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新婚浮かれモード
69.寒いね?
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婚姻届けはすんなり受理され、晴れて家族となった真紘と重盛は今までと同じでいて、ちょっぴりだけ違う生活を送っていた。
リアースでは夫婦別姓が認められているが、苗字と名前の間に同じミドルネームを使用することが義務付けられている。
それも重盛が事前にマルクスに確認を取っていたので、真紘は志水・フォン・タルハネイリッカ・真紘となった。
マルクス達に重盛と付き合うことになったと報告した後の数日間、重盛はノートを持参してこそこそとマルクスとノエルと密会していた。それがこの相談だったと知ったのは婚姻届けに記入した後だった。
「外堀の埋め方が凄まじいな。堀を埋めるどころか、目の前に一夜城建てちゃってるよ……」と驚愕していると、重盛は「俺は天下よりもとにかくお前がほしいのよ」と至って真面目な顔をして言いのけた。
プロポーズを受け浮かれている真紘とて悪い気はしない。人生をかけて二人だけの城を築いていこうとしているのだからお相子だろう。
身元保証人の名前が中間に移動しただけで新鮮味はないが、アテナの計らいもあり、二人は正式に公爵となった。
そして分家ではなく、第二の一代限りのタルハネイリッカ家になる。
それでも同じ名前を使わせてもらうからには、素行により注意を払わねばならない。自分達の行いでマルクス達に迷惑がかかるかもしれないと思うと身が引き締まる思いであった。
変わったのは名前だけではない。
一番の変化は真紘自身にあった。
便利屋の細々した依頼を受けながら、アテナやレビィとお茶をしたりギルドの体制を整えるべく交流のある貴族達から地方の運営状況をリサーチしたり、何かと忙しい生活の中で、唯一息抜きできるのは麻耶や野木との食事会であった。
救世主様方の会合を邪魔してはならない、という暗黙の了解が王城内にあるらしく、重盛は断り文句として頻繁に使っているようだ。
「公爵様、本日は会合の予定でございますね。こんな時間までお引止めして申し訳ございません」
「先ほど重盛様より会合があると伺いました。私も本日は以上で失礼させていただきます」
「恐れながら、十七時より会合とお聞きしましたが、お時間はよろしいのでしょうか……?」
自分の予定のはずが、真紘も知らぬ食事会の予定を聞かされることもあった。
ああ、これは早く帰ってきてほしい、寂しい、という合図なのだと察する。仕事は進めたいが、愛らしい泣き真似をする夫を思い浮かべると、やはり身に覚えのない予定でもそうなのだと肯定する以外の選択肢は消え去ってしまうのだ。
重盛に甘いだけではなく、彼に一秒でも早く会いたいという自分の欲求に対して甘くなってしまったのは、間違いなく新婚という響きが織りなすマジックのようなものであった。
そして忘年会と称して集まった年の瀬。
レミーの店で食事をしてから週に一回は飲みに行っているという麻耶と野木は同じように頭を抱えた。その姿はまるで姉と弟のようであった。
どうしたのだと問えば、今までも重盛に対し甘いと言われていた真紘の態度が、手の付けようのないほどになっているというのだ。
「確かに新婚で浮かれているのかもしれませんが、そこまで変わっていますか……?」
首を傾げる真紘を後ろからすっぽり覆って肩に顎を乗せた重盛は、砂糖を煮詰めたような声色で肯定とも否定とも取れない返答をした。
「んー、変わったとこ? ああ、もっと可愛くなったことだろ」
「ふふっ、重盛はもっと格好良くなったよね」
「嬉しーなぁ」
「今日の服も大人っぽくて似合ってる。明るい色もいいけど、黒いニットはちょっとお兄さんって感じがしてドキドキするよ」
「超いいこと聞いた。真紘ちゃんが選んでくれた服だからヘビロテする気満々だったけど、もっと黒系も着てみようかな。ねぇねぇ、俺が選んだその白いカーディガン暖かい?」
「うん。暖かいし、イエティみたいで強そうでしょ?」
「うははっ! めちゃくちゃ強い~!」
きゃっきゃと手を叩く重盛の前には空になったワインボトルとビールの瓶が何本も並んでいた。
テーブルの上には食べかけのバジルや生ハムが乗ったピザにラディッシュの赤が際立つ瑞々しいサラダ。既に完食し、重ねてよけてある色とりどりの皿。カトラリーが刺さった丸い筒は店内の柔らかい光をミラーボールのように散乱させている。
可笑しなことに配膳をしに来た店員は皆必ず頬をぼっと染めて戻っていくのだ。
テーブルを挟んで背もたれのないベンチのような椅子に並んで座る麻耶と野木にも、真紘と重盛がテーブルの下で指を絡めあっていることなど容易に想像できた。
「私デザートいらないかも……。重盛君はともかく、真紘君までこんなデロデロになっちゃうとは思ってなかった……」
「俺もっす。羨ましい通り越して無に近い。なんか隠れて父ちゃんといちゃついてた母ちゃんの女の部分見ちゃったみたいな、そんな感じに近いっす」
「あー……分かるわ」
辛口のビールを飲み進める麻耶と、ピザの耳をガシガシと齧る野木は渋い表情を浮かべていた。
「本当に分からないんです。僕自身、変わったつもりもないですし……」
「いやぁ、ここが個室だとしても外出先でそんな引っ付くなんてーくらいの勢いだったじゃないっすか。すっかり受け入れちゃってるよ、真紘君」
「それに貴方達、今も手繋いでるでしょ。取り皿も沢山あるのに二人で一つしか使ってないじゃない。まさか家でも毎回あ~んなんてことしないよね?」
「毎回はしてません! ちゃんと真面目にご飯食べてるよね?」
「食べてる食べてる」
「じゃあその手は?」
麻耶の問いに何故か野木の方がぎょっとした顔をした。
「うっ、手は重盛が寒いと言うので……。でも取り皿はそうですね、それくらいは自分でしないとですね」
皿に手を伸ばしかけた瞬間、繋いでいない方の重盛の腕が真紘の腹に回った。首筋に頬をぐりぐりと押し付ける重盛の目はこれ以上突っ込んでくれるなと語っているが、見えているのは向かい側に座る麻耶と野木だけである。
ふわふわした金色の耳を撫でる真紘だけが一人だけのほほんとした顔をしていた。
「どうしたの? 今日は早い時間から飲んでたし眠くなっちゃた?」
「寒い」
「そんなに? カーディガン貸してあげようか?」
「ううん。だいじょーぶ。ちょっと酔っただけかも。背中が寒い~」
「君、風邪引きやすいんだから気を付けないと。コート羽織って。麻耶さん、野木君ごめんなさい。今日は先に帰りますね」
「いえ、それは大丈夫だけど、重盛君が酔った……?」
荷物をまとめようと真紘が背を向けた瞬間、重盛はワインのグラスをくいっと呷った。ごくごくと水のように飲み干しても顔色は全く変わらない。
「あ、アニキ……」
ジトっとした目を向ける野木に、重盛はしぃーと人差し指を口に当てる。
二人分の上着を抱え、バッグを持った真紘は振り向き、頭を下げた。
「では、お二人ともよいお年を。野木君、年明けに王城に挨拶しに行くからまた遊ぼうね」
「うん。真紘君も頑張れ……。よいお年を」
頑張れという言葉に引っかかりを覚える前に重盛がバッグや上着を奪い去っていく。
「んじゃ、麻耶姉さん、野木、よいお年を。あんがとね、ばいばぁーい」
「ああもう! 酔ってるんだから無理しないで、ちゃんと僕に掴まってよ。麻耶さん、年明けのパーティー、よろしくお願いします」
「はーい。頑張れ~。よいお年を」
ふらつく背を支えるように真紘はエスコートする。
先に抜けさせてもらった礼として飲食代を全額支払い、店を後にした。
外に出ると足元には白い雪が積もっていて月の光を反射していた。
淡く揺れる街灯の橙色に温度を感じるほど、外は寒かった。
サラサラとした雪が風に舞う。歩く度にもきゅもきゅと音が鳴った。
雪道を難なく歩いて行く重盛の手を引いて、真紘は思い切って尋ねた。
「あのさ、君、本当はそんなに酔ってないんじゃ……?」
「んえ?」
「だって飲んでないはずの僕が酔いそうなくらいガブガブ飲んでいても、いつも変わらないじゃないか」
「今日はすきっ腹に飲んだからかもよ」
空っぽの胃でいきなりアルコールを摂取すると酔いが回るのが早いと聞いたことがある。先の展開を勝手に期待して店を飛び出したのは早まったのかもしれない。
先ほどの自信はとっくに萎れ、真紘は恥ずかしさを誤魔化すように笑った。
「そっか。じゃあ、早く家に帰って二人っきりになりたかったのは僕だけか。都合の良いように解釈しちゃったな、あはは……」
「え、えっ!」
口元を抑えて顔を赤らめる真紘の前に回り込むと、重盛は歓喜に震え、尻尾や耳の毛をぶわりと広げた。
「寒いなら温めてあげようなんて思い上がっていたよ。はあ、勘違いだったんだ。嗚呼、駄目だ。今凄く恥ずかしい。確かに僕は変わったのかも。毎日一緒にいるはずなのに、こっちに戻って来てから一人の時間が増えて、君が恋しくて堪らないんだ。結婚してからもっと好きになってるなんて、おかしいよね、こんなの」
「おかしくない……おかしくないよ! 俺すげぇ嬉しい。真紘ちゃんのいう通り、俺も早く二人になりたくて小芝居打ったんだけど、まさか汲み取ってもらえてるとは思わなくて」
「本当に? 僕に恥をかかさないようにって合わせてくれてない?」
「言っておくけど俺マジで全然酔ってないよ。まだ飲めるしわざとだよ。ちゃんと寒いの意味も合ってる」
「全然酔ってないって言うのは酔っ払いだけだよ」
「だあッ! じゃあ寒いだけでも信じて!」
近所迷惑になりそうなほど大きな声で懇願する重盛の勢いに圧倒された真紘は両手を胸の前で握りしめ、肩を竦めてぴょんと跳ねた。
「えっと、じゃあ、僕も寒いから早く帰ろう、で合ってる?」
「流石俺のハニー、大正解」
「良かった……。まだ飲み足りないなら晩酌しますよ、ダーリン?」
「おあっ! 出たな小悪魔モード……。これ以上俺の事メロメロにしてどうすんだ」
じゃれ合いながら二人は白い道を行く。
先ほどまでの寒さが嘘のように体も心も温かい。
「でも晩酌よりもお前が欲しいんだ」なんてキザな台詞は酔ってないと言えないのでは、と首を傾げながらも、真紘は背伸びをして愛する夫の耳元で喜んでと囁いた。
新婚二人を見送りヒラヒラと手を振った麻耶は、大きなため息をついた。
持っていたワイングラスがカツーンと音を立ててテーブルに当たる。
野木は真紘と重盛が座っていた向かい側の席にグラスを持って移動した。
「前々から片鱗はあったけど、激重彼氏じゃん。取らないって、あんな綺麗な子と並ぶ勇気ないって……!」
「もう彼氏じゃなくて激重旦那っすよ。それに今日は俺達に牽制してるっていうか、早く二人きりになりたかったんだと思います」
「ああ、そうだった……旦那か。重盛君ってば王城でも四方八方に威嚇してるし、結婚したのに全然余裕ないじゃない。どうして?」
「それは結婚してから真紘君がもっと可愛くなったからじゃないっすか。幸せオーラのせいか、ずっと聖母みたいな顔で誰に対しても微笑みかけるんすよ。これまでは不可侵の超絶美人って佇まいでしたけど、王都に戻ってから雰囲気が柔らかくなった~って広まっちゃって。今じゃ色んな人から話しかけられたり食事の誘いがあったり」
今月に入ってからは、同世代の貴族に話しかけられても逃げ出さずにしっかり対応している姿を何度も見てきた。ここ数週間はずっと王城にいる野木と一対一で魔法の練習をしていることが多いので、より話しかけやすいのだろう。
休憩時間を見計らって、わざわざ差し入れを持ってくる者までいる。
勿論、その噂は重盛にも届いていて、野木は真紘の護衛をするように任命されていた。
数多の下心と好意に気付いていないのは、人脈づくりの一環と奮起する真紘だけだった。だが、それも好んで交流しているわけではない。自らを鼓舞するため、震える手で指輪を擦っている姿を見れば重盛の気も多少落ち着くのではないか、と野木は思ったが、そんな場面に遭遇していればとっくの昔に城壁の一、二枚は破壊されているだろう。
「なるほど。じゃあ今日は二人そろって久しぶりの休みだったわけ」
「やる気になってる真紘君を止めるわけにはいかなし、かといって独占欲はあるしでヤキモキしてるんすよ」
「勇也君、やけに詳しいね」
「電話でめちゃくちゃ愚痴られるんす。俺と結婚したのは広まってないのに、話しかけやすくなったことだけ広まってるのおかしくないかって。でもまさか真紘君があんなにアニキに対してげろ甘になってるとは思わなかったっすけどね。もしかしたらあれくらいが丁度いいのかも」
「私達が慣れた方が早いってこと?」
「そうなるっすねぇ」
残りの料理を平らげると、野木はそういえばと切り出した。
「麻耶さんはどうなってんすか? 例の彼氏さんと」
「だから彼氏じゃなくて……。勇也君、すっかり恋愛相談窓口みたいになってるわね」
「周りを巻き込んだ挙句ドデカい失恋をした彼女ゼロの恋愛未経験男っすけど」
「人の話を聞く男はいい旦那になるよ。マシンガント―クのあいつとは大違い」
「アニキもわりとマシンガンじゃ?」
「あれはまた別よ。真紘君専用の愛を歌う詩人」
確かに、と野木が吹き出すと麻耶も釣られてケラケラと笑い出した。
身なりの良い男が麻耶を呼んでいると店員が個室の扉を叩くまで、二人はひたすら酒を酌み交わした。
野木も麻耶も翌日に酒が残るタイプではないが、一番酒に強いのは重盛だろうという意見は一致した。少なくとも野木と麻耶は酔ったふりをしなければならないほど強くはない。
麻耶は帰り支度をしながら疑問を口にした。
「真紘君はどうかしらね。お肌も羨ましいくらい白いからすぐに赤くなりそうだけど」
「聞いたことないっすね。俺はもう飲んじゃってますけど、真紘君は誕生日まで飲まないことにしているらしいんで、来年のお楽しみかも」
「それは四人で飲める日が楽しみ。でも赤らんだ真紘君を誰にも見せたくないって旦那が暴れそうな気もする」
「怖いこと言わないでくださいよ。模擬戦ですら未だにこてんぱんにされてるんすから」
「あははっ、ごめん、ごめん。じゃあ私もそろそろ行くね。勇也君もよいお年を」
「はい、よいお年を」
麻耶を迎えに来た自称婚約者の男も嫉妬深いことは彼女から聞いて知っているので、野木は鉢合わせないように遅れて店を出ることにした。
重盛の舎弟として鍛えられた配慮がここでも生かされている。自ら進んで当て馬になる趣味はない。
火照った頬を仰ぎながら、野木はグラスの残りを飲み干した。
「俺もまた好きな人とか出来んのかなぁ」
王城にも女性のメイドや騎士はいるが、同世代で目標を持って働いている姿は格好良いなという尊敬する気持ちが先行する。
事件を起こした日を最後に、フミとは会っていない。
謝罪の手紙は送ったが、直接会って謝りたいというのは、自身の罪を軽くしたいというエゴでしかないからだ。
現在、フミは王都を離れて神官のリーベと共に地方の孤児院や病院を巡っていると小耳に挟んだ。
今では好きになってほしいという欲求も消え去り、ただただ、好きになった人には幸せでいて欲しいと願うばかりだった。
その気持ちに気付いた瞬間、この恋は終わったのだと自覚した。
失恋と引き換えに得たものは沢山ある。
地球で活躍していた洗剤のコマーシャルが似合う清潔感のある男の容姿と、親友二人に頼れる姉御、祖母と祖父のような人との絆。誰か一人に愛されるよりも、自身の人生において大きな財産となった。
夏の終わり頃から、野木はアテナと食事を共にするようになった。
会話の内容は、今日はこんな訓練をしたとか、市場の隅に美味くて安い穴場の店を見つけたとか、ほぼ孫と祖母の日常といったものだ。
そんな日常を送っていると、アテナの食事が終わるのを待ち侘びていたかのように臣下が助けを乞うてくる日もある。野木も職務に同行させられることも少なくない。
しかし、それらの多くは十九歳の青年が果敢に首を突っ込めるような内容ではなかった。できることは、分からないながらにも耳を傾けることくらいだった。
多忙な国王の側にいて良いのか、これが贖罪になるのか、自分が救世主だからぞんざいな扱いができないだけではないのか――と困惑する中、ある日、野木は想定もしていなかった申し出を受けた。
「こんな学も器量も何もない俺がアテナ様の養子になって王子様ってのは、恋を実らせるより難しいんじゃないの……」
誰にも相談できない進退をぽろりと溢す。
返事は焦らなくて良いと言われている。
もっとこの世界を知るため、旅に出てみてはという提案付きだ。
現在は自ら志願した住み込みの騎士として働いているが、お役御免になったということではないという。
王子様らしい外見と中身が伴っている真紘を養子に迎えるべきではという疑問は、口にする前に氷解した。
アテナも同じ長命の真紘が国を支える王になればと思わなかったこともないが、タルハネイリッカ領に発つ前に重盛から釘を刺されたらしい。
真紘が自らの意志で政治に関わりたいと言い出したのなら自分も喜んで手伝うが、恩のある人に引き受けて欲しいと言われれば、きっと責任感の強い彼は最終的に自身の気持ちを押し殺してでも首を縦に振ってしまうから、と――。
その話を聞いて野木も同じことを思った。
だからといって尊敬する二人の次席が自分なのはおかしな話ではないか、とも思う。
この国を愛する人は他にもいる。できるできないに関わらず、全くの別人に姿形を変えてもらった自分の寿命すら分からないのだから、無責任に引き受けるわけにはいかない。もしかしたらアテナよりも先に逝ってしまう可能性だってあるのだ。
舌先に残るアルコールはやけに苦く、悪酔いしそうな予感がした。野木はぼおっとした頭で帰り支度を始める。
上着を羽織り、割り勘した伝票を店員に渡すと、お会計は公爵様からいただいておりますとにこやかに告げられた。
「公爵? ああ、タルハネイリッカ公爵か……ってことはアニキか? 真紘君か? いや、どっちだよ。ややこしいな!」
一人で腹を抱えて笑う野木は「家族が増えるのもいいのかな」と呟いて王城へと帰っていった。
リアースでは夫婦別姓が認められているが、苗字と名前の間に同じミドルネームを使用することが義務付けられている。
それも重盛が事前にマルクスに確認を取っていたので、真紘は志水・フォン・タルハネイリッカ・真紘となった。
マルクス達に重盛と付き合うことになったと報告した後の数日間、重盛はノートを持参してこそこそとマルクスとノエルと密会していた。それがこの相談だったと知ったのは婚姻届けに記入した後だった。
「外堀の埋め方が凄まじいな。堀を埋めるどころか、目の前に一夜城建てちゃってるよ……」と驚愕していると、重盛は「俺は天下よりもとにかくお前がほしいのよ」と至って真面目な顔をして言いのけた。
プロポーズを受け浮かれている真紘とて悪い気はしない。人生をかけて二人だけの城を築いていこうとしているのだからお相子だろう。
身元保証人の名前が中間に移動しただけで新鮮味はないが、アテナの計らいもあり、二人は正式に公爵となった。
そして分家ではなく、第二の一代限りのタルハネイリッカ家になる。
それでも同じ名前を使わせてもらうからには、素行により注意を払わねばならない。自分達の行いでマルクス達に迷惑がかかるかもしれないと思うと身が引き締まる思いであった。
変わったのは名前だけではない。
一番の変化は真紘自身にあった。
便利屋の細々した依頼を受けながら、アテナやレビィとお茶をしたりギルドの体制を整えるべく交流のある貴族達から地方の運営状況をリサーチしたり、何かと忙しい生活の中で、唯一息抜きできるのは麻耶や野木との食事会であった。
救世主様方の会合を邪魔してはならない、という暗黙の了解が王城内にあるらしく、重盛は断り文句として頻繁に使っているようだ。
「公爵様、本日は会合の予定でございますね。こんな時間までお引止めして申し訳ございません」
「先ほど重盛様より会合があると伺いました。私も本日は以上で失礼させていただきます」
「恐れながら、十七時より会合とお聞きしましたが、お時間はよろしいのでしょうか……?」
自分の予定のはずが、真紘も知らぬ食事会の予定を聞かされることもあった。
ああ、これは早く帰ってきてほしい、寂しい、という合図なのだと察する。仕事は進めたいが、愛らしい泣き真似をする夫を思い浮かべると、やはり身に覚えのない予定でもそうなのだと肯定する以外の選択肢は消え去ってしまうのだ。
重盛に甘いだけではなく、彼に一秒でも早く会いたいという自分の欲求に対して甘くなってしまったのは、間違いなく新婚という響きが織りなすマジックのようなものであった。
そして忘年会と称して集まった年の瀬。
レミーの店で食事をしてから週に一回は飲みに行っているという麻耶と野木は同じように頭を抱えた。その姿はまるで姉と弟のようであった。
どうしたのだと問えば、今までも重盛に対し甘いと言われていた真紘の態度が、手の付けようのないほどになっているというのだ。
「確かに新婚で浮かれているのかもしれませんが、そこまで変わっていますか……?」
首を傾げる真紘を後ろからすっぽり覆って肩に顎を乗せた重盛は、砂糖を煮詰めたような声色で肯定とも否定とも取れない返答をした。
「んー、変わったとこ? ああ、もっと可愛くなったことだろ」
「ふふっ、重盛はもっと格好良くなったよね」
「嬉しーなぁ」
「今日の服も大人っぽくて似合ってる。明るい色もいいけど、黒いニットはちょっとお兄さんって感じがしてドキドキするよ」
「超いいこと聞いた。真紘ちゃんが選んでくれた服だからヘビロテする気満々だったけど、もっと黒系も着てみようかな。ねぇねぇ、俺が選んだその白いカーディガン暖かい?」
「うん。暖かいし、イエティみたいで強そうでしょ?」
「うははっ! めちゃくちゃ強い~!」
きゃっきゃと手を叩く重盛の前には空になったワインボトルとビールの瓶が何本も並んでいた。
テーブルの上には食べかけのバジルや生ハムが乗ったピザにラディッシュの赤が際立つ瑞々しいサラダ。既に完食し、重ねてよけてある色とりどりの皿。カトラリーが刺さった丸い筒は店内の柔らかい光をミラーボールのように散乱させている。
可笑しなことに配膳をしに来た店員は皆必ず頬をぼっと染めて戻っていくのだ。
テーブルを挟んで背もたれのないベンチのような椅子に並んで座る麻耶と野木にも、真紘と重盛がテーブルの下で指を絡めあっていることなど容易に想像できた。
「私デザートいらないかも……。重盛君はともかく、真紘君までこんなデロデロになっちゃうとは思ってなかった……」
「俺もっす。羨ましい通り越して無に近い。なんか隠れて父ちゃんといちゃついてた母ちゃんの女の部分見ちゃったみたいな、そんな感じに近いっす」
「あー……分かるわ」
辛口のビールを飲み進める麻耶と、ピザの耳をガシガシと齧る野木は渋い表情を浮かべていた。
「本当に分からないんです。僕自身、変わったつもりもないですし……」
「いやぁ、ここが個室だとしても外出先でそんな引っ付くなんてーくらいの勢いだったじゃないっすか。すっかり受け入れちゃってるよ、真紘君」
「それに貴方達、今も手繋いでるでしょ。取り皿も沢山あるのに二人で一つしか使ってないじゃない。まさか家でも毎回あ~んなんてことしないよね?」
「毎回はしてません! ちゃんと真面目にご飯食べてるよね?」
「食べてる食べてる」
「じゃあその手は?」
麻耶の問いに何故か野木の方がぎょっとした顔をした。
「うっ、手は重盛が寒いと言うので……。でも取り皿はそうですね、それくらいは自分でしないとですね」
皿に手を伸ばしかけた瞬間、繋いでいない方の重盛の腕が真紘の腹に回った。首筋に頬をぐりぐりと押し付ける重盛の目はこれ以上突っ込んでくれるなと語っているが、見えているのは向かい側に座る麻耶と野木だけである。
ふわふわした金色の耳を撫でる真紘だけが一人だけのほほんとした顔をしていた。
「どうしたの? 今日は早い時間から飲んでたし眠くなっちゃた?」
「寒い」
「そんなに? カーディガン貸してあげようか?」
「ううん。だいじょーぶ。ちょっと酔っただけかも。背中が寒い~」
「君、風邪引きやすいんだから気を付けないと。コート羽織って。麻耶さん、野木君ごめんなさい。今日は先に帰りますね」
「いえ、それは大丈夫だけど、重盛君が酔った……?」
荷物をまとめようと真紘が背を向けた瞬間、重盛はワインのグラスをくいっと呷った。ごくごくと水のように飲み干しても顔色は全く変わらない。
「あ、アニキ……」
ジトっとした目を向ける野木に、重盛はしぃーと人差し指を口に当てる。
二人分の上着を抱え、バッグを持った真紘は振り向き、頭を下げた。
「では、お二人ともよいお年を。野木君、年明けに王城に挨拶しに行くからまた遊ぼうね」
「うん。真紘君も頑張れ……。よいお年を」
頑張れという言葉に引っかかりを覚える前に重盛がバッグや上着を奪い去っていく。
「んじゃ、麻耶姉さん、野木、よいお年を。あんがとね、ばいばぁーい」
「ああもう! 酔ってるんだから無理しないで、ちゃんと僕に掴まってよ。麻耶さん、年明けのパーティー、よろしくお願いします」
「はーい。頑張れ~。よいお年を」
ふらつく背を支えるように真紘はエスコートする。
先に抜けさせてもらった礼として飲食代を全額支払い、店を後にした。
外に出ると足元には白い雪が積もっていて月の光を反射していた。
淡く揺れる街灯の橙色に温度を感じるほど、外は寒かった。
サラサラとした雪が風に舞う。歩く度にもきゅもきゅと音が鳴った。
雪道を難なく歩いて行く重盛の手を引いて、真紘は思い切って尋ねた。
「あのさ、君、本当はそんなに酔ってないんじゃ……?」
「んえ?」
「だって飲んでないはずの僕が酔いそうなくらいガブガブ飲んでいても、いつも変わらないじゃないか」
「今日はすきっ腹に飲んだからかもよ」
空っぽの胃でいきなりアルコールを摂取すると酔いが回るのが早いと聞いたことがある。先の展開を勝手に期待して店を飛び出したのは早まったのかもしれない。
先ほどの自信はとっくに萎れ、真紘は恥ずかしさを誤魔化すように笑った。
「そっか。じゃあ、早く家に帰って二人っきりになりたかったのは僕だけか。都合の良いように解釈しちゃったな、あはは……」
「え、えっ!」
口元を抑えて顔を赤らめる真紘の前に回り込むと、重盛は歓喜に震え、尻尾や耳の毛をぶわりと広げた。
「寒いなら温めてあげようなんて思い上がっていたよ。はあ、勘違いだったんだ。嗚呼、駄目だ。今凄く恥ずかしい。確かに僕は変わったのかも。毎日一緒にいるはずなのに、こっちに戻って来てから一人の時間が増えて、君が恋しくて堪らないんだ。結婚してからもっと好きになってるなんて、おかしいよね、こんなの」
「おかしくない……おかしくないよ! 俺すげぇ嬉しい。真紘ちゃんのいう通り、俺も早く二人になりたくて小芝居打ったんだけど、まさか汲み取ってもらえてるとは思わなくて」
「本当に? 僕に恥をかかさないようにって合わせてくれてない?」
「言っておくけど俺マジで全然酔ってないよ。まだ飲めるしわざとだよ。ちゃんと寒いの意味も合ってる」
「全然酔ってないって言うのは酔っ払いだけだよ」
「だあッ! じゃあ寒いだけでも信じて!」
近所迷惑になりそうなほど大きな声で懇願する重盛の勢いに圧倒された真紘は両手を胸の前で握りしめ、肩を竦めてぴょんと跳ねた。
「えっと、じゃあ、僕も寒いから早く帰ろう、で合ってる?」
「流石俺のハニー、大正解」
「良かった……。まだ飲み足りないなら晩酌しますよ、ダーリン?」
「おあっ! 出たな小悪魔モード……。これ以上俺の事メロメロにしてどうすんだ」
じゃれ合いながら二人は白い道を行く。
先ほどまでの寒さが嘘のように体も心も温かい。
「でも晩酌よりもお前が欲しいんだ」なんてキザな台詞は酔ってないと言えないのでは、と首を傾げながらも、真紘は背伸びをして愛する夫の耳元で喜んでと囁いた。
新婚二人を見送りヒラヒラと手を振った麻耶は、大きなため息をついた。
持っていたワイングラスがカツーンと音を立ててテーブルに当たる。
野木は真紘と重盛が座っていた向かい側の席にグラスを持って移動した。
「前々から片鱗はあったけど、激重彼氏じゃん。取らないって、あんな綺麗な子と並ぶ勇気ないって……!」
「もう彼氏じゃなくて激重旦那っすよ。それに今日は俺達に牽制してるっていうか、早く二人きりになりたかったんだと思います」
「ああ、そうだった……旦那か。重盛君ってば王城でも四方八方に威嚇してるし、結婚したのに全然余裕ないじゃない。どうして?」
「それは結婚してから真紘君がもっと可愛くなったからじゃないっすか。幸せオーラのせいか、ずっと聖母みたいな顔で誰に対しても微笑みかけるんすよ。これまでは不可侵の超絶美人って佇まいでしたけど、王都に戻ってから雰囲気が柔らかくなった~って広まっちゃって。今じゃ色んな人から話しかけられたり食事の誘いがあったり」
今月に入ってからは、同世代の貴族に話しかけられても逃げ出さずにしっかり対応している姿を何度も見てきた。ここ数週間はずっと王城にいる野木と一対一で魔法の練習をしていることが多いので、より話しかけやすいのだろう。
休憩時間を見計らって、わざわざ差し入れを持ってくる者までいる。
勿論、その噂は重盛にも届いていて、野木は真紘の護衛をするように任命されていた。
数多の下心と好意に気付いていないのは、人脈づくりの一環と奮起する真紘だけだった。だが、それも好んで交流しているわけではない。自らを鼓舞するため、震える手で指輪を擦っている姿を見れば重盛の気も多少落ち着くのではないか、と野木は思ったが、そんな場面に遭遇していればとっくの昔に城壁の一、二枚は破壊されているだろう。
「なるほど。じゃあ今日は二人そろって久しぶりの休みだったわけ」
「やる気になってる真紘君を止めるわけにはいかなし、かといって独占欲はあるしでヤキモキしてるんすよ」
「勇也君、やけに詳しいね」
「電話でめちゃくちゃ愚痴られるんす。俺と結婚したのは広まってないのに、話しかけやすくなったことだけ広まってるのおかしくないかって。でもまさか真紘君があんなにアニキに対してげろ甘になってるとは思わなかったっすけどね。もしかしたらあれくらいが丁度いいのかも」
「私達が慣れた方が早いってこと?」
「そうなるっすねぇ」
残りの料理を平らげると、野木はそういえばと切り出した。
「麻耶さんはどうなってんすか? 例の彼氏さんと」
「だから彼氏じゃなくて……。勇也君、すっかり恋愛相談窓口みたいになってるわね」
「周りを巻き込んだ挙句ドデカい失恋をした彼女ゼロの恋愛未経験男っすけど」
「人の話を聞く男はいい旦那になるよ。マシンガント―クのあいつとは大違い」
「アニキもわりとマシンガンじゃ?」
「あれはまた別よ。真紘君専用の愛を歌う詩人」
確かに、と野木が吹き出すと麻耶も釣られてケラケラと笑い出した。
身なりの良い男が麻耶を呼んでいると店員が個室の扉を叩くまで、二人はひたすら酒を酌み交わした。
野木も麻耶も翌日に酒が残るタイプではないが、一番酒に強いのは重盛だろうという意見は一致した。少なくとも野木と麻耶は酔ったふりをしなければならないほど強くはない。
麻耶は帰り支度をしながら疑問を口にした。
「真紘君はどうかしらね。お肌も羨ましいくらい白いからすぐに赤くなりそうだけど」
「聞いたことないっすね。俺はもう飲んじゃってますけど、真紘君は誕生日まで飲まないことにしているらしいんで、来年のお楽しみかも」
「それは四人で飲める日が楽しみ。でも赤らんだ真紘君を誰にも見せたくないって旦那が暴れそうな気もする」
「怖いこと言わないでくださいよ。模擬戦ですら未だにこてんぱんにされてるんすから」
「あははっ、ごめん、ごめん。じゃあ私もそろそろ行くね。勇也君もよいお年を」
「はい、よいお年を」
麻耶を迎えに来た自称婚約者の男も嫉妬深いことは彼女から聞いて知っているので、野木は鉢合わせないように遅れて店を出ることにした。
重盛の舎弟として鍛えられた配慮がここでも生かされている。自ら進んで当て馬になる趣味はない。
火照った頬を仰ぎながら、野木はグラスの残りを飲み干した。
「俺もまた好きな人とか出来んのかなぁ」
王城にも女性のメイドや騎士はいるが、同世代で目標を持って働いている姿は格好良いなという尊敬する気持ちが先行する。
事件を起こした日を最後に、フミとは会っていない。
謝罪の手紙は送ったが、直接会って謝りたいというのは、自身の罪を軽くしたいというエゴでしかないからだ。
現在、フミは王都を離れて神官のリーベと共に地方の孤児院や病院を巡っていると小耳に挟んだ。
今では好きになってほしいという欲求も消え去り、ただただ、好きになった人には幸せでいて欲しいと願うばかりだった。
その気持ちに気付いた瞬間、この恋は終わったのだと自覚した。
失恋と引き換えに得たものは沢山ある。
地球で活躍していた洗剤のコマーシャルが似合う清潔感のある男の容姿と、親友二人に頼れる姉御、祖母と祖父のような人との絆。誰か一人に愛されるよりも、自身の人生において大きな財産となった。
夏の終わり頃から、野木はアテナと食事を共にするようになった。
会話の内容は、今日はこんな訓練をしたとか、市場の隅に美味くて安い穴場の店を見つけたとか、ほぼ孫と祖母の日常といったものだ。
そんな日常を送っていると、アテナの食事が終わるのを待ち侘びていたかのように臣下が助けを乞うてくる日もある。野木も職務に同行させられることも少なくない。
しかし、それらの多くは十九歳の青年が果敢に首を突っ込めるような内容ではなかった。できることは、分からないながらにも耳を傾けることくらいだった。
多忙な国王の側にいて良いのか、これが贖罪になるのか、自分が救世主だからぞんざいな扱いができないだけではないのか――と困惑する中、ある日、野木は想定もしていなかった申し出を受けた。
「こんな学も器量も何もない俺がアテナ様の養子になって王子様ってのは、恋を実らせるより難しいんじゃないの……」
誰にも相談できない進退をぽろりと溢す。
返事は焦らなくて良いと言われている。
もっとこの世界を知るため、旅に出てみてはという提案付きだ。
現在は自ら志願した住み込みの騎士として働いているが、お役御免になったということではないという。
王子様らしい外見と中身が伴っている真紘を養子に迎えるべきではという疑問は、口にする前に氷解した。
アテナも同じ長命の真紘が国を支える王になればと思わなかったこともないが、タルハネイリッカ領に発つ前に重盛から釘を刺されたらしい。
真紘が自らの意志で政治に関わりたいと言い出したのなら自分も喜んで手伝うが、恩のある人に引き受けて欲しいと言われれば、きっと責任感の強い彼は最終的に自身の気持ちを押し殺してでも首を縦に振ってしまうから、と――。
その話を聞いて野木も同じことを思った。
だからといって尊敬する二人の次席が自分なのはおかしな話ではないか、とも思う。
この国を愛する人は他にもいる。できるできないに関わらず、全くの別人に姿形を変えてもらった自分の寿命すら分からないのだから、無責任に引き受けるわけにはいかない。もしかしたらアテナよりも先に逝ってしまう可能性だってあるのだ。
舌先に残るアルコールはやけに苦く、悪酔いしそうな予感がした。野木はぼおっとした頭で帰り支度を始める。
上着を羽織り、割り勘した伝票を店員に渡すと、お会計は公爵様からいただいておりますとにこやかに告げられた。
「公爵? ああ、タルハネイリッカ公爵か……ってことはアニキか? 真紘君か? いや、どっちだよ。ややこしいな!」
一人で腹を抱えて笑う野木は「家族が増えるのもいいのかな」と呟いて王城へと帰っていった。
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