異世界人の父は筋力がありません。勿論、息子の俺も筋力が無く武器を持てません。武器を持てないハンターの成り上がり。

やーま

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久しぶりの一家団欒

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 ーー 下町 カルボード ーー
 ガルダは一度自宅に戻っていた。

 ハンター試験に受かるとは限らなかった為、上京する為に必要な荷物までは持って行ってなかった。受かってからでも遅くないと、家を出るのは次の日と決めていたのだ。

 「遅くなっちまったな…」
 辺りは暗く、住宅の零れ光が道を少し照らしている。
 「ただいまっ」
 
 この時間、起きている筈の親父の姿が見えない。
 
 「あれ…もう寝てんのか?」
 リビングにも居ない。
 いつもならリビングで酒を嗜み、ウザいくらい絡んで来るのに、珍しいな…

 不思議に思ったが然程気に留めず、少し喉を潤そうと炊事場に行こうとした時、テーブル上に紙が置いてある事に気づいた。

 何だ?この紙…

 『ガルダへ
 お父さんは、少し身体の調子が悪いので、今日はもう寝ます。風邪が移ると良くないので、絶対に部屋を開けないで下さい。絶対にですよ。絶対に。』

 おいっめちゃくちゃ開けて欲しそうな文章だな…
 
 ガルダは不審に思いながら、炊事場の自分のグラスを手に取る。
 
 親父がいつも酒を飲む時に使用している、鉄グラスが無い。酒の入った小樽も無い…
 
 まさか…
 
 忍び足で親父の部屋戸に近づき、聞き耳を立てる。
 「ヒックッ」
 すぐ近くでしゃっくり音がする。
 
 不器用な奴だな…
 親父は俺がハンター試験に失格し、落ち込んでいると思ったんだろう。
 それで気を遣い、嘘を付いて自室で恐らく晩酌している。

 ガルダは戸を思いっきり、開いた。
 予想通り、親父は扉に耳を近づけ音を聞いていた為、開いた扉が顔面に激突した。

 「いたっ!!」
 
 「こそこそしてねぇでこっちで飲めよ」

 「何を言ってるんだっ。俺は体調が悪くて水を飲もうとそっちに行こうとしてなっ」

 親父は不自然に手を広げ、中を見られないように隠している。
 顔を突っ込み、部屋の中を見ると鉄グラスと小樽、ツナーフィッシュの干物が小テーブルの上に置いてあった。

 「めちゃくちゃ晩酌してんじゃねぇか!!」

 「へへっ」

 「たくっ…落ち込んでねぇよ。ハンター試験受かったっつうの」

 「なにいいいいぃぃぃぃ!?」

 親父は今にも飛び出して来そうなほど、目を見開き停止した。

 「うおぉぉぉぉぉ!!俺の解剖と調合の知識は無駄にならなかったんだなぁ…ゔっうぅ…」
 
  驚きながら涙ぐんだ直後、「宴じゃ宴じゃ!」と身体を弾ませながら部屋の鉄グラスと小樽を取ってきてリビングの椅子に腰掛けた。
 酔っ払っているのか、感情の起伏が激しい。
 驚くか泣くか喜ぶかどれかにしろよ…
 
 ーーそれから二人は、今日の試験や祝賀会の事、昔の思い出や他愛のない話などをし、久しく忘れていた一家団欒の時を過ごした。
 
 「それじゃぁ、明日から中心街で暮らすのか?」

 「あぁ、そうだな。常に持っていく荷物が多いから、クエストを受けるのに遠いと何かと不便なんだよ。ハンター総支部の近くに宿屋を借りようと思って」

 「なんだ…寂しくなるな…母さんは喜んでいるのか、不安がっているのかどっちだろうな…」

 「さぁな…まぁ母さんなら俺の好きな様にしなさいって言ってくれるんじゃね?」

 母さんは俺が10歳位の時に未知の病気で亡くなった。
 親父は色んな薬草を調合し、薬を作ろうとしていたが、薬が出来る前に母は他界してしまった。
 怒られた記憶なんて一度も無くいつも優しい人だった。
 
 「まぁもう自立するんだ。俺も何も言わない。言った所でお前は聞きやしねぇからなっ誰に似たんやら…」

 「親父しかないだろ…」

 「はっはっはっ!俺か!!」

 ガルダは呆れながら、ふと時計に視線を移すと、既に深夜3時を回っていた。

 「明日朝出発するから、そろそろ寝る」

 「あぁそうだな、寝るか」

 ガルダはおもむろに席を立ち、「おやすみ」と言い残し、自室の床に就いた。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 『ガサガサッ』
 何やらリビングの方から聞こえる音にガルダは目覚めた。
 窓から差し込む強い陽光が朝になっている事を知らせてくれる。
 
 「回復液、砥石、手榴弾、光弾、煙弾、ライポイル玉、解毒液、催眠粉、麻痺粉、撒菱、持久薬、縄、ツルハシ、棒網、竿、薬研、手持ち小型斧……と」

 リビングに行くと、親父が大きなバックに
沢山のアイテムを詰め込んでいた。
 バックはすでにパンパンに膨れ上がっているのにも関わらず、まだ詰め込もうとしている。

 寝起きのぼそぼそした目を擦り、状況を確認する。しかし意味がわからない…
 「何してんだよ!?」
 
 「おお!?起きたのか!?いや、お前の為に必要そうな物準備しといたのさ!」

 パンパンに膨れ上がったバックは、この家の玄関より二回りほど大きくなっていた。
 絶対に通れない、てかそんなに詰め込んで絶対持てるわけがない。
 
 「それ持って玄関から出てみろよ」

 「なんだ!?通れないとでも言うのか??そんな訳ないわ!!」

 親父は自信ありげにバックを背負い立つが、重たかったのか「うっ…」と唸る。しかし何とか玄関まで辿り着き、外へ出ようとした時、案の定バックの両端は玄関の縁枠につかえた。
 
 「玄関切るか…」

 絶対あほだこの親父……
 
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