異世界人の父は筋力がありません。勿論、息子の俺も筋力が無く武器を持てません。武器を持てないハンターの成り上がり。

やーま

文字の大きさ
上 下
28 / 29

ローランド国へ

しおりを挟む

 
 「異能者差別を無くそうと動いていたのは確かにそうだ。
 だが、あんなのはただの自己満足だ。お前を棄てた事を後悔して、少しでも自分の中で罪が軽くなるようにやったことだ。
 あんな事で私の罪が消えるものか!」

 「いいえ、陛下。
 例えそれが自己満足だったとしても、私は救われました。
 自分が異能者だと自覚してから、バレてしまったらどうしようと思って毎日毎日怯えていました。
 そんな私が今はこうしてなんの気兼ねもなく外を歩いて、なんの心配もなく働けているんです。
 私は、異能者でありながら日常を過ごすことができました。それだけで私は幸せでした」

 私は精一杯笑った。
 私は政治とかよく分からないけど、私からしたら陛下は全力で頑張っていたと思うから。
 そんなに自分を責めて欲しくありません。

 「違う、違うんだ……あれは、私の……」

 「私が9歳の時、孤児院があった場所一帯の見回りが強化されました。
 多分陛下が私の安全を確保するためにしてくれた事だと思います。それで、見回りをしていた騎士の人に聞いたことがあるんです。
 『異能者についてどう思いますか』って、そしたら、『異能者も普通の人間と何も変わらないよ。どちらも人間。どちらが優れているってこともないし劣っていることもない。
 僕は騎士として異能者でも異能者でなくても守ってみせるよ』って言われたんです」

 陛下の目に涙がたまっていた。

 「私にはそれがたまらなく嬉しかったんです。
 だって、国の騎士がそう言ってくれたんですから。だから陛下、私は陛下のことを恨んでいません。むしろ感謝しているくらいです」

 「わ、私は恨まれる事はあっても感謝されることなどーー」

 「父上。仮に父上が自己満足でやっていたとしても相手が感謝してくれていると言うのならそれでいいじゃありませんか。
 それに、セラさんの14年間は戻ってこないけど、棄てる選択をしてしまった事を後悔しているのならこれからが重要なんじゃないですか?」

 「そうですよ父さん。もうあの会場で自分の娘と言ってしまったんですからいつでも会えますしね」

 「ぐ、グラン……アベルト……」

 陛下は息子達の言葉を聞いて少し納得したみたいだけど、まだ完全に納得しているわけじゃないみたい。
 私は感謝してるからもういいのに。

 「異能者の私の事を忘れずに、異能者の私の為に14年間も頑張ってくれてありがとう。お父さん」

 「うっ……うっ……」

 少しだけ堪えた後、陛下は盛大に泣き出した。もうそれはここにいる私達だけの秘密にしないといけないくらい。
 絶対に他の人には見せられない。一国の王が子供のように泣いているんだから。

 それにしても、お父さんかぁ。

 私が今日口にした言葉は14年間生きてきて初めて使った言葉だった。

 これからも言えるといいなぁ。
 だって、家族がいなかった私にはこの言葉を使う事が堪らなく嬉しいから。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

Link's

黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。 人類に仇なす不死の生物、"魔属” そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者” 人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている―― アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。 ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。 やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に―― 猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!

処理中です...