【完結】受付オメガの好きな人

笹川流宇

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夏-蜜月-

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 恋人の気持ちに報いるために、朔も浴衣を脱がせやすいよう腰を少し浮かせる。
 最後まで致すのであれば、生まれたままの姿で愛し合いたい。
 しかし明るい場所で変貌を遂げた身体を誰かに晒すのは初めてのこと。少しだけ違う緊張が混ざる。
「帯がリボンになっていて可愛いね。プレゼントをちょっとずつ開けているみたいでワクワクするなぁ」
「意外と簡単ですよ。有平さんが喜ぶかなと思って、ラッピングみたいにしてみました。会社でも差し入れのお菓子の包装を開けるときいつも目がキラキラしていて楽しそうなので」
「はは、バレてる?」
「そういうところが可愛いから、あっ……」
 解かれた帯と重なっていた布がはらりとシーツに落ちる。

 臍から陰茎にかけて、産毛すら生えていない滑らかな肌。
 すらっと長い指が臍から下に向かってつぅーっと撫でられて、骨盤の形を確かめるように鼠径部へとするっと吸い込まれて行く。
 芯の通った朔のものは有平ほど立派な大きさではないが、男性にしか付いていないもので、ピンク色の先っぽはすでに濡れてテカテカと光っている。
 くらくらする光景に耐えられないと、朔は手のひらで目元を覆った。
 喋らなければ良いものを、羞恥心を誤魔化すためについ饒舌になってしまう。
「俺、ヒートが遅かったせいなのか、体の発育も遅くて全体的に体毛が薄いんです。男性らしさもないのに女性みたいに胸があるわけでもないのが申し訳ないんですが、ちゃんとできます……」
 誰かと付き合ったこともないし、性的な媒体に触れたこともない。そういう禁欲的な環境で育ってきたが、中高の性教育で学んだことや、幼い頃に一緒に風呂に入っていた父親と祖父の姿を思い出すと、自分の体は随分違うように思う。
 オメガなら普通なのかもしれないが、男性としてはコンプレックスでもある真っ新な体だ。有平はどう思うのだろうか。
 朔が横を向いて膝を曲げて体を抱きしめるように縮こまると、有平のフェロモンが爆発的に濃くなった。
 フーッフーッと荒い息を吐いて、瞳孔が完全に開いている。
「あ、有平さん?」
「朔、ごめん……」
「え、なに? 匂いがすごく濃くなって――う、わあああぁ!」
 体を引き寄せられると、ぷっくりと主張していた乳首にじゅうッと吸いつかれた。もう片方の乳房は些か粗々しく揉みしだかれて、時折尖った粒をピンっと弾かれる。
 薄い身体の割に柔らかな肉感のある胸は有平の手ですっぽりと覆われてしまうサイズだが、一般的な男性よりも少しばかりふっくらしている。
 オメガの体は熱くなればなるほど熟れる果実のように甘い匂いを発し、アルファの本能を刺激する。
「はぁ、あっ、あ、んぁっ!」
 ぱっくりと開いた両足は有平の身体を挟み込んで、快感の波に合わせてシーツの上を滑る。嬌声を上げながら腰を有平のものに擦りつけるようにくねらす。

 まさか裸を見せただけで有平の方が先に理性を飛ばすなんて思いもしなかった。自身に興奮してくれた、その事実だけで達してしまいそうなほど、朔も興奮している。
 胸を弄られながら、下腹部に付くほど勃ち上った漲りを握られる。
「ああ、あっ、有平さっ、フェロモンでちゃ、う、発情しちゃう」
「もう我慢いらないから、全力で誘って」
「はあ、あ、あっう、きもちいいの、ありひ、ら、さん……乳首たくさん舐めて、かじって、くださ、ンんっ!」
「いいよ、いっぱい気持ちよくなろ」
 叫ぶように懇願してしまったせいか、希望以上の刺激が与えられる。
 全身がふやけてしまうのではないかと思うほど舐めて、甘嚙みされて、弄られた。
 強すぎる快感から逃れるために身を捩ると胸の突起をぐりっと圧し潰されて動きを封じされる。
「ぁん! い、く……イっ、あっあああッ!」
 もう片方の有平の手が朔の張りつめた鈴口をカリッと引っ搔いた瞬間、朔はピュッピュッと白濁を勢いよく散らした。
「はあ、はぁ、あぁ……俺だけ、先にイっちゃった、すみ、ませ……」
「朔、もっと……」
「なにして――゙ああぁッ⁉ んンあああ~~ッ! いやぁ、だめ、だ、あっひぃ、アッ!」
 強引に腰を持ち上げられたかと思えば、精液を出し切っていない先端に有平の舌先が触れて、熱い口内に丸っと飲み込まれる。
 痛みと錯覚するほどの強すぎる快感。吐き出して柔らかくなったはずの漲りは有平の口腔で硬度を取り戻して、すぐに根本からパンパンに腫れあがった。
 じゅぽじゅぽと吸われ、有平の口から涎や精液が沫だって零れ落ちる。
 両足を有平の肩に乗せられ、肩と肘でなんとか踏ん張る朔は、いやいやと首を横に振った。
「やあぁああ! うゔあッ! きたなっ、ああ!」
「いい匂い、綺麗だ」
 下から見上げた朔は、自身の股間に顔を埋めた有平と目が合う。
 この人は本気で綺麗だと言っている。はしたない、情けない、性欲に支配されたオメガの身体を綺麗だと――。
 そう感じ取った瞬間、ゾクゾクっと快感が全身を駆け巡って、再び体がドクっと跳ねた。
「はへっ、で、るッ、でる、でちゃう、あ、ひン、ひゃ、あぁああああ~~――ッ!」
 最後まで抵抗するも力では到底敵わず、性器を丸ごと呑まれた状態で、有平の喉の奥に勢い良く射精してしまった。

「も、もうやらぁ……でない、でないからぁ……ひっぐっ」
 ずろろっと音を鳴らして朔のものを吸い尽くすように、最後まで丹念に口を窄めていた有平だったが、再び朔の男根が硬さを取り戻したことで満足したのか、ちゅぽんっといやらしい音を鳴らして口を離した。
 朔は、口から引き抜かれた際にも「ああんっ」と情けない声を漏らした。
 不運なことに、本気でヒートを起こしても記憶はしっかり残るタイプらしい。発情期に一人で部屋に籠っている時も同じように記憶が残っているので、こればかりは諦めて受け入れるしかない――とは言え、これは恥ずかしすぎる。
「うう、うわ、飲まれたぁ! 降ろしてぇ、こんな丸見えなのさすがに恥ずかしいです!」
 自分だけ二回も、しかも口淫されて達するなんて。三回目が始まらないように体勢を立て直したいが、腰はがっしり掴まれたままで、まろびた尻の曲線をなぞるようにべろりと舐められる。後孔は天井を向いたままで橙色のライトに照らされている。
 きゅっと収斂する蜜壺から感じている証でもある愛液が流れて、シーツにとろっと糸を垂らすようにして落ちた。

「がっついてごめん……」
 飛んでいた理性が戻って来たのか、有平は朔を丁寧にベッドに下ろすと、朔の胸元や腰元に散った華をなぞった。
 ぐすんと鼻を啜ると、朔は力の入らない手で有平の太ももをぺちぺちと叩く。
「プツンと理性飛んじゃって驚きました。俺もあてられてはしたなく喘いでしまいましたけど……。有平さん、もう大丈夫ですか?」
「申し訳ない。朔の体が想像以上に綺麗で、これからこんな人と番になるんだって思ったら、朔の全身舐めて最終的に精液ごくごく飲んでた。怖かったよね……」
「怖くなかったですけど、申し訳なくて……というか、ごくごくなんて表現止めてください! そんなに出してないですよ!」
「そうかな? 結構な量だったと思うけど」
 酔っていない有平も、ラットを起こしても記憶が残るらしい。そんなところも似るなんて、相性の良さにも限度があるだろうと朔は苦い表情を浮かべる。
「ばか! ほら、お水飲んでください、美味しいものでもないですから」
「ええ~。匂い以上に、直接朔を味わえるなんて最高だったのに。ずっと食べちゃいたいと思ってたから」
 比喩表現ではなく本当に食べられるとは思わなかった。
 悦悦と惚けた有平は、舌で口の端に残った朔の白濁を舐めとってうっとりとする。
 手汗で押し問答していた時も、ちょっと変態くさいと思っていたが、ここまで愛されているのも考えものだ。
「……は、うああ」
「はは、そんなに嫌そうな顔しないでよ」
 ミネラルウォーターをぐいぐい押し付ける朔は、眉間にとんでもない数のしわを刻む。
「キスもまだまだしたいので、お願いだから口を濯いでください!」
「わかったよ。膨らんだ頬っぺたもまんまるでりんごみたい。本当に可愛い」
「反省してます? というか、もう可愛いなんて歳じゃ……」
「年齢なんて関係ない。いつもは凛としていてカッコいいのに、僕の前ではこんなに愛らしくなっちゃうんだなと思うとたまらなくて」
「有平さんだって、いつもはふにゃふにゃニコニコしているのに、えっちになるとぎらついた目で強引になるなんて、すごいギャップ。俺だけになんだなと思うとドキドキしすぎて苦しいです……」
 震える長い睫毛は、有平の庇護欲を掻き立てる。
 視界がふっと暗くなって、ちゅっちゅと啄むようなキスを二回。少し体が離れただけなのに、目の前に有平はいるのにもう恋しい。何度射精しても収まらない疼きと乾き。これがオメガの体で、今の自分だ。

 朔は、大判の枕を緩衝材にして背中を預けると、両足を曲げて自身の後孔に指を這わせる。穴を広げるように薬指をくにっと曲げて、ここに欲しい、早く見て、埋めて、と有平を視線で挑発した。
「前はもういいから、早く後ろ触ってください……」
「視覚からの刺激も強すぎるよ……。どこでそんなの覚えてきたの」
「理性飛ばしても噛んでくれないから、ここも切なくて」
「……お腹とうなじは、特にデリケートだから大事にしないと。負担が掛かるのは朔だし、理性がなくても無意識に避けていたのかもしれない。酷くしたくないんだ」
「有平さんらしい優しい理由で俺のうなじは無事だったんですね。大事にしてくれてありがとうございます。だけどもう避ける理由ないから、俺がもう限界……お願い、もう繋がりたい……」
「ああ、僕もだよ……。痛みや不快感があったら遠慮せず教えてね」
「うん、うん、はやく!」
 太ももを滑るように撫でた指先がたどり着く先を視線で追う朔は、後孔につぷりと埋め込まれた中指を見て「ああぁ!」と悦びの声を上げた。
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