもが足りなくて、寒い。
新婚旅行に行く前はお互い仕事が忙しく、二人の時間がなかった。それに比べれば、まだ半日も経っていない。
堪え性のない自分に驚くばかりだ。
リンのペースに合わせたい気持ちと先を急ぐ気持ちが常に競い合っている。
慌てて財布を取り出すリンを置いて、真紘は先に店外へと出た。
すぐに出てきたリンは大きな紙袋を持っており、ゴソゴソと袋の中に手を入れて何かを探している。
「ぬいぐるみ以外にも何かご購入されたんですか?」
「んにゃ、ぬいぐるみだけ。んー、あっ、あった! ほい、これマヒロくんにプレゼント!」
リンが取り出したのは、大きなキツネのぬいぐるみだった。獣化した重盛よりも一回り小さいくらいのサイズだ。
真紘がぬいぐるみを受け取ると、リンは赤い丸眼鏡を装着した。屋内から屋外など、明暗に差があると目が眩むため、対策として赤いサングラスを愛用しているようだ。
「何のプレゼントですか……?」
「じーちゃんの話聞いてくれてありがとうのお礼と、大大大ちゅきな旦那と引き離してごめんねのお詫び。このキツネくんを抱いとったらちょびっとは寂しなくなるかなァ~思うて」
「せっかくなのでありがたく頂戴しますが――」
「しますが?」
真紘はぬいぐるみを抱き直してキツネに頬を寄せる。
「より恋しくなるというか、今も寂しいと泣いてるんじゃないかと心配になると言いますか……」
「……あんた、ほんま可愛いお人やな。ほんまボクが小鳥ちゃんやなかったら危なかったわ。今までもその微笑み一つで数多の恋心を打ち砕いて来たんやろなあ。こりゃあ、こんなじーちゃんをも警戒するようになるわ。シゲモリくんが可哀相になってきたで」
先ほどのお返しとばかりに同じ言葉でチクチク攻撃される。
対アルマでなければ、基本的にリンの方が一歩上手なのだ。
「うう……。気を取り直して、一旦僕たちの仲間の泊まっている宿に向かいましょう。もしかしたら重盛とアルマさんもいるかもしれません」
「おるかな……。マヒロくんは早く会いたいかもしらんよ?
でもまだジルコンも犯人も見つけとらんし、僕はあっちと合流したないんやけど。なあ、一回ぬいぐるみで練習してもええ?」
「いいですよ。僕がアルマさんのぬいぐるみを持っているので、ご本人だと思って話してみてください」
真紘はドワーフのぬいぐるみを受け取ると、両腕を伸ばして頭の上にそれを掲げた。
「なんでそんな持ち上げたん? 顔の前でええよ」
「アルマさんの顔の位置はここかなと思いまして」
「いや、話す時は座っとる状態かも。そこまで深く考えず、ラフに構えて」
「で、ではこのあたりに構えておきます。僭越ながら代役を務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします」
「重い! 気合の入り方が談笑ちゃう!」
恋バナに花を咲かせて雪道を歩く二人の周りだけ春のような陽気で、ぬいぐるみでの特訓の甲斐もあり、王城の上にいた頃よりも足取りが軽くなっていた。
宿に入るとリーベ神官が受付にいた。
カソック姿に丸眼鏡、ワンレングスの髪は肩につくほどで、とても宿で働いている人間には見えない。
本人の趣味嗜好はともかく、なんやかんやで神職が一番合っているのかもしれないな、と思った真紘はくすっと笑った。
「リーベ様。こんにちは」
「おや? 真紘様、こんにちは、まだおはようございますですかね。思っていたよりもお早いご到着で」
「夜明け前には王都に着いていたのですが、色々ありまして……」
「事件のことですね、フミから聞きました。ああ、やはりリン様もご一緒でしたか。お久しぶりです。リーベでございます。覚えてらっしゃいますか?」
「王付き神官やろ。前に会ったのは二十年前だったのに、なんや全然変わっとらんなあ」
「はっは、それはリン様の方でしょう。おっと、私の仕事を忘れていました。二時間ほど前ですかね、重盛様とアルマ様がいらっしゃいまして、部屋にお荷物だけおいていかれましたよ」
「そうでしたか、まだいるかなと思っていたのですが、残念です」
重盛とアルマがいないと聞いて、リンはほっと安堵の息を漏らす。
「リンさん……?」
真紘と目が合うと、ばつの悪い顔をして、えへへと笑って誤魔化した。
リーベは受付のカウンターから出てくると、ロビーのソファー席で話そうと提案した。
チェックアウトの時間を過ぎているため、ロビーには他の宿泊客はおらず、とても静かだ。
規模としても大きな宿ではなく、家族と数人の従業員だけで営業している旅館のようなものらしい。そのためフミの手伝いの申し出はありがたいものだったらしく、今は大浴場の掃除を女将としているようだ。
リーベの向かいのソファーに真紘とリンは並んで腰かけた。
「事件のことはフミから聞きました。まあ、重盛様方から聞いたことをさらに聞いた話ですが、到着早々大変でしたね。何か進展はありましたか?」
「いいえ。今のところ不審者の目撃情報はゼロです。白装束と聞くとI,mが頭に浮かぶのですが、彼らは魔暴走を起こした動物や人を研究していると聞いたことがあります。その中に他者の魔力を限界まで引き抜くような、何か特殊な装置のようなものを開発しているのでしょうか?」
「私も詳しいことは分かりませんが、女将に聞いてみたところ、似たようなことは時々あると仰っていました。どうやら、センデルでは、五年周期で魔力不足で倒れる人が続出するようなんです」
「五年周期? 神木の力が弱まる百年周期なら分かりますが、五年ですか……。土壌の問題か、獣人特有の流行り病のようなものなんでしょうか?」
リーベは懐から、気になったことをまとめた紙を取り出した。字が右下がりなのも彼の性格が出ているようで面白い。
集団体調不良が起こるようになったのは、三十年前。患者の魔力量はどれも微量だが、火の属性持ち。冬に発生しているため、流行り病ではないかと土壌調査も行われたが、地下水、土、積雪等にもおかしな点はなかった。
「うーん、人為的なものにしては、年数が長いですね。しかし自然発生的なものでもない……。長命種族の犯行なのでしょうか?」
「この世界で長命種といえば、エルフとドワーフですが、出生率が低く圧倒的に数が少ないのです。特にエルフは街中に姿を現すことはありませんし、ドワーフも静かな場所を好みますので、率先して荒事を起こす種族ではありません。六百年前の大戦でもこの二種族だけは完全に戦いにノータッチで雲隠れしていたと聞きます」
「僕のようにエルフが街中を歩いているのもやはり不思議なことなのですね。獣人の寿命も人間と変わらないと聞きますが、アテナ様のようにご長寿な方も中にはいらっしゃるのでは?」
「あのお方は特別です。七十歳までは他の者と変わらず歳を重ねていたと聞きますが、王座に就いた時に、神託を受けていらっしゃいますので、その影響で老化が緩やかになったと仰っておりました。救世主様と各国の国王以外で長命な獣人はほとんどいないと考えてよろしいかと思います」
「レヴィ様は……?」
「あの方は単に長生きでいらっしゃるだけです」
「な、なるほど」
ローテーブルに置かれたその紙を読み込んでいたリンは、カタカタと震え出した。
真紘はリンの背中に手を添えて優しくさする。
「リンさん、どうしたんですか? 気分が悪くなるようなことがありましたか……?」
「ううん、ちゃうよ……。ボクね、アテナ様の命で救世主の生存確認をしとるんよ。チャコットの森で会ったのも偶然とちゃうくて、マヒロくんとシゲモリくんがちゃんとやっとるか確認を兼ねて顔出しに行ったんや。ボクが会ってみたかったのもほんまやけど」
「そうでしたか、アテナ様のお気遣いだったんですね。確かに、お役目を終えたとしてもいきなり救世主に失踪されたら困りますもんね」
「アテナ様も過保護なんよ。でもそれにも理由がある。ボクは百年前の救世主の教育係りしててん。そのうちの一人がボクによう懐いてくれてたんやけど、ボクがアルマと付き合いだした頃に行方知らずになってしもたんや」
「だから僕らにも移動するごとに手紙を送ってほしいと仰っていたのかな?」
「それは、あのおばあちゃんが元々手紙好きなだけや。マヒロくんらのことは、妬けるほど信用しとる。でな、失踪した子が東の国にいるっちゅー目撃情報をようやく掴んで、アテナ様の命を受けて急遽こっちまで探しに来てたんやけど……」
リンは火属性という文字をトントンと叩きながら眉間に皺を寄せる。
「ボク、百年前からずっと肩こりみたいな症状に悩まされとって、それが三十年前にパッと解消されたんや。肩こりは年のせいだったけど、治ったのはアルマと、お、お付き合い始めたからかな~思うとったんやけど、段々会う頻度が減って、こんな状況になってもそれは変わらんかった。それに火属性の魔法が強くなって――……いや、元に戻った。んで、思ったんや、七十年近く、誰かに火属性の魔法だけ抑制されてたんちゃかって」
「その原因が失踪した救世主の方にあると……?」
「わからん……。その子、フェリクスって男の子なんやけど、フェリが東の国に移住したであろう時期と、僕の肩こりが完治した時期、それからセンデルで火属性持ちの集団体調不良が発生するようになった時期が被っとる。マヒロくんとリーベ様は、これって偶然やと思う……?」
真紘は、口元を手で覆い、目を見開く。
偶然にしては時期が合いすぎている。そのフェリクスという男が無関係とは思えない。
「フローラ侯爵の魔力の属性も火……。魔力を分け与えた際に感じたので間違いありません。わずかに息があったのは、ハンカチを濡らす程度の魔法が使える水属性の魔力が残っていたからだと思います。火属性の魔力だけごっそり抜かれていたと考えると、その……」
「ええんよ、言うてみ?」
「つまり、リンさんの仰るように、フェリクスさんが何らかの形で今回の事件にも関与している可能性が高いかと……」
リーベはペンを取り出し、紙にリンの仮説をまとめた。
一、百年前の救世主であるフェリクスが、三十年前にリンがアルマと付き合い始めたと同時に失踪。リンの肩こりも治る。
二、東の国に移住したフェリクスは、リンの魔力の代わりにセンデルで火属性の魔力の人間だけを襲うようになる。
三、それは五年周期で起こっている。
四、前回の集団体調不良から五年を待たずしてフローラ侯爵が襲われる。それはリンや火属性持ちの救世主がセンデルに入国したあとすぐに発生している。
そして眼鏡を片手で直し、深いため息をつく。
「まだエルフの悪戯やドワーフの反乱の方が、まだ現実味があったのですが……。救世主様が関与しているとなれば、見つけることも捕まえることも困難ですね。それより重盛様とアルマ様の魔力属性は?」
「鍛冶師だもん、当然アルマも持っとる」
「重盛も火属性持ちですね……。何も知らない状態で直接対峙することになったらまずいかもしれません。リーベ様と萩野さんは?」
「私は火の適正はありませんが、フミは持っていますね。用心しておきます」
「そうしてください。フローラ侯爵もかなりの魔力量でしたから、魔力量が多い人が狙われる可能性が高いです。五年という周期から逸脱して事件が発生したのもそのせいかもしれません。事件が解決したらまた戻ってきます。それまで、できるだけ外出は控えてください。リーベ様は、また結界をお願いします」
「また?」
「リーベ様は治療と同じくらい結界魔法がお得意でしょう? アテナの王城の結界もリーベ様が組み直したと聞きました。この宿なら余裕ですっぽりです」
真紘はぱちんとウインクを飛ばす。
リーベは周りをキョロキョロと見渡した後、手を叩いて笑った。
「さすが真紘様! 結界を解いたのは数時間前だったのですが、気づかれましたか?」
「僅かですが、ほんのり温かい魔力の残滓が残っていました。夜間はいつもそうして結界を?」
「ええ、フミも年頃の女性なので、初めから遠征する際はいつも別々の部屋で寝ています。しかし聖魔法の使い手は戦場で重宝されるものなのです。私には自衛する力がありますが、フミは人を攻撃する魔法が一切使えない上に、自分を守るための結界も張れません。ここまで捨て身な能力では、悪い大人に悪用されかねませんからね。寝ている時は、できるだけ結界を張るようにしています」
人を癒す能力しか持たないなんて、もう誰も傷つけたくない心の表れではないか。
自分が傷付いた過去がまた一つ報われたような気もしたが、自衛する力が全くないなんて、フミのためを思えば素直に喜べない。
「そうですか……。リーベ様がいれば安心ですね」
真紘は力なく笑って答えた。
「こちらはお任せください。お二人もお気をつけて」
順当に天寿を全うすれば、先に逝く自分。フミのことを頼むと言いたいところだが到底言い出せる雰囲気ではなく、賢いリーベは口を閉ざして頷いた。
再び調査に出かけて行った真紘とリンを見送り、フミが掃除をしている風呂場をのぞく。
「あ、リーベ様。真紘君たちまだ来ませんか?」
脱衣所の備品を整えていたフミは、先ほどまで浴室内にいたのか、額に前髪がぺっとり張り付いていた。
「いえ、先ほどお話しして、すぐに出て行かれました。女将から聞いた情報を共有しておきましたよ」
「ありがとうございます。私もアルマさんの恋人さんに会いたかったな」
「事件を解決すればここにまた来るでしょう。あとで会えますよ」
「そうですけどぉ。あ、魔石のことも伝えてくれましたか?」
「魔石?」
「重盛さんが真紘君と連絡を取りたいから、空間魔法のぽけっとに魔石の欠片戻してって真紘君に伝えてって……。あー、もしかして!」
リーベは曇った眼鏡を服の裾で拭きながらそろりと退散しようとする。
「どこに行くんですか? お風呂掃除したくないから受付やるって言ったのは自分じゃないですか。ちゃんと私の話し聞いてなかったんでしょ!」
「あ、あれ、まだ二日酔いが……」
「女将さんが作った味噌汁で復活したって言ってたじゃない! こら!」
「ヒイっ、ご加護を~ッ!」
ジャージの裾を巻くって汗だくになったフミに追いかけられて、結局リーベも汗だくになるのであった。
真紘とリンは事件の聞き込みのため、ギルド近くの雑貨店を訪れていた。
「開店してすぐだったから一時間前くらいかな、ここらじゃ見ないイケメンの狐の人と、これまた見たことないくらい大きな人が来たわよ。ほら、そこの鳥の人形を見てた」
特産品の木彫りの鳥を指さして、白クマの耳を生やした女性店員は答える。
リンはそれを手に取って目を輝かせていた。
「店を出たあと、このあとどこに行くとか話していませんでしたか?」
「うーん、そこまでは聞いてないけど、逆に色々聞かれたわね。白装束の怪しいやつを見かけなかったかとか、最近、魔力不足で観光客が倒れる事件が起こったりしてないかとか物騒な質問ばかりだったけど、ギルドの人なのかなって。違うの? ここ冒険者ギルドも近いからそういう人ってよく来るのよ。お兄さん達もでしょ? それとも役者さん? 舞台の興行なんてあったかしら」
「そうでしたか。彼らも僕たちも役者ではありませんね。お忙しいところ二度も同じことを聞いてしまって申し訳ありませんでした。ご協力いただきありがとうございます」
「ご丁寧にどうもね。役者さんよりも綺麗なお顔だけどねぇ。お兄さんたちここらじゃ見ない顔だけど、どこから来たの? こんな美人さん、一度見たら忘れないもの」
「恐縮です。アテナ王国から参りました」
「ちゃーんとギルド所属のカードもあるで」
リンが大分古びたカードを取り出す。よく見てみると更新日が三年も過ぎていた。長寿ともなると時間の感覚が麻痺してくるのだろうか。
カードを胸ポケットにずぼっと突っ込むリンを見て、種族は関係なく、個人の性格によるものな気がしてきた。
「まあ、アテナから? 随分遠くから来たわねぇ。センデルの男と違って、立ち姿からお上品。うちの人にも見習ってほしいもんだわ」
「あはは……」
人口のほとんどが獣人であるためか、真紘の尖った耳を見て物珍しそうにする者は少ない。エルフに会ったことのある人が少ないため、何かしらの獣人か、混血だと思われているようだ。
アテナの王都とはまた違った多様性が、呼吸を少しだけ楽にしてくれた。
「そうだ。リンさん、お土産買って行かれますか? 確実にジルコンを取り戻せるか分からないので、奥の手があった方が、アルマさんを前にした時に勇気が湧くかなと……」
「奥の手って! まあ、ある意味戦いではあるか……。なあなあ、マヒロくん。アルマも鳥のぬいぐるみ見て、ボクのこと思い出してたんかな?」
「そうかもしれませんね。だって、色も綺麗な赤でリンさんにそっくりですよ」
「えへへ……。じゃあ隣のドワーフのぬいぐるみと一緒に買ってこ」
「いいですね。ドワーフの方はお部屋に飾るんですか? それともそちらもアルマさんへのお土産に?」
リンはどちらも違うと首を振る。そしてぬいぐるみを顔の前に持ってくると、ポッと染まった赤い頬を隠して囁いた。
「本人を前にすると緊張するやん? だからドワーフのぬいぐるみを相手に喋る練習しよーかなって……」
「そっ……」
「そ?」
「それをアルマさんに見せればいいのに、なんで僕に見せるんですか⁉」
頬を染める真紘は、眉間に皺を寄せながらも口角は上がっている。
リンはなぜ真紘が半ギレなのか理解できていないようだ。
「だってこんなん見せたら呆れられるやろ! お人形さん遊びするような歳ちゃうで」
「そういうところが可愛いんじゃないですか! もうなんだかアルマさんが可哀相になってきました。助けて重盛、援護射撃が必要だよ……」
「可愛ないやろこんなん! ふんっ、こんな時まで旦那の名前呼ぶなんて、ほんまマヒロくんは旦那大好きやんなァ。さっきも入ったレストランのメニュー見ながら『これ重盛が好きそうな味』とか『これ重盛に前作ってもらったことがあって』とかひたすら語尾にハート付けて惚気とったで!」
「うっ、重盛には言わないでください。そもそもリンさんが何かと理由をつけて街中をぶらぶらしたがるから、こうやってどんどん後手に回っているんですよ。いいんですか、重盛たちが事件もジルコンも全部解決しちゃいますよ」
「ふーんだ! ジルコンだってちゃんと探しとるもん。聞き込みしてるやん。ちょおっとご飯食べるのに時間がかかったり買うもん迷ったりしとるだけやん。マヒロくんはボクとお話しするのに飽きたん? シゲモリくんだって子供ちゃうんやから、一日や二日放置したって大丈夫やろ?」
「うーん……。そうですね。ああ、お店も混んできましたし、行きましょう。早くお会計しないと置いて行っちゃいますよ」
リンの言う通り、重盛は真紘がいなくとも問題ないはずだが、真紘の方がだめなのだ。
こちらが手を伸ばす前に大きな手で包まれる安心感も、尻尾が腰に巻き着く窮屈さも、何もかもが足りなくて、寒い。
新婚旅行に行く前はお互い仕事が忙しく、二人の時間がなかった。それに比べれば、まだ半日も経っていない。
堪え性のない自分に驚くばかりだ。
リンのペースに合わせたい気持ちと先を急ぐ気持ちが常に競い合っている。
慌てて財布を取り出すリンを置いて、真紘は先に店外へと出た。
すぐに出てきたリンは大きな紙袋を持っており、ゴソゴソと袋の中に手を入れて何かを探している。
「ぬいぐるみ以外にも何かご購入されたんですか?」
「んにゃ、ぬいぐるみだけ。んー、あっ、あった! ほい、これマヒロくんにプレゼント!」
リンが取り出したのは、大きなキツネのぬいぐるみだった。獣化した重盛よりも一回り小さいくらいのサイズだ。
真紘がぬいぐるみを受け取ると、リンは赤い丸眼鏡を装着した。屋内から屋外など、明暗に差があると目が眩むため、対策として赤いサングラスを愛用しているようだ。
「何のプレゼントですか……?」
「じーちゃんの話聞いてくれてありがとうのお礼と、大大大ちゅきな旦那と引き離してごめんねのお詫び。このキツネくんを抱いとったらちょびっとは寂しなくなるかなァ~思うて」
「せっかくなのでありがたく頂戴しますが――」
「しますが?」
真紘はぬいぐるみを抱き直してキツネに頬を寄せる。
「より恋しくなるというか、今も寂しいと泣いてるんじゃないかと心配になると言いますか……」
「……あんた、ほんま可愛いお人やな。ほんまボクが小鳥ちゃんやなかったら危なかったわ。今までもその微笑み一つで数多の恋心を打ち砕いて来たんやろなあ。こりゃあ、こんなじーちゃんをも警戒するようになるわ。シゲモリくんが可哀相になってきたで」
先ほどのお返しとばかりに同じ言葉でチクチク攻撃される。
対アルマでなければ、基本的にリンの方が一歩上手なのだ。
「うう……。気を取り直して、一旦僕たちの仲間の泊まっている宿に向かいましょう。もしかしたら重盛とアルマさんもいるかもしれません」
「おるかな……。マヒロくんは早く会いたいかもしらんよ?
でもまだジルコンも犯人も見つけとらんし、僕はあっちと合流したないんやけど。なあ、一回ぬいぐるみで練習してもええ?」
「いいですよ。僕がアルマさんのぬいぐるみを持っているので、ご本人だと思って話してみてください」
真紘はドワーフのぬいぐるみを受け取ると、両腕を伸ばして頭の上にそれを掲げた。
「なんでそんな持ち上げたん? 顔の前でええよ」
「アルマさんの顔の位置はここかなと思いまして」
「いや、話す時は座っとる状態かも。そこまで深く考えず、ラフに構えて」
「で、ではこのあたりに構えておきます。僭越ながら代役を務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします」
「重い! 気合の入り方が談笑ちゃう!」
恋バナに花を咲かせて雪道を歩く二人の周りだけ春のような陽気で、ぬいぐるみでの特訓の甲斐もあり、王城の上にいた頃よりも足取りが軽くなっていた。
宿に入るとリーベ神官が受付にいた。
カソック姿に丸眼鏡、ワンレングスの髪は肩につくほどで、とても宿で働いている人間には見えない。
本人の趣味嗜好はともかく、なんやかんやで神職が一番合っているのかもしれないな、と思った真紘はくすっと笑った。
「リーベ様。こんにちは」
「おや? 真紘様、こんにちは、まだおはようございますですかね。思っていたよりもお早いご到着で」
「夜明け前には王都に着いていたのですが、色々ありまして……」
「事件のことですね、フミから聞きました。ああ、やはりリン様もご一緒でしたか。お久しぶりです。リーベでございます。覚えてらっしゃいますか?」
「王付き神官やろ。前に会ったのは二十年前だったのに、なんや全然変わっとらんなあ」
「はっは、それはリン様の方でしょう。おっと、私の仕事を忘れていました。二時間ほど前ですかね、重盛様とアルマ様がいらっしゃいまして、部屋にお荷物だけおいていかれましたよ」
「そうでしたか、まだいるかなと思っていたのですが、残念です」
重盛とアルマがいないと聞いて、リンはほっと安堵の息を漏らす。
「リンさん……?」
真紘と目が合うと、ばつの悪い顔をして、えへへと笑って誤魔化した。
リーベは受付のカウンターから出てくると、ロビーのソファー席で話そうと提案した。
チェックアウトの時間を過ぎているため、ロビーには他の宿泊客はおらず、とても静かだ。
規模としても大きな宿ではなく、家族と数人の従業員だけで営業している旅館のようなものらしい。そのためフミの手伝いの申し出はありがたいものだったらしく、今は大浴場の掃除を女将としているようだ。
リーベの向かいのソファーに真紘とリンは並んで腰かけた。
「事件のことはフミから聞きました。まあ、重盛様方から聞いたことをさらに聞いた話ですが、到着早々大変でしたね。何か進展はありましたか?」
「いいえ。今のところ不審者の目撃情報はゼロです。白装束と聞くとI,mが頭に浮かぶのですが、彼らは魔暴走を起こした動物や人を研究していると聞いたことがあります。その中に他者の魔力を限界まで引き抜くような、何か特殊な装置のようなものを開発しているのでしょうか?」
「私も詳しいことは分かりませんが、女将に聞いてみたところ、似たようなことは時々あると仰っていました。どうやら、センデルでは、五年周期で魔力不足で倒れる人が続出するようなんです」
「五年周期? 神木の力が弱まる百年周期なら分かりますが、五年ですか……。土壌の問題か、獣人特有の流行り病のようなものなんでしょうか?」
リーベは懐から、気になったことをまとめた紙を取り出した。字が右下がりなのも彼の性格が出ているようで面白い。
集団体調不良が起こるようになったのは、三十年前。患者の魔力量はどれも微量だが、火の属性持ち。冬に発生しているため、流行り病ではないかと土壌調査も行われたが、地下水、土、積雪等にもおかしな点はなかった。
「うーん、人為的なものにしては、年数が長いですね。しかし自然発生的なものでもない……。長命種族の犯行なのでしょうか?」
「この世界で長命種といえば、エルフとドワーフですが、出生率が低く圧倒的に数が少ないのです。特にエルフは街中に姿を現すことはありませんし、ドワーフも静かな場所を好みますので、率先して荒事を起こす種族ではありません。六百年前の大戦でもこの二種族だけは完全に戦いにノータッチで雲隠れしていたと聞きます」
「僕のようにエルフが街中を歩いているのもやはり不思議なことなのですね。獣人の寿命も人間と変わらないと聞きますが、アテナ様のようにご長寿な方も中にはいらっしゃるのでは?」
「あのお方は特別です。七十歳までは他の者と変わらず歳を重ねていたと聞きますが、王座に就いた時に、神託を受けていらっしゃいますので、その影響で老化が緩やかになったと仰っておりました。救世主様と各国の国王以外で長命な獣人はほとんどいないと考えてよろしいかと思います」
「レヴィ様は……?」
「あの方は単に長生きでいらっしゃるだけです」
「な、なるほど」
ローテーブルに置かれたその紙を読み込んでいたリンは、カタカタと震え出した。
真紘はリンの背中に手を添えて優しくさする。
「リンさん、どうしたんですか? 気分が悪くなるようなことがありましたか……?」
「ううん、ちゃうよ……。ボクね、アテナ様の命で救世主の生存確認をしとるんよ。チャコットの森で会ったのも偶然とちゃうくて、マヒロくんとシゲモリくんがちゃんとやっとるか確認を兼ねて顔出しに行ったんや。ボクが会ってみたかったのもほんまやけど」
「そうでしたか、アテナ様のお気遣いだったんですね。確かに、お役目を終えたとしてもいきなり救世主に失踪されたら困りますもんね」
「アテナ様も過保護なんよ。でもそれにも理由がある。ボクは百年前の救世主の教育係りしててん。そのうちの一人がボクによう懐いてくれてたんやけど、ボクがアルマと付き合いだした頃に行方知らずになってしもたんや」
「だから僕らにも移動するごとに手紙を送ってほしいと仰っていたのかな?」
「それは、あのおばあちゃんが元々手紙好きなだけや。マヒロくんらのことは、妬けるほど信用しとる。でな、失踪した子が東の国にいるっちゅー目撃情報をようやく掴んで、アテナ様の命を受けて急遽こっちまで探しに来てたんやけど……」
リンは火属性という文字をトントンと叩きながら眉間に皺を寄せる。
「ボク、百年前からずっと肩こりみたいな症状に悩まされとって、それが三十年前にパッと解消されたんや。肩こりは年のせいだったけど、治ったのはアルマと、お、お付き合い始めたからかな~思うとったんやけど、段々会う頻度が減って、こんな状況になってもそれは変わらんかった。それに火属性の魔法が強くなって――……いや、元に戻った。んで、思ったんや、七十年近く、誰かに火属性の魔法だけ抑制されてたんちゃかって」
「その原因が失踪した救世主の方にあると……?」
「わからん……。その子、フェリクスって男の子なんやけど、フェリが東の国に移住したであろう時期と、僕の肩こりが完治した時期、それからセンデルで火属性持ちの集団体調不良が発生するようになった時期が被っとる。マヒロくんとリーベ様は、これって偶然やと思う……?」
真紘は、口元を手で覆い、目を見開く。
偶然にしては時期が合いすぎている。そのフェリクスという男が無関係とは思えない。
「フローラ侯爵の魔力の属性も火……。魔力を分け与えた際に感じたので間違いありません。わずかに息があったのは、ハンカチを濡らす程度の魔法が使える水属性の魔力が残っていたからだと思います。火属性の魔力だけごっそり抜かれていたと考えると、その……」
「ええんよ、言うてみ?」
「つまり、リンさんの仰るように、フェリクスさんが何らかの形で今回の事件にも関与している可能性が高いかと……」
リーベはペンを取り出し、紙にリンの仮説をまとめた。
一、百年前の救世主であるフェリクスが、三十年前にリンがアルマと付き合い始めたと同時に失踪。リンの肩こりも治る。
二、東の国に移住したフェリクスは、リンの魔力の代わりにセンデルで火属性の魔力の人間だけを襲うようになる。
三、それは五年周期で起こっている。
四、前回の集団体調不良から五年を待たずしてフローラ侯爵が襲われる。それはリンや火属性持ちの救世主がセンデルに入国したあとすぐに発生している。
そして眼鏡を片手で直し、深いため息をつく。
「まだエルフの悪戯やドワーフの反乱の方が、まだ現実味があったのですが……。救世主様が関与しているとなれば、見つけることも捕まえることも困難ですね。それより重盛様とアルマ様の魔力属性は?」
「鍛冶師だもん、当然アルマも持っとる」
「重盛も火属性持ちですね……。何も知らない状態で直接対峙することになったらまずいかもしれません。リーベ様と萩野さんは?」
「私は火の適正はありませんが、フミは持っていますね。用心しておきます」
「そうしてください。フローラ侯爵もかなりの魔力量でしたから、魔力量が多い人が狙われる可能性が高いです。五年という周期から逸脱して事件が発生したのもそのせいかもしれません。事件が解決したらまた戻ってきます。それまで、できるだけ外出は控えてください。リーベ様は、また結界をお願いします」
「また?」
「リーベ様は治療と同じくらい結界魔法がお得意でしょう? アテナの王城の結界もリーベ様が組み直したと聞きました。この宿なら余裕ですっぽりです」
真紘はぱちんとウインクを飛ばす。
リーベは周りをキョロキョロと見渡した後、手を叩いて笑った。
「さすが真紘様! 結界を解いたのは数時間前だったのですが、気づかれましたか?」
「僅かですが、ほんのり温かい魔力の残滓が残っていました。夜間はいつもそうして結界を?」
「ええ、フミも年頃の女性なので、初めから遠征する際はいつも別々の部屋で寝ています。しかし聖魔法の使い手は戦場で重宝されるものなのです。私には自衛する力がありますが、フミは人を攻撃する魔法が一切使えない上に、自分を守るための結界も張れません。ここまで捨て身な能力では、悪い大人に悪用されかねませんからね。寝ている時は、できるだけ結界を張るようにしています」
人を癒す能力しか持たないなんて、もう誰も傷つけたくない心の表れではないか。
自分が傷付いた過去がまた一つ報われたような気もしたが、自衛する力が全くないなんて、フミのためを思えば素直に喜べない。
「そうですか……。リーベ様がいれば安心ですね」
真紘は力なく笑って答えた。
「こちらはお任せください。お二人もお気をつけて」
順当に天寿を全うすれば、先に逝く自分。フミのことを頼むと言いたいところだが到底言い出せる雰囲気ではなく、賢いリーベは口を閉ざして頷いた。
再び調査に出かけて行った真紘とリンを見送り、フミが掃除をしている風呂場をのぞく。
「あ、リーベ様。真紘君たちまだ来ませんか?」
脱衣所の備品を整えていたフミは、先ほどまで浴室内にいたのか、額に前髪がぺっとり張り付いていた。
「いえ、先ほどお話しして、すぐに出て行かれました。女将から聞いた情報を共有しておきましたよ」
「ありがとうございます。私もアルマさんの恋人さんに会いたかったな」
「事件を解決すればここにまた来るでしょう。あとで会えますよ」
「そうですけどぉ。あ、魔石のことも伝えてくれましたか?」
「魔石?」
「重盛さんが真紘君と連絡を取りたいから、空間魔法のぽけっとに魔石の欠片戻してって真紘君に伝えてって……。あー、もしかして!」
リーベは曇った眼鏡を服の裾で拭きながらそろりと退散しようとする。
「どこに行くんですか? お風呂掃除したくないから受付やるって言ったのは自分じゃないですか。ちゃんと私の話し聞いてなかったんでしょ!」
「あ、あれ、まだ二日酔いが……」
「女将さんが作った味噌汁で復活したって言ってたじゃない! こら!」
「ヒイっ、ご加護を~ッ!」
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