上 下
131 / 207
7章 ウラボス&リアーナ、カップリング作戦

STORY125 二人は両思い!?⑦

しおりを挟む
 恋祭前日の朝。

 朝食を終えて客室に戻ったリアーナは窓から顔を出して、青空を笑顔で見上げていた。

 「どうしたニャ?」

 「ん?」

 リャッカの質問にリアーナは空を見上げたまま聞き返す。

 「今日はものすごく上機嫌じゃないかニャ? 昨日、何かあったのかニャ?」

 「エヘヘヘ……実はね!」

 振り返ったリアーナが嬉しそうに話し始めた。

 「あのウラボスから!? それはすごいことニャ!! そういうことだったら、明日のお祭りに着ていく服を買いに行くニャ!」

 「うん! でも、ウラボスってどんな服が好みなのかな!?」

 「うーん、そこはあんまり気にしなくてもいいんじゃないかニャ? そういうことは気にしそうもないニャ」

 リャッカに言われてリアーナも納得する。

 「たしかに、ウラボスって服装を気にするタイプじゃないかも……。でも、できるだけ好印象を持ってもらいたいよ」

 「それはそうニャ。清楚系でいくか可愛い系でいくか、はたまたセクシー系は……やめとくニャ」

 「ちょっとぉ、それ、どういう意味かしら?」

 「いや、その、バストが……」

 リャッカはリアーナの胸をチラリと見る。

 「……うっ…やっぱり……」

 痛いところをつかれて言葉を詰まらせるリアーナ。

 「大丈夫ニャ! あたしがばっちりコーディネートするニャ! 一緒に選ぶニャ!」

 「ありがと。リャッカちゃんが一緒に選んでくれると嬉しい」

 「この街なら気に入った服が見つかるニャ!」

 「うん!」

 リアーナとリャッカは互いに微笑み合った。



 (はぁ……昨夜は眠れなかった……)

 一方、ウラボスは自問の答えを見つけられず、未だ自分の気持ちに向き合ったままであった。

 出会ったばかりのころは、ただ危なっかしくて放っておけない存在だった。

 しかし、勇者になるという夢に向かってひたすらに努力し、何度も失敗を繰り返して悔しさや無力を感じながらも前を向き続けていく強さ、相手がだれであろうと困っている者に対して全力で手を差し伸べる優しさ……。そんなリアーナを見守るうちに彼女に惹かれていったのか……。

 (……そうか。俺はあいつを見守るうちに、あいつと旅をしていろんな一面を見ていくうちに、いつの間にかリアーナのことを一人の女性として意識し、愛していたのか……)

 ウラボスの中でようやく答えが見つかった。

 (だが、そうだとしていったいどうする? 俺が何者なのか俺自身がわからないんだぞ? 過去を失くしている俺が思いを伝えるべきじゃないんじゃないか? もし、過去の俺に恋人がいたら? それどころか結婚をしていたらどうする? それに、もしフラれたとして、その後の旅はどうする? お互いに気まずくなるんじゃないのか?)

 まるで思春期の少年のように悩む真なる支配者であった……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...