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大学

後輩たちがいるなか布団の中で泣く

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浪人を経て、大学生になれた。
大学では吹奏楽部やほかのサークルには入らず、学業に専念するわけでもなく。

その代わりに、高校吹奏楽部にはOBとしてちょくちょく顔を出すようになった。

お目当は、言わずもがな指揮者のS先輩に会うためだ。
家も近いことから、部活が終われば2人で電車に乗って帰った。
楽しい!

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そしてこんな生ぬるい生活が続いて、私は大学2回生になった。

母校の吹奏楽部ではお盆を過ぎた頃に4泊5日の夏合宿に行く。OBも付いていくことがあり、私も参加した。
私以外にも一つ下、二つ下の後輩も大学生になっているので、同じくOBとして参加する人もいた。

S先輩はもちろん指揮者として参加しており、一つ屋根の下過ごせるのがとても良かった。普段より多くの時間を共有でき、ご飯を食堂で一斉に食べるときなんかも、横に座ったり。

別に何か付き合えるような具体的なアクションがあるわけではないが、「もうあとは成り行きで付き合えるもんだ」と思っていたから、ゆるゆるでふわふわな、そしてそわそわな時間を過ごした。

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けれど、合宿4日目の夜。

夕飯を食べて私はOG(女性のOB)に割り当てられた部屋で、ほかのOGの後輩たちとまったり過ごしていた。布団を軽くかぶり、ごろごろしながら、雑談や現役の高校生の部員のだれそれが付き合ってるという話で盛り上がった。

けれどそのとき、ある1人のOG ーー私の二つ下の後輩でFちゃんーーがたまたま部屋にいなかった。
いなかったから、Fちゃんの話題が出てきた。

Fちゃんと仲の良い子がこう言った。

「最近、Fって右手の薬指に指輪はめ出してるの気づきました?あれってS先輩が贈ったそうですよ」

え、なにそれ。動悸がした。




他の子達は盛り上がってる。私も自然にその話題に入って詳細を聞きたかった。けれど思わず布団の中に潜った。

それは事実なのか。いつの話なのか。
そして聞かずもがなの、S先輩とFちゃんは付き合っているのか。を聞きたかった。

でも、どんどん涙が溢れて、声を出したら泣いていることがバレてしまう。布団の中でもぞもぞ動きながら、ただひたすら涙を拭うしかなかった。



つづく~
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