6 / 29
ハンターになった意味
しおりを挟む
ハンターに成る意味。
「何のためにって…バカにする奴らを見返してやりてぇんだよ」
「それだけ?」
「あぁ…」
ガルダはダストリュオンを探す為とは答えなかった。
誰がこんな非現実的な話を信じるのかーー
向こう側の世界。
地球で、親父は薬剤師とか云う、よく分からない職業の仕事をしていた。
仕事が終わり、自宅に帰っている途中、急に目の前にモヤモヤした真黒い楕円形のものに身体を一瞬にして吸い込まれた。
その空間の中は、塵一つ無い空間。星の無い宇宙を彷徨っている感覚だった。
長い間、彷徨い途方に暮れていたある時、吸い込まれた時と同じモヤモヤした真黒い楕円形のものに再び身体が吸い込まれ、気づくと見知らぬ古びた石地の上に倒れていた。
周囲には、地のヒビ割れた隙間から白い雑草が生え、さらに一帯には濃い白霧が漂っていて視界が悪かった。
霧の中、探り探りで歩き進んで行くと、その先には地面が無く、下には自分が足をつけている古びた地の側面が見えた。
地は遥か下まで続いており、白霧の中かへ消えている。この地は、恐らく人工的に造られた塔の様な建物の最上階で、雲の中に居たんじゃないかと言っていた。
そして上空に空を切る音が聞こえ、上を見上げると一体の龍が空を飛んでいた。
その龍は、漆黒の身体全体に小さな無数の光粒が輝きを放ち、まるで目の前に星があるのかと、宇宙に居るのかと錯覚する程、神々しい光を纏っていた。
しばらく見た事のない生き物に唖然としていたが、龍は親父の視線に気づくと、目の前に降り立ち、咆哮した。
その途端、モヤモヤした真黒い楕円形のものが龍と親父の周りに無数に出現し、吸い込まれてしまったと。
そして、気づいたときには、この街近辺に倒れていて、夢かと思ったがーー
目の前には一枚の光粒を纏った鱗が落ちていた。
それから元の世界に戻るため、探し回ったが見つからず、親父は元の世界に帰る事を諦めたらしい。
前に親父は、命が幾つ有っても足りないから諦めたと言っていたが、俺は知っている…
本当の理由は俺が産まれたから。
俺のせいで、親父は戻りたい本当の世界に帰れなくなった。
母さんも病気で亡くなり、もういない。
俺もハンターに成り、今日から自立するんだ。
誰も向こうの世界に戻っても親父を責めない。
俺は親父を元の世界に帰らせてやりたい。
これが、俺の本当のハンターに成った理由。
しかし、それを話した所で信じて貰える訳が無い。
存在すると云う記録すら一切無い非現実的なモンスターが居るなんてーー
「しょーもない…期待外れだわ」
「じゃぁお前は何の為になったんだよっ」
「私は…姉を助ける為よ…」
「助ける?何かの病気なのか?」
「アンタに関係ないわ…」
エマは素っ気なく答え、ガルダに背を向ける。
「治らない病気なのか!?」
ガルダを無視し、そのまま宿屋の方へと姿を消していった。
「何のためにって…バカにする奴らを見返してやりてぇんだよ」
「それだけ?」
「あぁ…」
ガルダはダストリュオンを探す為とは答えなかった。
誰がこんな非現実的な話を信じるのかーー
向こう側の世界。
地球で、親父は薬剤師とか云う、よく分からない職業の仕事をしていた。
仕事が終わり、自宅に帰っている途中、急に目の前にモヤモヤした真黒い楕円形のものに身体を一瞬にして吸い込まれた。
その空間の中は、塵一つ無い空間。星の無い宇宙を彷徨っている感覚だった。
長い間、彷徨い途方に暮れていたある時、吸い込まれた時と同じモヤモヤした真黒い楕円形のものに再び身体が吸い込まれ、気づくと見知らぬ古びた石地の上に倒れていた。
周囲には、地のヒビ割れた隙間から白い雑草が生え、さらに一帯には濃い白霧が漂っていて視界が悪かった。
霧の中、探り探りで歩き進んで行くと、その先には地面が無く、下には自分が足をつけている古びた地の側面が見えた。
地は遥か下まで続いており、白霧の中かへ消えている。この地は、恐らく人工的に造られた塔の様な建物の最上階で、雲の中に居たんじゃないかと言っていた。
そして上空に空を切る音が聞こえ、上を見上げると一体の龍が空を飛んでいた。
その龍は、漆黒の身体全体に小さな無数の光粒が輝きを放ち、まるで目の前に星があるのかと、宇宙に居るのかと錯覚する程、神々しい光を纏っていた。
しばらく見た事のない生き物に唖然としていたが、龍は親父の視線に気づくと、目の前に降り立ち、咆哮した。
その途端、モヤモヤした真黒い楕円形のものが龍と親父の周りに無数に出現し、吸い込まれてしまったと。
そして、気づいたときには、この街近辺に倒れていて、夢かと思ったがーー
目の前には一枚の光粒を纏った鱗が落ちていた。
それから元の世界に戻るため、探し回ったが見つからず、親父は元の世界に帰る事を諦めたらしい。
前に親父は、命が幾つ有っても足りないから諦めたと言っていたが、俺は知っている…
本当の理由は俺が産まれたから。
俺のせいで、親父は戻りたい本当の世界に帰れなくなった。
母さんも病気で亡くなり、もういない。
俺もハンターに成り、今日から自立するんだ。
誰も向こうの世界に戻っても親父を責めない。
俺は親父を元の世界に帰らせてやりたい。
これが、俺の本当のハンターに成った理由。
しかし、それを話した所で信じて貰える訳が無い。
存在すると云う記録すら一切無い非現実的なモンスターが居るなんてーー
「しょーもない…期待外れだわ」
「じゃぁお前は何の為になったんだよっ」
「私は…姉を助ける為よ…」
「助ける?何かの病気なのか?」
「アンタに関係ないわ…」
エマは素っ気なく答え、ガルダに背を向ける。
「治らない病気なのか!?」
ガルダを無視し、そのまま宿屋の方へと姿を消していった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる