異世界人の父は筋力がありません。勿論、息子の俺も筋力が無く武器を持てません。武器を持てないハンターの成り上がり。

やーま

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旅立ち

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 「よしっ!こんなもんかな!」
 
 あの後、親父は本当に扉を切ろうとした為ガルダは必死に止めた。親父も一度決めたらなかなか曲げない頑固な性格なのだ。しばらく言い争いをしていたが、何とか親父を説得し詰め込んだ荷物を一度全て出し、必要最低限の物だけをバックに入れた。

 親父はなんだか不満そうにバックを見つめている。
 「そんだけでいいのか?」

 「これだけで充分だっての!取り敢えず、最初はガンバルム国近辺の採集依頼だけ受けて、アイテム準備や金貯める予定だし」

 「ゆくゆくはファーゼストタウンには行くつもりなのか?」

 「あぁ…あそこが1番考えられるからな」

 「本当に探しに行くのか?星屑の塔を」

 「親父の話しが嘘かどうか確かめる為になっ。それにもし本当に居たら、今までバカにしてきた奴らがどんな顔するか見たいしな!!」

 「悪いな…お前には俺のせいで、沢山嫌な思いや苦労かけたな」

 「何だよ急にっ畏まりやがって」

 意外だった。
 親父はファーゼストタウンに行く事を反対すると思っていた。
 
 ファーゼストタウンーー最果ての街
 かつて古の時代、古代文明を築いた先住民グラン族が生活をしていた都市。

 昔、グラン族はその大陸に降り立った。

 グラン族は移動民族だったんだが希少鉱物が成り続ける場所を発見。
 その地では、見た事もない沢山の希少鉱物が至る所に有った。

 採掘しても数週間でまた上質な鉱石が生成するまさに神の様な地。
 そして彼らは、その地の鉱物が建築物に適している材質ということを発見する。
 その地に定住し、長い年限を掛け古代文明を築き挙げた。
 元々グラン族は知性が高かった。
 彼らは採掘場などを作り、沢山の鉱物を採掘していた。地中に深ければ深い程、上質な鉱石が成っている為、深く掘り進めていた。
 ある日、どれだけ掘っても鉱石しか無かった地中に肉の様な壁が出現。

 彼らは不思議に思ったが、そのまま掘り進めた。
 しかし彼らが掘っていたのは『グランドキャリオン』の背中の甲殻の岩盤だったのだ。

 創造の神と崇められたモンスター『グランドキャリオン』
 その生態は、今も謎に包まれている。
 石獣種 鉱石類
 寿命 不明
 体長 不明 
 主食 大地
 特徴 本体其の物が大陸と一つになっている。別名 生きる大陸
 
 生涯のほとんどを地中での睡眠で過ごす。
 
 余りに巨大すぎる体格故に地中から背中部分のみが地上に出ている。
 背中は岩盤の様になっている為、モンスターの背中だとは誰も気付かない。
 本体全体を見た者はこれまでに一人も居ないと言われている。

 大地からの栄養を取り込み、不純物だけを取り除き背中から分泌する。
 分泌された物質は純度の高い鉱石として形成される。恐らく背中を敵から身を守るためだと考えられている。

 『グランドキャリオン』は肉を抉られた事により睡眠から目覚めた。
 生きる大陸は憤怒し、背中の深くまで侵入して来た外敵から身を守るため、体内に溜め込んでいた分泌物を大量に放出。
 瞬く間に新たに鉱石を生成。
 地上の人々諸共、分泌された鉱石の中に取り込んだ。彼らが作った建造物も地上数十メートルまで鉱石の岩盤に埋まった。
 彼らは、グランドキャリオンの怒により鉱石と一体化、絶滅したのだ。
 
 それ以来は、凶暴モンスター『ロックタイガー』や『メタルボーン』などがその地には住み着き、今では調査することすらままならず、第一級危険区域に指定されている。
 

 親父が見た古い石材の建造物。
 もしかしたら、グラン族が作った古代文明の一つなのかもしれない。
 彼らなら、塔などを容易に作れただろう。
 それを確認する為にファーゼストタウンに行く予定なのだ。
 
 しかし、ファーゼストタウンに行くまでも容易では無い。
 極寒地 プリズンマウンテンを越えなければならない。ましてやソロでなんてミリオンランクのハンターですら無謀なのだーー
 
 「反対はしないが。ただな…絶対に仲間を作るんだ。ソロには限界がある」

 それはガルダも分かっている。
 最悪、ハンターを雇うという手も有る。

 「まぁそれなりに、金貯まったら雇うか何かするさ」
 
 「そうか、それならいいが」
 その顔は憂わしげな表情をしていた。

 「まぁそろそろ行くわっ」

 「まて」

 そう言うと親父は自室に行き、右手に何か持って戻って来た。

 「これを持っていけ」

 右手を出し受け取ると、それはダストリュオンの鱗だと思われる鱗のペンダントだった。

 「何かの手掛かりになるかもしれないし、持っていけ」
 
 「いいのか?」

 「あぁ、此処にあっても何の役にも立たない」

 「分かった。それじゃぁ行ってくる。たまに手紙でも送る」
 ガルダは受け取ったペンダントを首にぶら下げ、バックを背負う。

 「たまには帰ってこいよ」

 「あぁじゃぁな」
 少し寂しい気持ちを隠す様に俯き、右手を挙げ、左手で扉を開けて陽光の指す中心街に向かう道へと踏み出していった。

 ガルダの父は、ガルダのいつの間にか大きくなった背中を見て、昔の自分を思い出した。
 見た事ない世界を旅する第一歩を踏み出し、高揚したあの時のことを。
 自分の此処に来た意味を探す為の旅。

 しかしガルダは違う。
 あの子は母親に似てとても優しい子。
 
 「知っているんだよ馬鹿息子が…」

  ガルダは俺を元の世界に戻してくれようとしている。
 『もう20年も経ってんだ…今更…』
  
 ガルダの父は胸ポケットから一枚の写真を取り出し眺める。
 そこにはガルダの父と幼い女の子が幸せそうに写っていたーー
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