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腐ってやがる
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結局あの後激怒したターニーさんが動かなくなったクラリスさんを抱えて走って家に帰っていった。屋敷に戻れば設備が整ってるから多分治せるらしい。
しかし完璧超人だと思われていたアルグスさんにこんな弱点があったとは。この人に機械の類触らせたら絶対いけないんだな。
落ち込んだアルグスさんはトボトボと自室に帰っていき、他の人も昨日の疲れがまだとれていないようでそれぞれ自室に戻り、リビングには私とアンセさんとイリスウーフさんが残された。
「それにしてもびっくりしたわね……まさかこんなことになっていたなんて」
アンセさんが朝食のパンを齧りながらそう呟いた。
私も本当に驚きの言葉しか出ない。このカルゴシアとオクタストリウム、下手すれば大陸全土を巻き込んだ大事件に発展する可能性がある、ドラゴニュートの侵略計画。ムカフ島にそんな謀略が潜んでいたとは。
「まさかクオスが男だったなんて……」
そっちですか。
まあ確かにそっちも驚きましたけど。
「私ね……こう、なんだろうな……」
ゆっくりとアンセさんが口を開く。なんだろな? これはなんとなくで、私の勘なんだけど、凄く聞いても聞かなくてもどうでもいい話のような気がする。
「男同士の恋愛に、凄く興味があるのよ」
やっぱり聞かなくていい話だった。
「あっ、でも勘違いしないでね。決して腐女子とか、そういうんじゃないわ。ただ、こう……男同士の恋愛に凄く興味があるってだけで」
二回も言わなくていいです。
「アンセさん」
ここはひとつ、リトマスホモ試験をしてみることにする。
「『攻め』の反対語って、なんだかわかりますか?」
「……? 『受け』、でしょ?」
『守り』ですよ。この腐女子が。
「ともかくね。私今までクオスがドラーガの事を好きなの、『物好きな奴だな~』とか『あんな奴のどこがいいんだろ』とか思ってて……まあとにかく正直言えば応援できないと思ってたんだけどね?」
まあそれには同意します。クオスさんのためにもならないと思います。
「なんかこう……俄然応援する気がわいてきたわ!」
さいでっか。
「できれば、二人が愛し合う所を生で観察したいと思うくらいに!」
こっちは別にアンセさんの特殊な性癖の暴露なんて望んでないんですけど。部屋を汚さなければどうでもいいです。
「なんでそんなことを……男同士でウコチャヌプコロしても子供は出来ないのに……」
「ウコチャヌプコロ?」
「古い竜言語で、元は『お互いをよく知る』ということ、性交の隠語です」
イリスウーフさんの竜言語講座、勉強になるなあ。
「男は女とウコチャヌプコロするのが自然の摂理です。男同士でウコチャヌプコロしてもむなしいだけ……きっと後悔することになります」
「それは違うわ、イリスウーフ」
なんか熱い感じのアンセさん。この話いつまで続けるのか。
「男と女のウコチャヌプコロは子供を残すため。所詮は生存本能にプログラムされたウコチャヌプコロに過ぎないわ。でも男同士のウコチャヌプコロは違う。ただ純粋に、愛を確かめ合うためにウコチャヌプコロをするの。それこそが真実のウコチャヌプコロなのよ……」
「ウコチャヌプコロ……」
「え? じゃあアンセさんは女の人とウコチャヌプコロするんですか?」
私が尋ねるとアンセさんはそれまでのにやにやした薄ら寒い笑顔を引っ込めて真顔になった。
「……あてん話は今どげんでんよか」
なんて?
「でもまあ、そうね。言っておいた方がいいかもしれないわね……私は……アルグスとウコチャヌプコロしたいの」
!?
え? 新事実! アンセさんはアルグスさん狙いだったの!? まあ、イケメンだし金髪碧眼だし、細マッチョだし、勇者だし、それは分からないでもない! あんな男の人、女性だったら誰もが憧れちゃうもん!
「私ね……今年で29歳なのよ……もう崖っぷちなの。このムカフ島攻略の間に……キメるつもりよ!」
「え? いやいや待って下さいよ! アンセさんウィッチですよね? 不老長命の! だったら別に崖っぷちとか関係ないんじゃないんですか!?」
私がそう尋ねると、アンセさんは眉間にしわを寄せて親指の爪を噛んだ。
「確かに……そう言われてるけれど、あなた実際他のウィッチに会ったことあるの?」
まあ……ない。そもそもがウィッチの人って森や山の奥で隠者みたいな生活してる人が多いらしいし、お目にかかる事なんてエルフ以上にない。
「私が精霊と契約してウィッチになったのは三年前……正直言って私も他のウィッチに会ったことはないわ……だから、本当にウィッチが不老長寿なのかって、よく分からないのよね」
なるほど。
「不老だと思って油断してて、ある日ふと鏡を見てみたら、首元や目元に深いしわが……昨日も、そんな悪夢を見て夜中に目を覚ましたわ」
こりゃ相当重症ですわ。
「ダメだったことに気付いてからじゃもう遅いのよ。私は、結婚して幸せな人生を歩みたいの! ウェディングドレスだって着たいの!
だから、もしいいカンジの雰囲気になったら、あなた達も、私のウコチャヌプコロをサポートして……ッ!!」
「ウコチャヌプコロ……」
「そうよ! その代わりに私もクオスとドラーガのウコチャヌプコロを全力でサポートするわ。ローションとかも常備する」
それ私になんかいいことあるんですかね。できれば関わり合いになりたくないんですけど。
その時がちゃりとドアが開けられた。
「はぁ、なんとか治りました……」
「ほ、ホントにどうなるかと思った」
ターニーさんがクラリスさんを抱っこして戻ってきた。良かった。何とか元に戻ったみたいだ。アンセさんは二人の姿を目視してつかつかと歩み寄っていってターニーさんに話しかけた。
「ねえあなた。『アルグスさんとウコチャヌプコロしたいです……』って言ってみてくれないかしら」
「ヤですよ気持ち悪い。なんなんですかそのギラギラした目は」
「ね、お願い。行ってみてくれるだけでいいから! 一回言ってくれたら満足するから」
「絶対ヤです。息が荒くて気持ち悪いです」
なんか……アンセさん、最初は格好いい大人の女性だと思ってたんだけど、どんどんダメな人になってくな……
私はイリスウーフさんと顔を見合わせて、ため息をついた。
「どう思います?」
「ダメだと思います」
しかし完璧超人だと思われていたアルグスさんにこんな弱点があったとは。この人に機械の類触らせたら絶対いけないんだな。
落ち込んだアルグスさんはトボトボと自室に帰っていき、他の人も昨日の疲れがまだとれていないようでそれぞれ自室に戻り、リビングには私とアンセさんとイリスウーフさんが残された。
「それにしてもびっくりしたわね……まさかこんなことになっていたなんて」
アンセさんが朝食のパンを齧りながらそう呟いた。
私も本当に驚きの言葉しか出ない。このカルゴシアとオクタストリウム、下手すれば大陸全土を巻き込んだ大事件に発展する可能性がある、ドラゴニュートの侵略計画。ムカフ島にそんな謀略が潜んでいたとは。
「まさかクオスが男だったなんて……」
そっちですか。
まあ確かにそっちも驚きましたけど。
「私ね……こう、なんだろうな……」
ゆっくりとアンセさんが口を開く。なんだろな? これはなんとなくで、私の勘なんだけど、凄く聞いても聞かなくてもどうでもいい話のような気がする。
「男同士の恋愛に、凄く興味があるのよ」
やっぱり聞かなくていい話だった。
「あっ、でも勘違いしないでね。決して腐女子とか、そういうんじゃないわ。ただ、こう……男同士の恋愛に凄く興味があるってだけで」
二回も言わなくていいです。
「アンセさん」
ここはひとつ、リトマスホモ試験をしてみることにする。
「『攻め』の反対語って、なんだかわかりますか?」
「……? 『受け』、でしょ?」
『守り』ですよ。この腐女子が。
「ともかくね。私今までクオスがドラーガの事を好きなの、『物好きな奴だな~』とか『あんな奴のどこがいいんだろ』とか思ってて……まあとにかく正直言えば応援できないと思ってたんだけどね?」
まあそれには同意します。クオスさんのためにもならないと思います。
「なんかこう……俄然応援する気がわいてきたわ!」
さいでっか。
「できれば、二人が愛し合う所を生で観察したいと思うくらいに!」
こっちは別にアンセさんの特殊な性癖の暴露なんて望んでないんですけど。部屋を汚さなければどうでもいいです。
「なんでそんなことを……男同士でウコチャヌプコロしても子供は出来ないのに……」
「ウコチャヌプコロ?」
「古い竜言語で、元は『お互いをよく知る』ということ、性交の隠語です」
イリスウーフさんの竜言語講座、勉強になるなあ。
「男は女とウコチャヌプコロするのが自然の摂理です。男同士でウコチャヌプコロしてもむなしいだけ……きっと後悔することになります」
「それは違うわ、イリスウーフ」
なんか熱い感じのアンセさん。この話いつまで続けるのか。
「男と女のウコチャヌプコロは子供を残すため。所詮は生存本能にプログラムされたウコチャヌプコロに過ぎないわ。でも男同士のウコチャヌプコロは違う。ただ純粋に、愛を確かめ合うためにウコチャヌプコロをするの。それこそが真実のウコチャヌプコロなのよ……」
「ウコチャヌプコロ……」
「え? じゃあアンセさんは女の人とウコチャヌプコロするんですか?」
私が尋ねるとアンセさんはそれまでのにやにやした薄ら寒い笑顔を引っ込めて真顔になった。
「……あてん話は今どげんでんよか」
なんて?
「でもまあ、そうね。言っておいた方がいいかもしれないわね……私は……アルグスとウコチャヌプコロしたいの」
!?
え? 新事実! アンセさんはアルグスさん狙いだったの!? まあ、イケメンだし金髪碧眼だし、細マッチョだし、勇者だし、それは分からないでもない! あんな男の人、女性だったら誰もが憧れちゃうもん!
「私ね……今年で29歳なのよ……もう崖っぷちなの。このムカフ島攻略の間に……キメるつもりよ!」
「え? いやいや待って下さいよ! アンセさんウィッチですよね? 不老長命の! だったら別に崖っぷちとか関係ないんじゃないんですか!?」
私がそう尋ねると、アンセさんは眉間にしわを寄せて親指の爪を噛んだ。
「確かに……そう言われてるけれど、あなた実際他のウィッチに会ったことあるの?」
まあ……ない。そもそもがウィッチの人って森や山の奥で隠者みたいな生活してる人が多いらしいし、お目にかかる事なんてエルフ以上にない。
「私が精霊と契約してウィッチになったのは三年前……正直言って私も他のウィッチに会ったことはないわ……だから、本当にウィッチが不老長寿なのかって、よく分からないのよね」
なるほど。
「不老だと思って油断してて、ある日ふと鏡を見てみたら、首元や目元に深いしわが……昨日も、そんな悪夢を見て夜中に目を覚ましたわ」
こりゃ相当重症ですわ。
「ダメだったことに気付いてからじゃもう遅いのよ。私は、結婚して幸せな人生を歩みたいの! ウェディングドレスだって着たいの!
だから、もしいいカンジの雰囲気になったら、あなた達も、私のウコチャヌプコロをサポートして……ッ!!」
「ウコチャヌプコロ……」
「そうよ! その代わりに私もクオスとドラーガのウコチャヌプコロを全力でサポートするわ。ローションとかも常備する」
それ私になんかいいことあるんですかね。できれば関わり合いになりたくないんですけど。
その時がちゃりとドアが開けられた。
「はぁ、なんとか治りました……」
「ほ、ホントにどうなるかと思った」
ターニーさんがクラリスさんを抱っこして戻ってきた。良かった。何とか元に戻ったみたいだ。アンセさんは二人の姿を目視してつかつかと歩み寄っていってターニーさんに話しかけた。
「ねえあなた。『アルグスさんとウコチャヌプコロしたいです……』って言ってみてくれないかしら」
「ヤですよ気持ち悪い。なんなんですかそのギラギラした目は」
「ね、お願い。行ってみてくれるだけでいいから! 一回言ってくれたら満足するから」
「絶対ヤです。息が荒くて気持ち悪いです」
なんか……アンセさん、最初は格好いい大人の女性だと思ってたんだけど、どんどんダメな人になってくな……
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「どう思います?」
「ダメだと思います」
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