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第二部 春樹と菜々子
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水鉄砲遊びのルールは二人で話し合って決めた。じゃんけんで勝った方が2分間、満タンにした水鉄砲を手に負けた方を追い回す。水がなくなったらそこで再びじゃんけんをする。庭に出た時まだ日は高く、思う存分楽しめると僕は確信した。
制限時間を知らせるアラームは、僕のスマホをタイマー代わりに使う。そして最初のじゃんけんは僕が勝った。
「よーし、じゃあ行くぞ!」
菜々子が背を向けて走る。とりあえず1発目をその背に浴びせると、菜々子がきゃっと声を上げる。ピンクのシャツが濡れ、黒っぽい色のブラジャーが濃厚に浮かびあがった。
(こいつ……さっきシャワーを浴びた後『勝負下着』を着込んできたのか?)
それ以上背中に浴びせても意味がない。正面からびしょ濡れにしてしまわなければ。そんな思惑で菜々子を庭の隅へ追い詰めようとしていると、急にUターンして僕の横をすり抜けようとした。そうはさせない!
僕の反応が早かったので、菜々子はハンターの正面に飛び出してしまった。すかさず僕は彼女の胸元に水を浴びせる。
「あんっ! 冷たいっ!」
冷たいことがあるもんか。この真夏の炎天下に! 本当は喜んでいるんだろう? この水しぶきがうれしいんだろう? ほれ、ほれ!
菜々子が両手を前に出して放水を避けようとする。その割に逃げようとしない。僕は菜々子の手の隙間をかいくぐり、胸元や腹、デニムの短パンの股間にまで、容赦なく水を浴びせた。
「やっ、ちょっとぉ、どこにかけてるの」
「かけちゃいけない場所なんかないだろ?」
「そうだけど、あっ」
やっと背中を向けて走り出す。僕は中腰になり、左右に躍動する菜々子のお尻の、その合わせ目に最大強度の水を噴射した。
「あんっ!」
たまらずお尻を引っ込めて、菜々子が軽く跳ねる。遂に、道路に面した生け垣まで追い詰めた。背中を向けて立つ菜々子は嬌声を上げながら、僕のなすがままになっている。いじめっ子の高揚感に僕は駆り立てられ、残った水を全部、菜々子の背中や頭、首筋に浴びせた。
短パンの裾から太腿に流れ落ちる水を眺めているうちに、スマホのアラームが鳴った。ファーストゲーム終了だ。
そして次のじゃんけんも僕が勝った。
僕は菜々子を追い回し、頭から足の先までずぶ濡れにしてやった。
6ゲームまで重ねたところで、僕らはいったん切り上げた。結局、水鉄砲を手にした回数は僕が4回、菜々子が2回。どっちにしても僕らは二人ともびしょ濡れになってしまった。
僕は用意していたタオルで、菜々子の髪を拭いてやった。菜々子は「ありがとう」と言い、僕の手からタオルを受け取る。
「春樹、脱ぎなよ」
「え」
「びしょびしょじゃない。風邪ひくよ」
確かに、僕のTシャツは水を吸ってべったり張り付いている。真夏の炎天下とはいえ、あまり気持ちのいいものではない。
「私も脱ぐ」
菜々子はタオルを縁台の上に置き、シャツのボタンをはずし始めた。呆気に取られて眺める僕の目の前で、菜々子はシャツを脱ぎ、デニムの短パンも下ろす。紫色のブラとショーツだけになったその姿は女神のようだった。僕のけしからぬ18歳の脳は、その勢いでブラとショーツも取ってしまう菜々子の幻をそこに見いだしていた。
下着モデルさながらに腰に手を当てた菜々子に微笑みかけられ、僕はようやく我に返った。やむを得まい。僕は憤然とTシャツを脱いだ。そして公平を期すため、下半身もバミューダを取ってトランクス一枚になる。
パンツ一丁で仁王立ちした僕は、菜々子に提案した。
「あと2ゲームやろう。それでおしまい」
「え。この格好で?」
「そう」
「下着も、……もう濡れてるけど、ほんとにびしょびしょになっちゃうよ?」
「そのためにやるんじゃないか」
僕は菜々子に微笑みかけた。微笑んではいても、多分目は笑っていなかったと思う。
菜々子が空を見上げて、大きくうなずく。
「分かった。まだ日は高いしね」
1ゲーム目のじゃんけんは菜々子が勝った。
水鉄砲を手にした菜々子の目がギラリと光る。下着姿で武器を手にしたスタイル抜群の菜々子は、女戦士そのものだ。
「行くわよ!」
僕は正面を向いたまま、後ずさりしながら「おいでおいで」して挑発した。
「来いよ! 来いよ菜々! ほら、ほら!」
菜々子は顔面を狙うと見せかけ、いきなり銃口を下げてトランクスに水を噴射した。
「あう!」
それがまったくもって正確に男性部分にヒットしたため、僕は思わず体を折ってうめき声を上げてしまった。
「大丈夫?」
「いや。平気平気!」
僕は再び上体を伸ばし、銃を構える菜々子に向き合う。菜々子の目が燃えている。いいぞその調子!
「さあ来い!」
「それっ!」
水が僕の顔面を直撃し、次いでむき出しの乳首にピンポイントでヒットした。驚くべき射撃の正確さに、僕はたじたじとなる。
「いいぞ菜々! 君は最高だ!」
「そう? じゃあこうしてやる!」
再び僕の股間を、水の弾丸が襲う。充血しているその尖端部分を布越しに直撃され、僕は「おう!」と情けない声を上げて尻餅を着いてしまった。
美しすぎる女射撃手が、太陽を背に逆光となって仁王立ちする。銃口は見上げる僕に向けられていた。だが、その銃口から水は発射されない。
菜々子はただ傲然と見下ろしている。
何をしているんだ菜々子。さあ撃て。思う存分撃ってくれ!
やがて、アラームが鳴った。僕はゆっくりと体を起こした。汚れてしまったトランクスの尻に、僕は残りの水をかけてもらった。あたかも粗相をした小学生のように。
日が傾いていた。
そして最終ゲームのじゃんけんは、僕が勝った。
タンクの水を満タンにし、スマホのアラームをセットする。
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