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1章 出会いの町キャルト

STORY2 スライム退治

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 「さて、これからどうしたものか…だな」

 真なる支配者は晴天を見上げて呟いた。

 アリムルを残し、思いつくままにシークレット・パレスを飛び出したはいいが、何か目的があるわけでも、目指す先があるわけでもなく、やってみたいこともない。

 (というか、そもそもここはどこだ?)

 心の中で自問する。

 本来、瞬間移動魔術テレポーテーションを発動させる時は行き先を細かく、可能なかぎり鮮明にイメージする必要がある。

 しかし、そうすることなく瞬間移動魔術テレポーテーションを行ったため、現在地が曖昧になっていた。

 周囲を見回す。木々が鬱蒼と生い茂っている。

 「森か?」

 確かめるため近くの木の枝へと移動し、さらに広範囲を見渡す。

 それほど広大な森というわけではなさそうだ。少し離れた所に小さな集落らしきものがある。

 「とりあえず、あそこに向かうか」

 名も知らぬ集落を目的地に定め、移動を開始した。



 「妙だな……」

 集落の中を歩き回っても人の気配はなく、異様なほど静まり返っていた。しかし、ごく最近まで住民が暮らしていた生活感はある。明らかに様子がおかしい。近くの民家に立ち寄り、玄関の扉をノックしてみるが返事はない。

ガチャ…

 ドアノブを回す。施錠されていないようだった。扉をそっと開けて中の様子を窺う。

 「これは……」

 中はそれほど争ったような感じはなかった。だが、床には衣服を着た白骨が横たわっている。

 何者の気配もないことを確認したあと、屋内へと侵入する。

 リビングを素通りして、奥の扉を開けて別室に移動する。

 「寝室か」

 ベッドの上には衣服を着た白骨が寝ている。しかし、周囲はもちろん、ベッドにも一滴の血痕も、また物色された形跡もなかった。

 「これはもしや…」

 ウラボスの脳裏にある仮説が浮かんでくる。

 「だれか! だれかいませんかぁ!?」

 外から若い女の叫ぶ声が聞こえてきた。窓から外を覗き見る。

 胸部にはレザーアーマー、腰にはレイピア、腕にはガントレットといった軽装の少女の姿があった。

 「何者だ?」

 見たところ他に仲間を引き連れていない。

 「会って確かめてみるか」

 ウラボスはベッド脇のクローゼットからサイズが合いそうな男性用の衣服を取り出して着替えた。今まで着ていた黒を基調としたマントやローブはあらゆる攻撃に対して優れた防御力を持つ超レアアイテムなのだが、それでは目立つと判断して瞬間移動魔術テレポーテーションで衣服のみシークレット・パレスへと送る。

 鏡の映った自分の姿を確認する。見た目は普通の村人といった感じである。



 「おーい!」

 表に出て、声を掛ける。

 少女もそれに気付いて駆け寄ってきた。

 「よかった! 生き残ってる方がいらしたんですね!? お怪我とかは?」

 「ああ、それは大丈夫」

 真なる支配者が答えると少女は一安心したように表情を緩める。

 「村がスライムの群れに襲われたとのことでしたが、生存者がいて良かった……」

 (やはりスライムの仕業か)

 ウラボスは、少女の言葉に自分の仮説に確信を得る。

 「でも、よくご無事でしたね」

 「俺はたまたま村を離れていたからね。ところで、君は?」

 少女は、真なる支配者に問われたことで自分が何者なのかを名乗っていないことに気付いた。

 「私は冒険者のリアーナっていいます」

 リアーナが名乗る。

 「へぇ。すると、もしかして君も勇者を目指してるの?」

 冒険者には勇者を目指す者が多い。しかし、高い戦闘能力はもちろん、豊富な経験と知識、さらには名声と人望も必要であり、夢半ばでリタイアしてしまう者がほとんどであった。命を落とすケースも少なくない。

 「ええ。実は……」

 リアーナは少し照れたように答える。

 (なるほど。それで、スライムの群れに襲われたというこの村に来たわけか。しかし、仲間の姿が見当たらないな……)

 勇者を目指す者は幾人かの仲間を連れてパーティーを組むのが一般的である。にもかかわらず、リアーナにはそれが見当たらない。

 「仲間がいないみたいだけど?」

 真なる支配者は浮かんだ質問をそのまま訊いた。

 「私、いわゆる落ちこぼれなんです……。だから、私とパーティーを組んでくれる人がいなくて……」

 リアーナは俯いて答える。

 それならば、仲間がいないのも納得できる。勇者の仲間になるということは命懸けの冒険に身を投じるということである。なのに、肝心の勇者が足手まといだと命がいくつあっても足りないというものだ。

 (そういうことか。だが、それはそれでおもしろい)

 真なる支配者はとある計画を思いついた。

 「だったら、俺を君の仲間にしてくれないか?」

 「へっ?」

 リアーナは予想もしない申し出に明らかな戸惑いをみせる。しかし、冗談で言っているようにも思えなかった。

 「ダ、ダメですよ! とっても危険なんですよ!? もしかしたら、死んじゃうかも……」

 「大丈夫、大丈夫。足手まといにはならないからさ。村人が冒険者のパーティーに加わっちゃいけないっていう決まりはないだろ?」

 「それはそうだけど、でも……」

 決断できず困惑するリアーナに真なる支配者から新たな提案が出される。

 「それじゃ、こうしよう。この村を襲ったスライム討伐に俺も参加させてもらう。その結果をみて考えてほしい。それならいいだろ?」

 「……わかりました。でも、危なくなったら無理せず逃げて下さいね」

 「了解!」

 真なる支配者は親指を立ててみせる。

 「あの、お名前をまだ聞いてないんですけど?」

 リアーナの言葉に、自分の名を名乗っていないことに気づく。

 (そういえば、自分の名前を決めていなかったな。うーん、やっぱりウラボスでいいか。アリムルが勝手に呼んでいただけだけど……)

 「俺の名前はウラボス」

 「ウラボスさん、ですか」

 改めて名前を考えるのも面倒だったため安易に決めてしまう。

 こうして、真なる支配者は村人となり、冒険者リアーナと行動をともにすることになった。



 ウラボスとリアーナは村の中を回ったが生き残った者はおらず、家々には衣服を着た白骨が倒れていた。

 「村を襲ったスライムたちはいったいどこへいったのかな……」

 リアーナは周囲をキョロキョロと見回して独り言を呟く。

 「この近くに大きな洞窟はあったりするのか?」

 「洞窟…ですか?」

 質問の意図がつかめず問い返してくる。

 「ああ。スライムは湿度が高くて涼しい場所を好むもんだ。それに、動きが遅いことを考慮すると長距離を移動してきた可能性は低い。さらに付け加えるなら、ごく小規模の集落とはいえ壊滅させているということは、それなりの数がいると思っておいたほうがいい。多くの個体が集まって群れをなしているのか、一匹が自らの分身を作り出しているのかは不明だけどね」

 ウラボスが披露した推理ショーにリアーナが拍手する。

 「すご~い! ウラボスさんって博識なんですね」

 「これくらいは冒険者にとっては常識レベルなんだけど」

 「……うぅ…」

 指摘されて落ち込んでしまうリアーナだったが、ウラボスはさらに言葉を続ける。

 「そんなに落ち込むこともないさ。このことを覚えておけばさっきまでよりも成長した自分になれる。そんなもんだろ?」

 ウラボスのフォローにリアーナは救われた気持ちになって笑顔を見せる。

 「あっ、でも……」

 「どうかした?」

 「いえ…。ウラボスさんって、この村の方ですよね? だったら、周辺のことはウラボスさんのほうがお詳しいのでは?……と思ったものですから」

 (なかなか鋭いな)

 リアーナの指摘にウラボスは感心する。

 「俺はここで暮らすようになって日が浅いから、あまり詳しくないんだよ」

 「なるほど。そうだったんですね。すみません。変なこと言っちゃって…」

 「いいよ、気にしないで。とりあえず手分けして近くに洞窟がないか調べようか。ただし、発見しても一人では突入しないこと。調査を終えたらここへ戻ってくるんだ」

 「うん、わかった!」



 「ウラボスさーん!」

 周辺の調査を終えて村に戻っていたウラボスの元へリアーナが駆け寄ってきた。

 「何か見つかったのか?」

 ウラボスが訊ねるとリアーナは首肯する。

 「向こうにそれらしい洞窟がありました!」

 「そうか。なら、日が落ちる前に早速向かうとしようか。…と、その前に確認しておきたいんだけど、リアーナは火属性もしくは雷属性の魔術は使える?」

 訊かれて、リアーナは声のトーンを落としてしまった。

 「魔術は使えません。もちろん練習はしてるんですけど、なかなか上手くならなくて……。ごめんなさい」

 申し訳なさそうにうなだれるリアーナだったが、ウラボスは特に気にしていないようである。

 「いや、気にする必要はない。それならそれでやり方はあるさ。その洞窟まで案内してくれるね」

 「はい! こっちです。ついてきてください!」

 リアーナは先頭に立って歩きだした。



 リアーナが発見した洞窟は村外れの滝の脇にあった。滝の近くということもあり、空気はひんやりと冷たく、湿度も多い。スライムが棲息するには適した環境といえた。

 「ここで間違いなさそうだ」

 ウラボスは離れた位置から洞窟を確認する。

 「どうしましょうか……」

 (俺が一人で行けば楽に片付くんだけど、それだとリアーナの経験にならない。ここは支援に回るほうがいいか)

 ウラボスは決断を待って待機しているリアーナのほうを振り向く。

 「やつらと直接戦うのは君だ。後方支援は任せてくれ。やつらは動きは鈍いが油断はするな。万が一、体内に取り込まれればさっきの村人たちと同じ運命をたどることになるからな」

 ウラボスの忠告にリアーナの背筋が伸びる。

 (うぅ……緊張するよぉ……。でも、勇者になるんだったらこれくらいできなきゃ!)

 自らを奮い起たせてレイピアを抜く。

 (やれやれ。やる気があるのはいいんだけど、緊張でガチガチじゃないか。まっ、俺がサポートすればなんとかなるだろ)

 「まずスライムについてだが、やつらには斬撃や打撃といった攻撃は効果が期待できない」

 「私、魔術は使えないんですけど、どうすればいいんでしょうか?」

 リアーナは不安げに訊く。

 「大丈夫。俺がリアーナのレイピアに炎属性を付与する。それなら十分にダメージを与えられるはずだ」

 「お、お願いします!」

 リアーナは頭を下げる。それから抜き身のレイピアを差し出す。

 「いや、武器を預かる必要はない。君が持ったままでも付与することは可能だ。ただし、あまり長時間はもたないからね。一人で突っ走らないように」

 「はい!」

 「炎属性付与魔術フレイム・ウェポン

 「わぁ……」

 ウラボスの魔術によってレイピアの刀身に炎が宿り、リアーナは小さく声を洩らした。

 「さあ、これで準備完了だ。いよいよ乗り込むぞ。覚悟はいいね?」
  
 リアーナは緊張した面持ちで頷くと、先頭に立って洞窟へと向かい歩を進める。そのあとをウラボスが追っていく。



 ドドドドド……

 滝はそれほど大きくはなかった。が、さすがに近くまでくると後ろからついてきているはずのウラボスの足音が聞こえない。それがリアーナの不安を掻き立てた。

 (勇者を目指すなんて言っておいて、村人のウラボスさんを頼りにしてるなんて、なんだか情けないなぁ……)

 リアーナは自嘲した。勇者を目指す冒険者である自分が村人のウラボスを頼っていることが恥ずかしく、また情けなかった。こんなことでは一生かかっても勇者になんてなれないのではないかとさえ思えてきた。

 洞窟の中は暗く、視界がほとんどきかなかった。

 「魔石、魔石…と」

 リアーナは視界を確保しようと腰のポシェットの中を探る。

 魔石とは、様々な魔術を封じた特殊な石だ。これがあれば魔術を使用できない者でも封じられている魔術と同等の効果を発揮ことができる。

 リアーナは周囲を明るくする照明魔術ライトの魔石を取りだそうとしていた。

 「照明魔術ライトなら修得済みだよ」

 リアーナがポシェットを探っている間にウラボスは照明魔術ライトを発動させる。二人の体から光が発せられた。

 「……ウラボスさんって絶対に普通の村人じゃないですよね。ほんとは何者なんですか?」

 あまりにも優秀すぎるウラボスに違和感を覚え、リアーナは訊いてみることにした。

 「うーん、たしかに普通の村人ってわけじゃないけど……。俺の正体は秘密ということで。ミステリアスなほうがカッコイイだろ? それよりサクッと終わらせようぜ」

 質問を軽く流されてしまったリアーナはウラボスに促され、洞窟の中へと足を踏み入れていった。



 洞窟の中は予想どおりにスライムの巣窟となっていた。天井から飛び付いてくるもの、床に広がって待ち伏せするものなど、あの手この手で侵入者を補食しようとしてきた。ウラボスがいなければ、あっという間に白骨になってしまっていたことだろう。

 また、レイピアに炎属性を付与してもらったのも大きかった。数で攻めてくるスライムたちだったが、炎をまとったレイピアの一撃で火だるまとなり、たちまち絶命していった。

 「ふぅ……。だいたい片付きましたね!」

 周囲からスライムの姿がなくなったのを確認し、リアーナはウラボスのほうを振り返る。

 「ああ。けど、まだ油断はできないぜ」

 ウラボスは洞窟の奥に視線を向けながら注意を促す。

 「そうですね。奥にまだどれだけのスライムがいるかわからないですもんね」

 リアーナが表情を引き締める。ウラボスの足手まといになるわけにはいかないという思いがプレッシャーとなって、のしかかってくる。

 「数はそれほど多くはない。ただ、ちょっとばかり厄介な大物がいるみたいだね」

 「厄介な大物?」

 リアーナは問い返す。

 「ああ。ここらで一度照明魔術ライト炎属性付与魔術フレイム・ウェポンをかけ直しておこうか」

 「はい、お願いします」

 二人は奥にひかえているであろう強敵との戦いに備えて準備をし直した。



 「おっきい……」

 驚嘆するリアーナの視線の先には2メートルはあるゼラチン質の巨躯が居座っていた。もはや洞窟を塞いでしまっている。その周りには普通サイズのスライムが何匹かいるが、ウラボスの言ったとおり、数はそれほど多くないようだ。

 スライムたちもウラボスとリアーナを警戒して様子をみている。

 (たしかにでかいな。もっとも、俺の火炎系か雷撃系の魔術なら一瞬で片付ける自信はあるけどね)

 「どうしましょうか……」

 予想以上の大きさに僅かに驚いてはいるが余裕を保ってるウラボスに、リアーナが困ったような表情を向けてくる。

 「そうだなぁ……。このパーティーのリーダーは君だから、君はどうすればいいと思う? 俺はリアーナの指示に従うよ」

 ウラボスに言われ、パーティーを率いる者としての責任を感じて押し黙るリアーナ。

 (そうよね。私がしっかりしなきゃ! ウラボスさんを頼ってばかりじゃダメ!)

 自身に言い聞かせて、勝利するためにはどう動くべきか思考する。

 (ウラボスさんならきっと一瞬で全滅させられるんじゃないかしら。でも、それはきっと期待を裏切ってしまう答えだよね。だけど、あんな大きなスライムとどう戦えばいいの……)

 なかなか考えがまとめることができないリアーナ。

 ここでスライム側が行動を開始した。

 普通サイズのスライムたちが壁や天井に張り付いてウラボスたちのところへ移動してくる。ビッグ・スライムは奥に居座ったままである。

 (……そうだわ!)

 リアーナはとある作戦を思いつく。だが、ウラボスに伝える時間はない。

 「ウラボスさん、こちらに向かってくるスライムを攻撃して下さい!」

 「了解」

 ようやく出されたリアーナの指示を受け、ウラボスが魔力を練り上げる。

 「雷撃矢魔術ライトニング・アロー

 いくつもの稲妻の矢が発生したかと思うと、スライムたちを次々に屠っていく。その命中率と威力は見事の一言に尽きた。

 取り巻きのスライムを全て失い、ビッグ・スライムが遂に動く。通路いっぱいの巨躯がまるで壁のように迫ってくる。しかも、これまでのスライムより動きが速い。

 「さてさて。いかがいたしましょうか、リーダー殿?」

 落ち着き払っているウラボスに対し、リアーナは慌てて振り返ると、ビッグ・スライムに背中を向けて逃走する。

 「ウラボスさんも!」

 ウラボスの横を通り抜け様にその手を取って入り口へと全速力で走る。

 (とほほ……。この真なる支配者の俺がまさかスライムを相手に逃走する羽目になるとはね)

 情けない気持ちになりながらも、今回はリアーナの指示に従うと決めたからには、やむなく共に逃走する。



 もともと深い洞窟ではなかったため、すぐに外まで脱出することができたが、ビッグ・スライムは洞窟の外まで二人を追ってくる。

 「ここまでくれば!」

 リアーナは踵を返すと炎属性が付与されたレイピアを構える。

 (戦いやすい場所まで誘導するために敢えて背中を向けて逃走したのか。さて、ここからどう動くのかな)

 リアーナの意図に気付き、ウラボスは様子を見ながら次なる指示を待つことにした。

 「やぁぁぁぁぁ!」

 リアーナはレイピアをビッグ・スライムに突き刺す。炎属性付与魔術フレイム・ウェポンの効果により大ダメージを与えることができたが倒すにはいたらない。さらなる追撃を幾度も繰り出す。

 「これでどう!?」

 リアーナの連続突きにより弱ったビッグ・スライムにレイピアが鋭く突きだされた。が、ビッグ・スライムは体を弾ませて飛び上がる。渾身の一撃をかわされ、リアーナに隙が生じた。

 「きゃあ!」

 飛び上がったビッグ・スライムはリアーナ目掛けて着地してくる。寸前のところで回避したもののバランスを崩して尻もちをついてしまう。
 そこをビッグ・スライムが分裂して次々に襲いかかってきた。リアーナは、手足にまとわりつかれて身動きがとりづらくなり、生気を吸いとられて全身から力が抜けていくのを感じた。

 (…この……ままじゃ……)

 このピンチをどう切り抜けていいのかわからず、焦るリアーナを見て、ウラボスは次の行動にうつる。

 「火炎矢魔術フレイム・アロー

 絶妙な角度で放たれた炎の矢は、リアーナの体を傷つけることなく、ビッグ・スライムの分身のみを焼き払う。

 ウラボスがくれたチャンスを活かすべく、リアーナは重い体を動かす。

 分身を失くして弱っているビッグ・スライムに再び連続突きを放つ。これに堪えきれず、滝壺へと逃げ込むビッグ・スライム。

 「ウラボスさん!」

 それを見てリアーナはウラボスのほうを振り向く。が、ウラボスは既に雷属性付与魔術ライトニング・ウェポンを発動させていた。炎属性から雷属性へと切り替わったレイピアを滝壺の水面へと突き刺す。

 電撃に襲われて水面に姿を現したビッグ・スライムに、再び炎を纏ったレイピアの斬撃が炸裂した。これが止めの一撃となり、巨体は塵となって跡形もなく消え去った。

 「お疲れ!」

 ウラボスは無事に勝利したリアーナに手を差し伸べ、リアーナは微笑み返す。
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