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5章 幸運の獣

STORY81 高額依頼

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 グランザをニギヤカ亭に残し、ルチヌムの街の冒険者ギルドにやってきたリアーナたちは掲示板に貼り出されている依頼を一瞥していた。

 「何かお金になりそうな依頼はないかニャア♪」

 リャッカは鼻歌まじりに依頼書に目を通していたが、やがて失望したようにため息を漏らす。

 「だめニャ。ここに貼り出されているのは雑用かそれより少し上程度の依頼ばかりニャ」

 「それでもいいんじゃない? 困ってる人を助けることにも繋がるし、数をこなせば利益だって……」

 「何言ってるニャ! あたしたちはタレク島を目指してるニャ! 雑用レベルの依頼をこなして資金を稼いでちゃ、タレク島に到着するのはいつになるかわかったもんじゃないニャ!」

 「……はい……」

 リャッカの剣幕に圧されて意見を引っ込めるリアーナ。

 「ほぉ、君たちはタレク島に向かうつもりなのか? それはまた命知らずというかなんというか……」

 突然、男がリアーナとリャッカの会話に加わってきた。

 「だれニャ?」

 リャッカが不審者を見るような視線を男にぶつける。逞しく鍛え上げられた肉体を持つ壮年の男である。

 「おお、これは失礼。オレはこのギルドの長をやってるベイズってもんだ」

 ベイズは名乗って親指を立てる。

 「んで、おまえさんたちは本気でタレク島に行くつもりなのか?」

 「ああ、そのつもりで旅をしている」

 ウラボスが代表して答える。

 ベイズは暫く顎に手を当てて考えていたが、やがてリアーナ、リャッカ、ウラボスを順番に見る。

 「タレク島がどんな場所か知った上で行くって言ってんだろうな?」

 「はい、もちろんです。わたしたち暁の渡り鳥の仲間にはタレク島出身の者もいます」

 ベイズはリアーナからの返答を聞いてさらに考え込む。

 「どうしたのニャ? もしかして、高額の依頼を回してくれるのかニャ!?」

 リャッカは期待に胸を膨らませる。

 「そうだな。しかし、その前にあんたらを試させてもらおうか」

 「試す?」

 ウラボスが問い返す。

 「ちょっと待っててくれ」

 ベイズはカウンターまで行って受付嬢に話しかけ、1枚の依頼書を持って戻ってきた。

 「まずはこいつを解決して、あんたらの実力を示してもらおうか!」

 リアーナたちは手渡された依頼書に目を通す。

 「盗賊ゼヴァノンの討伐依頼ですね」

 「ニャニャ! 盗賊ゼヴァノンがこの街にいるのかニャ!?」

 驚きの声をあげるリャッカにベイズは首肯する。

 「ああ、間違いなくいる。現に被害者は増加し続けている。当然だが、警備隊の連中も血眼ちまなこになって探しちゃいるが捕らえられていないのが現状だ。やつと遭遇した警備隊員や騎士、冒険者はことごとく消されている。よって報酬は100万コルド! そいつを解決できれば、我々が抱えてる最大の案件への参加も認めよう!」

 リアーナはゼヴァノン討伐の依頼書を手に沈黙している。

 「リアーナ、これは絶対に乗るべきニャ」

 「リャッカちゃん……」

 「今回はリャッカの意見に賛成だ。報酬もそうだが、経験を積むことができるのは大きい」

 「ウラボス……」

 リアーナは床に視線を落として暫く考えていたが決心を固めてベイズを見る。

 「わかりました。ゼヴァノン討伐は暁の渡り鳥わたしたちが引き受けます!」

 「おお、そうか! 期待してるぞ!!」

 ベイズはリアーナの肩に手を置いてニカッと笑った。
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